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3章 二学期(1)。
122.面接練習
しおりを挟む(海斗side)
ある日…………、進路担当の先生から志望校の受験の過去問をもらった帰り、
「…………あ……」
飲み物を買いに行こうと図書室の前を通った時、たまたま………見かけた。
(み……未来斗……!)
ーーー
「……み、」
見かけたのが嬉しくて、図書室に入って未来斗のすぐ後ろまで来たのはいいんだけど…………
何故かいきなり、声をかけるタイミングで………緊張してしまった。
「……っ、み、みく、み、
みみ"み"!!!」
「ぅあっ?!」
肩に手をおこうとしただけなのに……勢い余って頭を叩いてしまった………
「っ……な、何?!戦闘!?」
「ち、ちが……!俺…!」
未来斗は俺だと知ると途端にいつもの警戒心なしな緩い顔になって、本を本棚に置いた。
「普通に声かけてくれれば良かったのにー」
「ご、ごめん……」
ーーー
…………とこ、ろで、
「なんの本読んでたんだ……?」
「雰囲気がBLな小説!」
…………理解した。
「なんだ……まあ、未来斗がそれ以外で図書室なんて来ないよな……」
「あはは、なんか失礼ー、」
…………あ、そうだ。
「俺もちょっと探そうかな………」
「BL?」
「参考書とかだよ…………」
志望校の受験に役立つ本とか、あるかな…………
「……、」
「…………」
参考書がある棚を見ていると、未来斗にすごく見られてる気がした。
「…………な……に……?」
なんか、恥ずかしい…………
「…………海斗って……どこの大学行くんだ?」
…………ああ、
参考書探してたから、気になったのかな。
また参考書の方を見て、何も意識せず気軽に教えた。
「上智大学。……知ってる?」
「しらない…………」
まあ、そうだよな…………
「未来斗には縁のないところだよ、偏差値高いところだから」
そうからかえばきっと、未来斗は食べ物を詰めたリスみたいに大きく頬を膨らませる。
何だかその想像が可愛くて、実際に見てやろうと横を見た…………
けど、……予想と違った。
(……………………えっ……)
何故か………すごく、悲しそうな表情だった。
「未来斗……?」
「……ずっと、一緒にいるなんて……無理なのかな………」
え…………?
ーーー
(澪side)
「はい、澪さん。そこ座ってください。」
なんかいきなり…………優馬が、真面目な顔になった。
さっきまで普通に話してなのに、なんか、
「……何?」
「面接練習!はい!すたんどあっぷぷりーず!!!」
もう立ってるけど…………
「ま、座って座って」
「……はいはい」
まあ…………付き合ってやるか。
そういえば、今週から面接練習が始まるんだっけ。
「本校を希望した理由はー?」
「すっごい適当そうな面接官だな………、えっと……」
いきなりすぎて、なにも考えてない。
「っと……、えっと………本校の理念に共感して……!」
「高校の面接ですよーー澪さん」
…………難しい。
「あっ、購買にチョコチップメロンパンがあるから……!」
「うわ絶対落とされるやつ………」
うちの高校、面接なくてよかった…………
「では次、本校に入学したらなにしたいー?」
後半の語彙力のなさ…………
「……部活に入らず、すぐに帰りたいです」
「澪ってなんでそんな落ちそうなことばっか言うの…………」
そんなことをしているうちに、
「みおー!ゆうまーー!」
教室に……未来斗と海斗が入ってきた。
「わぁ……、未来斗……びっくりした。」
「あははー、澪はやっぱりいつ会ってもゆっくり驚くな~!」
後から参考書を手に持ちながら、海斗も歩いてきて、何故か少しだけ………暗い顔をしてた。
でもすぐに顔を上げて、
「何してんの?」
「面接練習ごっこ、お前らもやるー?」
こくん、と頷いた。
あと……ちなみに、郁人は莉音のところに行ってる。
もうすぐ帰ってくると思うけど……「ただいまー」…来た。
「郁人もやろー!面接練習!」
「うん……?この中に面接する人いたっけ……?」
まあ、それは置いといて、
ーーー
じゃんけんで僕と未来斗が面接官になった。
まずは…………
「では……桜木さん、本校を希望した理由を教えてください」
郁人。
郁人はまるで本番のように行儀よく椅子に座って、
「澪がいたのでっ!」ニコッ
すがすがしい笑顔を見せた。
「……俺は?」
「あ…うん、未来斗もいたから!」
取ってつけたように言われた…………
ーーー
「……では、中学校で一番楽しかったことは……」
「澪といた時全部……!あ、未来斗も………」
...
「なあ、俺って幼なじみポジじゃなくても良かったんじゃ……」
「そ、そんなことないよ……!大丈夫、大丈夫………!」
なんで面接官が面接官を慰めてるんだ…………
「……うっ、ひく…っ、じゃあ次………
俺の事……どう思ってる?」
いきなり未来斗の目のハイライトが消えた。
「……お、幼なじみで親友…「幼なじみで親友なのに、なんでさっきから取ってつけたように言うんだ…?」あ……はは、」
かなり根に持ってる…………
「……俺は、ずっと一緒にいたいのに。」
…………ん?
何か聞こえたけど……よく聞き取れなかった、
ーーー
「えっと……俺は、校長先生の息子に誘われて……」
次は優馬。
本校を希望した理由…………そんなんだったんだ……………
「俺は……あ、いや僕…?僕は、この学校に入りたくて大阪から引っ越してきました……!」
「え、知らなかった…!!」
「まじか!!」
同時に驚く面接官達。
「……うん、本当。従兄弟の家が大阪で……その前まではこの辺に住んでたけど…………」
そうだったんだ…………
なんか、すごいことを知ってしまった気がする。
「あ、次………本校に入ったら何がしたいですか?」
優馬は真面目な顔で、
「清楚系で可愛くて小さい男の子を全力で愛でたいです」
...
「あ……そちらの黒髪の面接官さんとか超好み……「定時なので帰ります…!!」」
危険だ………………
ーーー
最後は海斗。
「俺は、父の企業を引き継ぐ為に経済学について学ぼうと考えています。なのでそちらの高校の経済学部はーーー……」
…………あれ……なんか、頭良さそう。
一応高校の面接なのに、大学っぽいのはまぁ……いいか。
「経済学……??」
優馬が混乱してる。
「俺の行きたい大学、経済学部があるんだよ。企業をつぐのにもっと勉強が必要だから……」
そう言って海斗は一瞬だけ未来斗を見て、また顔を戻した。
「そっか、頑張ってね。」
「応援してるぞー」
「学年1位が応援してるねっ?」
未来斗だけ、何も言わなかった。
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