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3章 二学期(1)。
125.莉音の忘れ物
しおりを挟む放課後になった。
(莉音side)
家に帰ったら、ヴィッグをつけて可愛い服を着て、女の子になる。
ヴィッグで作ったさらさらの綺麗な、腰まで伸びた髪。
可愛いシャツに、襟元にリボン。
可愛いスカートに黒のタイツを履いて、上にニットカーディガンを着る。
………これが、今日のボク。
「……うん、可愛い。」
ピンクのドレッサーを前に、少しだけ微笑む。
「よしっ、じゃあ今日は買い物してみようかな…!」
………立ち上がって、ふと気付く。
「あ……でも、明日提出の課題あるんだった……」
結構問題数もあったし、朝ではやり切れなさそう………
「今のうちにやっとくか………」
そんなわけで………リュックを開けると、
「……あれ、あれ…?ない………」
リュックの中には筆箱とお菓子しか入っていなかった。
……………課題が、ない………………
(どうしよ……早く取りに行かなきゃ!!)
それ以外考えられなくて、急いで家を出た。
……………今の自分の格好を忘れて。
ーーー
「はぁ……はぁ、……ふぅ………」
なんとか学校が閉まる前に到着して、門の中に足を踏み入れる。
……………そして、ようやく気が付いた。
「あ………ボク、今女装中だった……………」
これは、まずい……………
ーーー
(と、とりあえず3年玄関から入るのは危険すぎるし………申し訳ないけど、今回は校門近くの職員玄関から入らせてもらおう………)
そこから3年生の教室への階段まで行くのに、あまり人通りのない廊下を通るから大丈夫……だとは思うけど、
(もし人に遭遇したら………終わりだ……!!)
でも、ここまで来たからには行くしかない。
意を決して………中に入った。
ーーー
静かに……バレないように、校舎内に入る。
玄関のすぐそこに事務室があるから本当に焦った。
階段を登って………一度顔だけ出して周りを確認する。
そしてふと、後ろから気配を感じた。
「何してるの……?莉音」
「ぴゃぁぁ!!!」
バレた………!!?
真っ青になりつつ振り向くと、
「あ………なんだ、澪か……………」
知り合いだった………
「うん、澪。なんでそんな格好で学校にいるの?」
澪は全然動揺せずに……ていうかなんか眠そうだった。
「忘れ物しちゃって………」
「そうなんだ……、僕は、図書室で皆と勉強会してた。」
聞いてもないのにぺらぺらとぼそぼそした声で、目を擦りながら話してくれた。
「……寝てた?」
「ん……。」
あ、ですよね。
「莉音も来る?」
「いや、ボクは………」
「郁人もいるよ………?」
「うっ……」
こいつ……………
「でも、こんな格好だし無理だよ……」
「僕達しかいないし、先生もそういうの許してくれると思う……」
………
「ちなみに………何やってるの?」
「渡された課題。問題数多いから教えて貰いながらやってた。」
………!
「じゃ……じゃあ、お願いしよっか」
「な」と言いそうなその時だった。
「それでさーー、」
「まじ?やば」
「……!!」
階段を登ってくる、2人くらいの男の声ーーー…………
「ま……まずい!!」
「っわあ」
つい動揺して澪をのほっぺたを引っ張って、どこか………トイレに隠れようと足を動かした。
「ってまずい!!トイレにも人が……!!」
話し声が聞こえる………
追い詰められて、余裕がなくなった。
「りおん………いひゃぃ……………」
「ボクがこの格好してるのバレたらまずいの!!!お願いだから隠して!!」
澪は困った顔をして………
そして何故か途端にテンパリだした。
「っ…そうだね、大変だ…!!」
「やっと目が覚めたの……?!おはよう早くどうにかして!!!」
無駄にテンパったあげく、
「り、莉音……ロッカー!あのロッカーの中に!!」
「いやあれ教科書入れるためのやつだから…!!!」
入るか馬鹿野郎ーーーー!!!!!
「っ……あ、あわ、ッ…ああ"ぁーーーー!!!」
寝起きでテンパりようが半端じゃない澪が、何故かボクの方に飛びついてきたーーーー………
ーーー
「でさー、そのあと俺のピが」
「まじ?やば、………ん?」
男達がボク達に気付いて視線を向けた先に、
「「……あ」」
あまりに動揺しすぎて、多分澪はボクを隠そうとはしてくれたんだと思う。
でも………なんで、
「なに……してんの?双葉」
なんでボクのヴィッグ、被っちゃうかな………
「あ……やっぱお前、そういう………?女だった系?」
「あ、いや、その、ちが………」
あ………ボクには気付いてなさそう。
「っ……悪い!!見てはいけないものだったんだな!!!俺達なんも見てねぇから……またな双葉!!!」
「あ……」
そそくさそそくさーーー
………………
まあ、ボクは助かったけど…………
「ごめん、ありがと澪………あとヴィッグ返して…………」
澪が灰になってる。
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