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4章 二学期(2)。
131.リス
しおりを挟む(海斗side)
2年生の、後半頃からだったと思う。
「海斗、ちょっと来なさい」
勉強していたら、母に呼ばれた。
「……何?」
呼ばれた部屋は…………父の、書斎。
父さんが見せてきたのは、俺の成績表だった。
「あ…………」
「また1位になれなかったのか」
そこに書き出された、2位という文字。
「最近少し気が抜けてるんじゃないか?受験まで1年………受かる気がないなら」
希望の大学の偏差値は最高67。
俺の学校の偏差値は63。
ここで限界に達してはいけない。
1位にならないと不安な体質の父はいつもそんな事を言ってた気がする。
「いいか、勉強しろ、集中しなさい」
…………でも、なんで、
(なんで俺……こんなに縛られなきゃいけないんだろ)
本当は、いろんな夢があったのに。
医者になりたい、漫画とかもかいてみたかった。
小さい頃から言うことを聞かずに頑張っておけば…………
「…………分かりました」
でも、今更もう遅い。
ーーー
「海斗……?」
「っ……」
名前を呼ばれで隣を見ると、未来斗が心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。
「…………あ……」
「具合悪い?酔った……?」
…………
「ううん、ちょっと眠くてぼーっとしてた…………」
「えーー!俺が何でもするから寝ないで!!」
……まあ、ほんとは眠くないけど、
(勉強…………しなきゃな。)
ーーー
「って…………」
なんでお前が寝てるんだよ…………
「すー、すぅーー」
幸せそうに寝やがって…………
(まあいいや、勉強の続き…………)
鞄に手を伸ばした。
…………けど、
「…………ひっ!?」
寝ているはずの未来斗に…………腕をぎりぎりと掴まれた。
え、めっちゃ痛い…………
「……や、やっぱやめようかな!」
そう言うと…………手が離れた。
(睡眠中……だよな?)
…………
まあ、することないし…………
隣で未来斗が寝てると思うと、変に理性が外れそうになる。
「………」
(これ……なんだろ)
この、特定の相手の前でだけ変に暑くなる感じ。
変に焦って、いつもの自分じゃいられなくなる。
(……?)
今までに味わったことのない感覚。
「…………」
訳が分からなくて、じっと未来斗を見ていると…………
「宝条、それはきっと性欲だと思うぞ」
後ろから訳の分からない声が聞こえてきた。
「…………は?」
振り向いてその人を見ると、
「今お前の心の声を読ましてもらった、宝条…!それはきっと性欲だ!!!」
...
「……いろいろツッコミどころはあるんだけど、とりあえず下がってくれない?モブ男」
「あっ、うん」
これ以上キャラ増やしたくない。
(ていうか…………性欲って、なに………………)
そんなことあるわけない。
………………多分。
ーーー
(澪side)
「カラオケ大会やりまぁぁぁぁす!!!!!」
いきなり何か始まった。
「ほら起きろ早苗と桜木!!お前ら寝るの早すぎなんだよ!!」
「いっだ!!」バシ
「ッ……!!」バシ
クラス委員長がマイクを取り出した。
「はい!!今から1人一曲歌ってもらいます!!!」
うわ…………
「では一番から!!」
こういうノリ、嫌い。
一番の人はノリノリで歌った。
(これ……寝たフリしてれば回ってこないのでは)
よし、寝……「寝るなよ、双葉」…………、
「優馬……何歌う?」
「ん……?あー、えっと……流行りの曲とかでいいや」
まあ、それなら外れないか…………
「ほら……最近流行ってるじゃん、西村匠海が歌ってる、あれ……『犬』」
「ああ、流行ってるよね」
ーーー
(李世side)
一方その頃、学校では
「雪島。どうしてこんなことをしたのか教えなさい」
真冬が先生に呼ばれた。
その理由がーーー…………
「どうして学校にリスを連れてきた!!!」
真冬が連れてきた、リス。
……数時間前。
「おはよー!真冬!」
いつも通り真冬に挨拶すると、違和感に気が付いた。
肩に…………なんか乗ってる………………
「なに……それ」
『リス、拾ってきた』
えっ
どうやら…………
ーーー
「……」とてとてとて
「ホロロ、ホロロロロ」
「……?」
聞いたことの無い鳴き声がして、振り返ってみたら…………木の上にリスがいた。
「…………、………あ……」
そのリスが何故か真冬の顔に着地して、
…………それからずっと、肩の上にいるらしい。
ーーー
『飼っていい?』
「ボクに言われてもな………」
ていうか、ボクも乗られたい………肩に、リス…………
「ホロ、ホロロロロ」
『あずきも飼って欲しいって言ってる』
…………!
