117 / 260
3章 二学期(1)。
111.後輩の慰め
しおりを挟む(分かってるよ…………本当は殺せない、そんな勇気ない)
分かっているけど、出来たらと願ってしまう。
本当に僕は、臆病な人間だ。
ーーー
(李世side)
「せんせー、ボクと真冬まぶたが重い病気になったので寝かせてくださ…………」
サボりに保健室に行ったら、
「…………あれ、黄緑の先輩」
よく未来斗先輩と一緒にいる人がいた。
「……!」
先輩はボクを見るなりギョっとして、
不思議に思ったボクが先輩の手元を見ると、
「え、なんでナイフなんて持ってるんですか?!」
一気にまぶたが軽くなった。
ーーー
6時間目のチャイムが鳴る。
「ふむふむ、それは辛いですねーー」
真冬とベッドに座って保健室の冷蔵庫に入っていたプリンを食べながら、話を聞いた。
「それ俺のプリン」
「2つあるなんてボク達の為に用意してくれたんですね?しかもコーヒーとチョコ味ってそれもうボク達の好物わかってるじゃないですか~!」
半ば強引に奪ったプリンを隣でもくもくと食べている真冬を一瞬見て、今度は先生の椅子に行儀よく座る先輩に目をうつした。
ちなみに、椅子も先生から無理矢理奪ったもの。
「あの……先輩は、本当に澪先輩の事好きなんですか?」
「えっ……?」
たまに見てて思うけど、
「ボク……、先輩が嫉妬に狂った姿なんて見たことないです、まあ、単にあんまり会わないからってのもありますけど」
そんなに好きならもっと…………狂えるはず、なのに。
「…………好き、だよ」
「それならいいんですけど………無理はしないでくださいね」
そう言うと、真冬が一旦食べるのをやめて……こそっと耳打ちしてきた。
「……うん、たしかに。…先輩、あんまり溜め込みすぎると、いつか爆発して、周りが見えなくなっちゃいますよ」
真冬から言われた事をそのまま伝えた。
「無理に溜め込み過ぎないこと、言いたいことは誰でもいいから言うこと、言えないならボクが聞きますから!」
人の悩みを聞くのは得意です……!
にこーっと笑って、食べ終えたプリンを真冬のと一緒に先生に「捨ててください」と言って渡した。
「…………うん……ありがとう…………って、わぁ……!」
「よしよしですよー、先輩…っ!」
座ったままの先輩の後ろに手をまわして、そのまま撫でてあげた。
背の高い先輩を小柄で背の低いボクが立たれたまま撫でるのは、背伸びしなきゃいけないから嫌だけど、
「ちょ、ちょっと………何このじょうきょ「あ、先輩髪もふもふですね」うわわゎわ……!」
照れてる先輩…………ちょっと可愛い。
(なんかまた撫でられたけど………まあ、さっきほど不快じゃない)
しばらくして、
「…………うん……でも、ありがとね。」
「いえいえ……!ボクはいつだって、先輩の悩み、聞きますからね」
あ……ちょっとだけ、泣いてる。
「ごめん……、こんなに近くで、長く人の温もりを感じたの久々で………」
先輩は低い優しい声でそう言って、目尻に滲んだ涙を拭った。
(…………ていうか、この先輩の名前……なんだっけ)
やっべ忘れた………
ーーー
(真冬side)
李世が、目の前で黄緑の先輩を慰めてあげてる。
(…………あんな人でも、泣くんだ)
…………………………
(………泣くなんて、弱い人間がすることだ。)
僕だったら泣いたりしない。
弱い人間になんてなりたくない。
もう……………二度と。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、新たな人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートの威力はすさまじくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 独自設定、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる