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4章 二学期(2)。
136.手を繋ぐくらい
しおりを挟む終わった。
「楽しかった…!じゃあ次は白○姫だね!」 「その前にお腹空いた……ご飯………」
12時は過ぎていて、それにすごく腹の虫が鳴ってる。
「大丈夫?ポップコーンは?」
「全部食べた、優馬が」
「3分の2.3しか食べてない…!!」
………バキッ
「澪のは優馬の奢りね」
「びえん」
とりあえず、飲食店を探す事にした。
ーーー
『キャプテン○ックス・ギャ○ー』
今いるエリアから近い、ピザが売ってる店。
「……おすすめピザセット、セット、2個で」
「1640円になります」
「っ……地味に高い………」
優馬の奢りだから少し高めにした。
「海斗は何にするー?」
「俺はそんなに空いてないしサラダでいいよ、あとウーロン茶ください」
「じゃあ俺はベーコンとパイナップルのやつ!」
「僕は……シーフードピザにしようかな」
「えっと……僕もそれにする…!ドリンク……お、オレンジください!」
そこで、ふと
「……可愛い」ボソ
「?どうしたの、莉音」
メニュー表を見る莉音の目が小さく輝いた。
「この………カラフルチョコレート、入れ物が可愛い………」
郁人が莉音の視線の先を見ると、
(ああ……最近出来たエリアの………)
ミニスナックケースに惹かれたらしい。
「……でも、ご飯代じゃ足りない………」
……やけに沈んでいると思ったら、そういうことか。
(850円……)
郁人が財布を見た。
「これくらいなら余裕で足りるし、買ってあげるよ、莉音」
「……………え……!?」
莉音はバッと顔を上げて、
「そ、そういうのじゃ………!!」
「でも今しか買えないものは買わないとだし………」
「じゃ、じゃあ今度返すから………!じゃないと駄目!!」
そんな気はなかった、みたいな顔をした郁人だったけど……とりあえず後が使えているからそれで了承した。
スナックケースを受け取った莉音は、ぱぁ……と明るくなって、
「か、かわ、かわいぃぃ………」
「可愛い物を見てる時の莉音、ほんと可愛いよねー」
郁人がそう言うと既に興奮気味で赤くなっていた莉音がまた赤くなった。
「とりあえず席座るか」
ドリンクを片手に優馬が会計場所から一番に離れてく。
「優馬……それで足りる?」
「おう、ポップコーン食べたから全然足りる!」
僕が奢らせたからあれだけど、それじゃ絶対足りないと思う。
「……まあ、あげるよ、これでとりあえずお互い様ってことにしよ?」
1セット渡した。
ーーー
「スナックケース……可愛い………」
ご飯を食べ終わったあとも、莉音はずっとスナックケースを見ていた。
「チョコは食べないの?」
「……澪食べる?「食べる」」
ずっと狙ってたのがバレてた。
「ふふ……、可愛いなぁ………」
「…………」
郁人が、スナックケースにうっとりして駄目になってる莉音をじっと見て……何か考えていた。
そして、
「莉音、やっぱり男子の格好じゃ楽しみにくいでしょ?せっかくだからそういうお店行ってみようよ」
「え……?」
ーーー
「ほ、本当に良かったの……?ファンタジーランドから大分遠くなっちゃったけど………」
一旦アーケードに戻ってきて、服が売っている店に来た。
「ファンタジーランドなんでしょ……?僕の行きたいアトラクションがあるの………」
莉音がおずおずとしながら郁人を止めた。
何も考えずなんとなくついてきた僕達も止まる。
郁人は首をこてん、として
「莉音に楽しんで欲しいんだ、それに……優馬達も、別に構わない……よね?」
「よね」とトーンが急激に下がった。
「「「「あ……うん」」」」ゾク……ッ
「莉音を楽しませたい郁人」に反論できる人がいない………
「じゃあ行こっか!あ……でも流石にヴィックは………」
「あ、それはある」サッ
リュックから桃色のヴィックと制服っぽいスカートが出てきた。
「……流石莉音!じゃあ行こっか!」
ーーー
「ど、どうですか……?」
試着室から出てきたのは、桃色の髪を腰まで伸ばして高校の制服らしいスカートとタイツを履いて、上に紫色のパーカーを着た莉音。
「ダッ○ィーの、紫うさぎのパーカー………です」
「なんであんな女子高生になれるんだ……?」
「海斗、触れちゃ駄目だ、これはフィクションだぞ?」
「莉音、可愛いよ、これ買おっか」
「お、お土産代から払うね……!」
「あ、いいよ別に、これは僕が言ったことだから」
郁人のスパダリさに周りが驚いてる。
「うぅぅ……ごめんなさい……払わせて………」
「可愛い格好してる莉音が好きなだけだから、その代わり自由時間が終わるまではその格好ね?」
ーーー
トイレで軽く化粧をして、莉音が帰ってきた。
「何してたの?」
「軽くファンデ塗って、アイプチとビューラーで目の印象変えてアイシャドウでほににゃららはあはは/#※[※##_/灬しただけだよ?」
途中から本当に何言ってるのかわかんなくなった。
「集合時間までには落とさないとねーその時は10分くらい時間ちょうだいね?」
あ、
女装後はやっぱり………少し図々しくなる。
「……じゃあ行こっか、莉音が行きたがってたアトラクション!」
