ゆうみお

あまみや。旧

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2章 夏休み。

夏祭りおまけ (パラレル)

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李世と真冬の夏祭りの話がふたつあったので、本編のパラレルワールドとしてあげときます……
本編とこっちの話、どちらで読み進めても問題ありません!
あまり内容は変わらないです。


ーーー




「真冬!夏祭り行こー!」
「……」



今日は夜にお祭りがあります!
ってわけで、アポなしで真冬を誘いに部屋に行った。



『急に来ないで』
「ごめんごめん!」




机の上に置いてあったメモ帳とペン。
家では使わないはずなのに、多分ボクがよくアポなしで家に来るから常備しておいたんだと思う。




「あ!珍しく半袖だ!」
「っ……み、見るな……!!」





半袖を見ただけで腹パンされたーーー☆





まあ、痛くはないんだけど。





「えーー?何ー?なんで見られたくないのーー?ただの白もやしじゃーん」ニヤニヤ
「………………✕す……」






あ、目がガチだ。







(そういえば真冬、体型がコンプレックスって言ってたな)



ちょっと触ったら折れてしまいそうなくらい細い腕、休みの日は外に出ないからすごく白いし、あと…………





「ふにふにもちもち………」
「………………気持ち悪い」





イメージするならわらび餅。









「もーー、こんな可愛い体型してるんだからぁーー学校でも半袖でいればいいのに」
『おじさんくさくて気持ち悪い』




なんだそれ……


 
(ボク達だっていつかはおじさんになるじゃんか…………)







「…………あ、ていうか話脱線してる!夏祭り、いこっ?」
「……」ブンブン





そっか………





(真冬、人混み苦手だもんな…………)






まあ、そう思って準備しておいたんだけど…………!





「それじゃあさ真冬、コンビニ行かない?お菓子買いに行こうよ」
『それなら』






ーーー
  



出来るだけ人通りの多い道は避けて、日陰を探しながらコンビニまで歩いた。


「ついた!中は涼しいから、早く入ろ?」
「……」コクン




その頃にはボクも真冬も暑さが限界で、かなり汗だくになっていたけど。





「いらっしゃいませー」





「何買おっか………何でも好きなの選んでいいよ、奢ってあげる」
『いいの?』
「うん!」




お家柄の関係でお金は沢山あるしね。




真冬は容赦なく大量のお菓子をカゴに入れた。 







ーーー





「うぅ……重い」



コンビニで買い物しただけなのに、こんなに重いなんて…………





「…………」





なんか、つい見栄を張っちゃって真冬に「ボクが持つよ!」とか言ったけど…………ボク、力ないんだよね…………





「う、う"ぅーー…………」
「……?」




今更持ってとも言えないし…………



(ていうか、真冬のものなのに…………)






って、文句は言えない。







「………………りせ」
「なに?」





ふと顔を上げると、横から真冬が顔を覗き込んでいた。





(顔は………可愛いんだよな)






生意気だし、子供っぽいけど。






「……持つ?」
「大丈夫だよ!ていうか真冬じゃ持てないでしょ」





なんでボク達って、こんな……もやしなんだろ。






「…………じゃあ」






そう言いかけると、真冬はボクの手元に手を伸ばした。



そして…………






「……!」
「……これ、なら……少しは。」





袋を半分、持ってくれた。



そっか、この方法が…………







1人じゃ無理でも、2人でだったら、出来るんだ。







「……えへへ、、だね?」
「…………」







生意気だし子供だし、めんどくさい子だけど、 


   



(可愛いんだよなぁ…………)










ーーーーー






真冬の家で買ったお菓子を食べていたら、あっという間に夕方になっていた。


(…………さて、)



「……?」





予定の時間になったから立ち上がって、真冬に向かって手を伸ばした。







「行こっ、お祭り!」








ーーー





「うわー、やっぱ人いないね、真冬……大丈夫?」



まあ、お祭りと言っても、花火を見るだけなんだけど。



隣町の高台から花火が綺麗に見えるって西原先輩に教えてもらって、そこなら人もいないからって………おすすめされた。




「………」フルフル
「あ、ごめん寒かったよね………!もっと配慮しておけば良かった…………」 





そういえば真冬、半袖だった。
ボクはそれ程寒くもないから、黒いTシャツの上に着ていたパーカーを脱いで、真冬にかけてあげた。




「…………」ホコホコ
「えへへ……、お菓子も持ってきたし、気分だけでもお祭り……楽しめるね!」





 コンビニの駄菓子コーナーで綿菓子とか、棒の飴とか………それっぽいものも買っておいた。


  

(そして……!)



