ゆうみお

あまみや。旧

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4章 二学期(2)。

137.気まずさ

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(澪side)


「楽しかった……ほんとに、最後は少し変だったけど……」
「うん……本当、何があったんだろうね」


 
未来斗と海斗も出てきて、とりあえずもう時間がなくなってきたからお土産売り場に行く前に莉音を着替えさせることにした。


莉音と一緒に男子トイレの鏡の前で化粧を落とすついでに少し話していた。



「……ていうか僕達、ここにいていいのかなぁ………」
「莉音は駄目だと思う……僕はいいけど」



「澪も危ない」って言われた、よく分からない。




「莉音、終わった?時間おしてるから早めに……」
「優馬…!うん、わかったー」







ーーー




莉音の着替えも終わって、入口を出てお土産売り場まで来た。



「明日香にお土産、何にしようかな……海斗は何がいいと思うー?」
「えっと……妹さん読書好きだし、これとか?」




髪飾りとかも売ってるし…………美優は、何もつけてないからこういうのを買ってあげようと思った。



ふらふら探していると………




「………、」






星のヘアピンが目に入った。



よく見ると金のピンで、星じゃなくてダビデ星の形をしていた。





「……可愛い」
「莉音、これ可愛いと思う?」



莉音も一緒に見ていて、ヘアピンを気に入ってた。



(莉音がいいって言うなら………)






「莉音……僕に似合うと思う?これ」
「え……あ、うん、似合うんじゃない?」




美優と僕はよく似てるって言われるし、莉音は美優のことは覚えていないと思ったからそういう聞き方をしたけど………なんか勘違いされた気がする。




「まあヘアピン男子はいいんじゃない?真冬君もヘアピンしてたし」
「いや妹にね……、兄さんは、………」




この細長い微妙な顔をしたキャラのマスコットにしよう。





「僕も母さんに買ってこ………、このお菓子でいいやー」


お土産を手ににこにこと笑う莉音を見て、こっちまで口角が緩く上がる。



「郁人、優馬、お土産買った?」



気まずかったけど2人にも声をかけた。




「お土産……僕は………小説の担当者さんにでも買ってこうかな、優馬は……妹?」
「あ、うん、まあ妹だけだな」



そこでふと未来斗を見ると、



「うわぁ……すごい」
「かなりの量だね………」




やっぱり、人との繋がりが多い未来斗は買うお土産の量も比べ物にならなかった。




「りせとーまふゆとー、あすかと、二階堂先輩と!母さん父さんと、西原にもか………」



他にも星奈とか知らない名前が出てきて、聞いてる方が頭が痛くなりそうだった。





「……未来斗、お金足りる?」
「沢山貰ったから足りる!」





ーーー





今日はまたホテルに泊まりで、明日ご飯を食べて帰る。


自由行動の時間が終わって、ホテルまでのバスに乗った。





バスに乗った途端………久しぶりに眠気が来て、




「………」




バスの中で眠ってしまった。





ーーー

(郁人side)



バスに乗って、席に座る。



優馬とはずっと気まずいままだった。






(だって……仕方ないじゃん、事故でも……見ちゃったんだから)










…………




考えていると、優馬に声をかけられた。



「……なぁ」
「…っ」ぴく   




今…………こいつの顔見たくないのに…………





窓際に座ってずっと外を見ていたら、廊下を挟んで隣の廊下側にいた優馬に消しゴムを投げられた。



消しゴムは拾って、仕方なく向きを変える。





「…………さっきさ、」    




小声で優馬は何か聞いてきた。
声が小さいのは、澪も含めて寝ている生徒が多くなってきたからだと思う。



澪が寝てるなんて珍しい………、向こうの窓にもたれて眠る澪を見てそう思った。







「俺…………その、歯が……………………」




歯が頬に当たった。  


歯と言うならかたいと分かるけど、僕が見たのは明らかに…………






(頬に………、あれしてるみたいだった) 





あれが当たったのが澪の頬だからまだ許せるけど、もし口だったりしたら……そう思うだけで寒気がした。
  




「あ、あれは事故だから、流石にカウントはしないから、」
「……何それ、優馬にしては奥手だね」


事故はカウントしないなんて、こいつらしくない。





「…………でもお前も、莉音と上手くやれてるな」




…………  






「莉音とはそういう関係じゃない、ただの友達「友達にとる態度じゃないだろ……あんなの」」  



嫌に過保護だったり、奢ってあげたり、






「それも澪と俺の前で、まるで見せつけるみたいにさ」




…………





「見せつけたら悪いわけ?」
「悪くないけど、お前がやっと澪のこと諦めてくれたんだってせいせいする」







…………




……………………むかつく









「そんなことない、僕は誰よりも澪をーーー……」




言いかけて、止められた。







「そういうのいーよもう、お前は口だけな奴だってよく分かったし」




、、、






「時間なんて関係ない、どっちにしろ最後は選ばれた方の勝ちなんだよ」










、 、 、 、 、 、 、









「だからさ、郁人」











ーーー


(澪side)