ーーー
ファンタジーランドに戻ってきた。
「ここが白○姫のアトラクション!可愛い?可愛いだろ?莉音??」
優馬がクズらしい笑みを浮かべる前で………莉音の顔が青ざめていく。
「待ってなんか、悪寒がするんだけど………」
「え、何オカン?ママっ子なのかなー莉音は!」
外観はあんまり怖いとは言えないけど、じゅうぶん察しがついたらしい。
「じゃあなんで出てくる子が泣いてる人が多いの!!?やだ!!行きたくない!!」
抵抗する莉音をグイグイと無理矢理優馬が引っ張っていく。
「せっかくファンタジーランドまで戻ってきたんだぞ?まさかここで逃げたら男じゃないよなぁ~~?」
………っ……クズだ
「未来斗……やっぱりここって」
「ティズニーで一番怖いアトラクションだなーあはは」
ビビりの莉音の嫌な予感も的中するはずだ。
「莉音、大丈夫だよ、僕が隣にいるから」
「……桜木………、でも………」
「なんなら目を塞いで後ろから澪に耳を塞いでもらうとかは?」
「かなりシュール…!!」
ーーー
「まあ…桜木が隣にいてくれるなら」
乗っていいらしい。
早速並んだ。
「……でもこれ定員4名なんだね、1組は1台後になるか……」
「じゃー俺と海斗!」
「分かった、じゃあ後ろに並んでて」
ーーー
順番が来るのは意外とはやかった。
「桜木……お願いだから離さないでね?お願い、お願い………」
「わかったわかった………てか…チカラガ、オモッタヨリツヨイ…………」
しっかり郁人の腕を掴む莉音。
腕がかなり締められていて、郁人の血の気が引いていた。
台がようやく、動き出した。
ーーー
「っ……ひゃぁぁ…!!」
やっぱり……一番怖いアトラクション。
莉音の怯え方がホー○テッドの時以上だった。
「む、むり…むり、怖いよ、」
「……」ニコ サッ
莉音の力の強さに血の気が引いていた郁人は、最後の力で小さく微笑んで莉音の目を隠した。
「……っ……!」
「澪……、優馬でもいい、耳を塞いであげて…………」
莉音の後ろにいた僕が、すかさず耳を塞いだ。
「っう…………」
(あ、澪今すごい無防備…………)
ていうか…………莉音の耳を塞ぐのに手が塞がって周りがよく見える体制になったから、
(よく見える分…………僕も、ちょっと……怖い…………)
末っ子みたいな莉音がいるから、大人らしく振る舞えていたとは思ってたけど、
「…………っ……ゆ………ぅ…ま……………」
やっぱり怖くて、目を瞑った。
その時だった。
「え、なに…………?」
小さく呟いた名前が聞こえたいたのか、優馬がこっちを向いた。
そのタイミングで…………
…ーーーガンッ!!
「「……え」」
演出なのか、乗り物が強く振動する。
その勢いで莉音の耳を塞ぐ手が離れて、体制が崩れた。
崩れる途中で………………
「「ッ……」」
頬に…………何か、かたいものが一瞬あたった。
「「……ぅあッ!」」
けどそれは本当に一瞬で…………台の壁にもたれかかる僕の上に僕を下敷きにするように優馬が倒れ込んだ。
「ッ……、っ…あ…………」
「さく…らぎ……?」
体制を崩す瞬間をたまたま振り向いた郁人が見ていて、何を見てしまったのか……目を見開いて僕達を見ていた。
(今……何が当たったんだろ………)
「優馬……起きて、重い…………」
「う"……っ、は、い…………」
ーーー
郁人があの後降りるまで、ずっと呆然としていた。
莉音が隣で心配そうに見ていて……アトラクションどころじゃなくなっていた。
「未来斗達も出た頃だよね、待ってよっか………」
「……」
「……」
……何故か、郁人だけじゃなくて優馬も喋らない。
本当に……何かあったのかな。
ーーー
(海斗side)
「よし……じゃあ行くか………」
「おう」
未来斗、なんかすごく険しい顔になってるけど、
(そんなに怖いのか…………?)
ーーー
俺と未来斗が乗ってるカートが先頭で、後ろにも人がいるけど……
(ってまた…………)
こそっと耳打ちした。
「未来斗……いい加減、手繋ぐのやめろよ……」
さっきから、ずっと、
「ホン○ッド以外でずっと繋いでただろ」
「莉音の服買いに行く時とかなー、後ろだったからバレてはないだろ?」
そういう問題じゃないし…………
「周りには見えてただろ………」
「気にしない気にしない、海斗は俺と離れたいの?」
そう言われると否定出来ないけど…………
「でも、他の生徒だっているんだし公衆の面前でこういうのは…………、ぅぐ」
「それ以上喋るなら指が動きます」
さっきまではただ手を重ねていただけだったけど、いきなり未来斗の指が動いて驚いた。
「指……絡めちゃだめ?」
「っ……だ、め…………だっつの!!」
勢いに任せて手を離してしまった。
勢いに任せてはいたけど………すぐにハッとした。
「俺から…………離れるの?」
………………あ、これまずい。
(未来斗がメンヘラモードに………)
こうなると下手に手が付けられない。
昨日のあいつらの言葉がよっぽど効いたんだと思うけど…………
「…う…ううん、大丈夫、繋ぐかー!手!」
「……!うん!」
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