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3章 二学期(1)。
128.ハロウィンの気分
しおりを挟む(郁人side)
「もうすぐハロウィンだ!!」
10月下旬。
昼休み、皆で3階のテラスでご飯を食べていたら未来斗がいきなり叫んだ。
「うん……?そうだね?」
「郁人反応薄い!仮装したいだろ?!!」
したくはない。
…………でも
「……やりたい訳では無いけど、未来斗はなんの仮装したい?」
「お!んー…そうだな……俺はフランケンシュタイン!!「ぶはッ」」
ドヤ顔で言う未来斗の隣で海斗が吹いた。
「未来斗には……似合わない………」
「そ…そんなに笑うことないだろー!」
顔を隠して震えながら声を抑えて笑う海斗の隣で、未来斗が頬を膨らませてる。
…………平和だ。
「でもそうだね、未来斗がやるとフランケン可愛くなりそう」
「郁人まで……」
頭に釘を刺してる未来斗、なんか可愛いかも。
「……優馬は、かぼちゃ?」
「はぁ??」
抹茶ラテのカンで手をあたためている優馬。
「せめて抹茶にしてくれ!」
「ごめん意味わかんない……」
…………ていうか、
「優馬って抹茶好きだったっけ……」
「最近ハマった」
なるほど。
ちなみに澪は今日も淡々とメロンパンを食べてる。
足元に、空になったメロンパンの袋が5袋落ちていた。
「まー俺は狼男だな!なんてったって俺を動物に例えるとライオンだって言われたことあるし!!」
「メス?」
「オスだよ」
ていうかライオンなら狼関係ない気がする。
「たてがみがないよ?」
「しっぽもないけど?」
………………
「み…未来斗、未来斗」
「ん?なに?海斗」
海斗が、僕達の会話を見てにこにこしている未来斗の袖を掴んだ。
「俺は……何の仮装が向いてると思う?」
あ、興味あったんだ。
「んー!吸血鬼!」
…………!
「へっ……、つまり俺が未来斗の血を吸えと!!?」
「なんで俺?」
………
「吸血鬼じゃなくても吸っていいんだよ?」
「「郁人さん…!!」」
ていうか、どうせ両思いなんだからさっさと付き合えばいいのに…………
いつまでこの2人はいじいじしてるんだろ。
「……僕も、吸血鬼がいい」
澪がようやく食べ終わったのか喋った。
「「「「澪は赤ずきんだろ(でしょ)ー」」」」ニコ
「え…………」
「じゃあ僕は何が向いてるかなー?」
「郁人?郁人は……なんだろ」
「ミイラとか……?」
「お前こそかぼちゃ被ってろよ」
「かぼちゃじゃなくてメロンパンにしよ?」
…………
「あ、ドクターとかどう?」
優馬と澪の意見は聞かなかったことにした。
あ、でも海斗が言ったミイラもいいかも………
「ミイラドクターとか?…はは」
「医者のくせに不健康そうだな」
ーーー
「……ていうか、さっきの吸血鬼で思ったんだけど、」
未来斗が飲み終えた紙パックのストローを中に押し込みながら言った。
「お前らって………八重歯とかある?」
...
「んー…僕は……ないな」
気にしたこともなかったから、舌で歯をなぞってみた。
「俺も……ない」
「僕もない」
…………
「優馬は?」
優馬がびくんと跳ねた。
「…優馬?」
「あ、…………………………
ある……けど?」
なんでそんなぎこちないんだろ。
未来斗がぱあっと目を輝かせた。
「見たい!!」
そう言うと、また優馬がぎこちない表情になる。
「いや……でもお前もあるじゃん………」
「俺以外の人の八重歯が見たいんだよ!!」
未来斗が体を乗り出して、膝を前に出して優馬に顔を近づけた。
「っ……!!?わっ…ちょ、いひゃいいひゃいいひゃい!!!!!」
好奇心に満ちてきらきらしている未来斗の目。
口角を指で引っ掛けて、優馬の顔が横に伸びていく。
夢中で優馬の八重歯を探す未来斗。
優馬の隣で澪が呆れた顔でそれを見ていて、僕もそんな感じで呆れ笑いだった。
(未来斗、興味持つと止まんなくなるからなぁ………)
まあ、海斗は負のオーラを出してる。
「や……やぁ、ひっ…ふ…………」
「ないなぁ…………、」
あ、ないんだ………
やっぱり、嘘だったらしい。
興味を失った未来斗が口から手を離して、元の体制に戻った。
「ちぇー、嘘つくなよ!」
「らっひぇ……、俺狼なのに…………」
痛む頬を抑えながら、優馬の目尻に涙が溜まる。
「自分に似てる動物が狼だから八重歯がないと駄目だと思ったの?しょうもない理由だね」
「う、うるせえ!!」
(ないの気にしてるんだから黙っとけよ………馬鹿郁人…………)
ーーー
…………って、
「何してんの未来斗………」
何故か未来斗は、優馬以外の人にもさっきのことをやってた。
「澪も海斗も気になるんだって、八重歯がないか」
「なるほどね……?」
なんか、歯科医みたい。
(ていうか、澪はともかく海斗は……うん、下心がある顔だ)
澪がにょーん、みたいな感じで口を横に伸ばされて、可愛いあほ面になってる。
「あはは澪口角かたい!」
「ひょうひょうひんはひーとははは」
なんて……?
手が離れた。
「表情筋がニートだから。」
「あはは、確かになーー」
…………
「あ、あと澪、寝る前にちゃんと歯磨きしなさいね?虫歯っぽいのあったよ」
「なッ……」
「……じゃあ次は海斗!」
「は、はい!!」
下心で緩み切った顔を一瞬で元に戻した。
「辛かったら言えよー……」
そう言って未来斗が地面に正座する海斗の前で、立ち膝になった。
顎の下に触れただけで、ぎゅっと目を瞑って下を向く海斗を見て、さっきまで笑顔だったのに途端に無表情になって……何故か僕を見た。
『尊い』
『そっか』
目でジェスチャーしてこないで…………
「……っ…う、」
口角に指が触れただけで変な声が漏れた。
...
『……郁人』
『分かったから』
...
「ひ……ぅッ…………」
...
「無理ですごめんなさい!!!」
すたこらすたこらーーーーばたん(テラスの扉が閉まる音)
「………………えぇ………………」
この人達…………死ぬまで進展しなさそう。
ーーーーー
この話を書いている時(2020,12/2)はR18の話を書く日が多かったのでまだエロが抜けませんでした……すみません。
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