   

ボクのパーカーでぬくぬくってしてる真冬の背後から……………







「ーーーえいっ!」
「わっ……!」







思いっきり、抱きついた。




「っ……!」グイグイ
「そんなのきかないよーーだ……!……これで、もっと暖かいでしょ……?」





そう言うと、抵抗する動きがゆっくりと止まった。



瞼を少しだけ閉じて、耳元で囁く。





「……ありがと。ぼく、抵抗されるの好きじゃないから。」





いたずらっぽく笑いながら耳元で囁いていると、耳に息がかかるのがくすぐったいのか肩がぴくんって跳ねるのがなんとも言えず可愛い。





「………なに、する気。」





すると、真冬は何かいたずらされると思ったのか……そう聞いてきた。

別に、ずっとこの体制でいたかっただけ。深い意味はなかった。 





「ずーっとこのままでいたいなぁ、……と思いまして」




気持ち軽めにそう言うと、無理矢理引き剥がされてしまった。




「……!えー、ひど………」






そんなに真冬に嫌われてるのかな……そう、思った途端。







「っ……!」
「…………」






いきなり、今度は真冬から………正面から、抱きしめられた。







「………………し、仕返し……!」







っ…………!!





今度はボクの耳元で、緊張したのか少し上ずった声で、真冬がそう言った。




「う……、しょ、正面はナシ!恥ずかしいってば!!」
「…………僕は恥ずかしくない。」ニコ




少し小悪魔みたいに意地悪く微笑む真冬。
やり返されたと気付いて、いきなり悔しさが込み上げてきて、全身の体温が上がる気がした。





「…………顔真っ赤。」
「だぁぁぁ!!!見ないで!!!」 





(面白い……)









「………………りせ。」









真冬がボクの目を見て、名前を呼んで、その次の言葉が出てきた、途端。











「………………!」











初めの花火が上がった。








「…………綺麗。」
「真冬……」






花火の音と、真冬の声が重なって…………何を言っていたのか、聞こえなくなってしまっていた。


真冬はそれを気にもせず、花火の方に視線を向けた。





「……真冬、今なんて」
「………何も。」





真冬はそう言ってすました顔で花火を見ていた。



聞こえちゃいけない、言葉だったのかな。





  


「………………」







まあ、










(聞こえて……たんだけどねっ)





口の動きでわかった。


真冬がボクに、何を言っていたのか。











「真冬…………









ボクも、真冬のこと」











そう言いかけた時、また…………花火の音が鳴った。





「……!」






言う前にさえぎられた…………








(……ま、いっか)










隣に並んで、特に何も考えず……花火を見た。



ただ、この人の隣にいたかった。だから………誘ったんだけど。





(意外と……綺麗だった)






「真冬」
「……?」
「花火、綺麗だねっ!」
「………」コクン







隣で花火に夢中になって見上げている真冬。





ボクが見ていたのは、花火じゃなくて……隣の……真冬を見てたけど。






(なんでこんな………なんか、乙女みたいで気持ち悪……っ)





ただの友達だと、思ってたのに。











もやもやする気持ちを抑えようと、またいつもみたいに可愛く笑ってみせた。




「何……笑ってるの」
「…………なんでだろうね?」  
 



 


  


ボクだけを見つめてくれる、綺麗な青い目。



誰の前でも喋ってなんかくれないのに、ボクの前でだけは話してくれる。



小さな背丈も声も、消えてしまいそうな程細くて脆いところも、





全部全部…………














愛おしくて、好きなんだと思う。











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