「おはよ、澪」
「…ん……、もう……朝?」



寝ぼけていると、優馬がふはっ、と笑った。



「ホテル着いたんだよ、降りるぞ」
「……、あぁ………」





そう言えば修学旅行中だった………



 

ーーー



ホテルの部屋まで移動して、荷物を置いて……まずはベッドに横になった。


 


(疲れた……すごく)  





ぼーっとしていると、同じ部屋の優馬と郁人の様子がおかしいことに気付いた。



(喧嘩……したのかな、やっぱり)

 



さっきからあの2人は様子がおかしいけど、なんかさらにおかしくなっている気がする。



じっと見ていると…………
 






「………ねえ澪、優馬、誰から先にお風呂入る?」



そう言って郁人が微笑んだ。






優馬がすぐに反応して、





「じゃけんで決めよーぜ!」




そういう訳でじゃんけんで決めることになって、僕から入ることになった。



ーーー



シャワーと湯船が一緒になってカーテンが敷かれて、 


そのカーテンの反対側にはトイレと洗面台と大きな鏡がついている。



トイレの前で着替えて洗面台のところに着替えを置く感じらしい。



カーディガンを脱いで、ワイシャツのボタンを外していく。





「……」


そこでふと鏡を見て、腕の傷が目に入った。




「…………やっぱり、完全には消えないか」







ーーー


(郁人side)




『だからさ、郁人』




さっき、バスの中であいつに言われたこと。







『……え』
『俺と友達になろうよ、普通の、喧嘩とかもない友達』




意味のわからないことを言われて、握手のつもりか手を出された。


演技臭い笑顔を向けられて、本当に訳が分からなくなる。





………………友達になりたい、ってどういうこと……………………






『俺達元々はライバルって感じだったじゃん、だから喧嘩もした、でもいいじゃん……お前、





もう莉音がいるだろ?』








……………………





『莉音がいるからって、僕の好きな人を勝手に決めるのは違うと思うけど』
『お前が莉音の傍にいてやらないと可哀想だろ?あんなに健気におもってんのに』





…………だから、




違う、そんなんじゃないって、







『……優馬、は』
『うん?』





調子のいい笑顔。
もう自分が勝ったとでもいうような。






『僕がこのまま澪のことを好きでいたら、絶対勝てないと思ってるの?』






だから言い返してやった。


幼なじみ……昔から彼のことを知っている僕には、途中から入ってきた自分は勝ち目がない、優馬はそう決めつけているのかと思った。



優馬は手を戻して、






『まあ……明らかに俺の方が今は勝ってるけど、完全に勝てた時お前が未練あったら可哀想だと思ってさ』




、僕が少しでも澪のことを好きだったらきっと傷つく事になる。

そういう意味だと理解した。




『可哀想……ね、いつどこでなにがあるかも分からないのに、まだ決めつけるのは悪いんじゃない?』




最後でいきなりどんでん返し、なんてこともあるかもだし。





『だから、お前に言われて諦めるのだけは嫌だ、諦めるにしろ自分で諦めるから』





そう言うと…………優馬は、一瞬目をぱちくりさせて、そしてまた笑った。

 



『わかった、まあお前はちょっと意地悪したくらいじゃ諦めたりしないよな………、悪かったな!』




…………!





意地悪…………って、






『じゃあこれからも僕達はライバルってことで、それでいいよね?』
『……うん、分かったよ』







ーーー





それからも少しまだ、澪を前にすると気まずい空気は残ってて、




ようやく澪がお風呂に行っていなくなって………優馬と久しぶりに目が合った。




「……何?」
「優馬さ、さっき頬にく…ちが当たったやつ………澪覚えてないみたいだよ?」



優馬は着替えを出しながらそれについて「んー」と考えて、




「あ、これはどう?コックリングがあたっ「馬鹿なの死ぬの??」」




「そもそもつけてない」って笑われた。






「あ、じゃあちんピィィ---!」 
「そこがかたくなるのはもっと駄目なやつ……!!」





澪がいなくなると下ネタしか出てこない………










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