「名前……決めたんだね」
『あずき』
確かに小豆みたいな色してるけど………
ていうか、こんな色のリスいるのかな…………
「んー……」
『飼わないならあそこから突き落とす』
そう言って真冬は窓を指さした。
「ッ…!!?それは可哀想だよ!!!『李世を』あ、なんだボクのことか………」
よかったぁ…………
(ん??)
「まあ……ボクはいいと思うよ?」
ていうかよくよく考えると…………なんでこの辺にリスがいるんだろ。
海が近いからカニならたまに見るけど………リス……?
「……」ほわわ
表情は変わらないけど、オーラが明るくなった。
「ホロロ、ホロ!」
「……」よしよし
まあ…………いっか。
ーーー
…………まあいいなんて、思ってた。
けど、甘くはなかった。
「雪島、ここはどうなる?」
「ホロ!ホロロー!!」
真冬が先生にさされて回答をスケッチブック(遠くの人に伝える時はこれ)を書いている時に、あずきがキレた。
「ホッロー!!」
「ぐはァ……ッ!!!」
しまいには先生の元に行って腹キック。
…………うん、真冬の子だ。
「ホロ!ホロロ!!」ゲシゲシゲシゲシ
「ちょっや……、やめ、頭はやめて!!」
頭にドロップキックを決めて、先生のカツラがズレた。
「……ッ雪島ァァッ!!!!!」
ーーー
そしてこうなった。
「……」ちょこん
「先生……あの、先生がカツラなことは皆し「それは関係ないだろう!!」あ、はーい」
ボクは茶々入れちゃ駄目な感じですね。
「ホロロ……」
「……、……、」
真冬とあずきが目を合わせてる。
ジェスチャー的なもので何か話してるんだと思う。
それを見た先生が呆れて、
「大体なぁ……どうしてお前までいるんだ」
「ボクですか?」
「お前しかいないだろ……」
ちなみにここは生徒指導室。
さっきの授業の担当のハゲ……先生が仕事をしてる場所。
「んー……保護者だからですかねぇ」
「親なのか?」
「どっちかてと兄ですかね」
...
「……まあ、保護者ならちゃんと叱ってくれないか?」
この先生、頭かたいって有名だけど……なんだろ、相手するのめんどくさくなったのかな………
ていうか多分、ボク達にあんまり関わりたくないんだろうな。
「真冬を叱ると腹パンが飛んでくるんです!最悪ドロップキックですよ!?」
腹パンはまだ大丈夫だけど、ドロップキックはひどかった………
「だから………」
「でもな……」
そんな感じで謎の言い争いをしている間に、
「………あれ?真冬とあずきは?」
「……いないな」
いなくなってた。
ーーー
「………」ふらふら
生徒指導室を出てしばらく小走りで歩いていると………
「……あっ」
「………」ふら…
………!
「っ…!………、大丈夫?」
ふらふら歩いているのを見つけたと思ったら、いきなり倒れそうになって………咄嗟に支えた。
(あれ……なんか、あつい)
真冬はボクと目が合って、すぐに離れた。
『躓いた』
「そっか………」
ほんとかな………
「ホロ、ホロロ」
「……」コク
あずきと何か話して、ボクに
『授業始まる。行かないと』
そう伝えてくれた。
「あ、そうだね…!行こっか、真冬、あずき」
なんか真冬、体温がいつもより上がってた。
……………少し、心配、
(何も……ないといいけど)
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