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3章 二学期(1)。
107.返して
しおりを挟む(春樹side)
「返して……?僕の薬。」
………………まずい。
(見つかった………)
「兄さん、返して、早く」
「待って…落ち着いて?澪……とりあえずおちつい「返せよ」ッ……!!」
いつもより声が低い………
目にもハイライトがないし、声のトーンも一定で……………
「ねえ、かえして、かえせ、かえせよ…………」
………どうしよう。
……………………ああ、
「……わ、分かった、返すよ………、はい」
とりあえず手に持っていた1つだけの瓶を返した。
「………………これだけ?」
「えっと……ごめんね、5瓶くらいはもう……処分したから」
澪はため息をついて、「まあいいや」と瓶を元の場所に戻した。
「ご飯だって、早く来てね」
「分かったよ………」
いつもの澪に戻った………………
ーーー
澪はたまに………俺でも「怖い」って思う程、様子がおかしくなる。
言い方はあれだけど……病んでるって言うのかな…………
執着心が、すごい。
ーーー
文字数少ないのでおまけより本編です。
(李世side)
2年生の身体測定。
「わぁーっ!161.3!すごい伸びてる!」
1年生の時は158cmしかなかったから……すごく嬉しい……!
「真冬!真冬は伸びた?」
隣の席に座って身体測定の結果を見つめる真冬に声をかけた。
返事がなかったから後ろからこっそり見ると…………
『156.2』
あらまぁ
「…………な、何mm伸びたの?」
「…………」イラ
縮んでいる気もする…………
「………」ション…
「だ、大丈夫だよ真冬!今からなんだよきっと!………………って、」
体重45kg…………!!?
「…………」チラッ
ボクの体重は56kg………
身長差があるといえ…………なんかこの差は、
……よし、
(痩せよう)
(背を伸ばそう)
というわけで、
ーーー
「お昼休みは出来るだけ少なく!てわけでバナナと牛乳です!!」
なんかいかがわしい気もするけど。
「…っ…っ」もっもっ
「でもお腹空くから沢山食べたい………5本食べよ((」
……
「お腹壊さないといいけど…………」
「…ん、…ん」ゴクゴク
………………大丈夫かな………
「………李世」
保健室に行こう。
ーーー
「156.2……」
まあ、そんなすぐ変わるわけないですよね。
「さて、ボクも………あー…変わってない……」
「お前ら何勝手に保健室使ってんださっさと散れ」
「保健の先生ひどいですよー、これから毎日来ますからね!」
「ふざけんな俺はショタには興味ねえイケメン連れてこい」
…………それ、なら
「優馬先輩!!」
「はいなんでしょう」ビク
「ボク達のために保健の先生の前で人肌脱いでくれません?!!」
「死んでも嫌です☆」
……じゃあ、
「黄緑の先輩ーっ!」
名前は忘れたけど、黄緑頭の先輩!
「えっえっ、何僕?」
「はい!先輩お願いがあります、脱いでください!!」
「は?」
かくかくしかじか………
「なるほど……協力してあげたいけど、ごめんね、僕前にその先生に襲われかけたことあるから…………」
その話を詳しく、と言いたいところだけど………生憎今はそんな余裕はない。
「もう保健室は怖くて行けないんだよね………ごめんね」
「いえ、我儘言ってすみません……今度ゆっくりじっくりねっとりその話、聞かせてくださいねっ!」ニコッ
………………さて、
「海斗先輩……は背が小さいから無理そう………そうなると、イケメンな人っているかな……」
全人類の後輩なボクが堕としてきた先輩達を漁ればいるかもしれない、けど…………
(出来れば新キャラは増やしたくないんだよね……)
イケメン………イケメン…………
「……………………はっ!」
ーーー
「お久しぶりですっ!二階堂先輩っ!」
卒業生に来てもらいましたぁーーー☆
「純也無しで呼ばれるなんて珍しいな、…それで、何の用だ?」
ほぼ無理矢理呼んだのに怒らず感じ良さげにしてくださる先輩神です。
「はい!あの……保健室に、行きたくて」
「場所が分からないとかか?」
流石にそれでOBは呼ばないです。
「まあ、来てくれればわかります!御手数ですがお願いします……!」
ーーー
真冬の手を引いて、その後ろに二階堂先輩がついてきてくれた。
保健室の扉を開けると…………
「…………なんだ、また来たのか…………俺はショタには……」
コーヒー片手に保健の先生がこちらを鋭い目で見た。
あしらわれる………………と、その時、
「………………………………なッ………………」
先生の手から…………コーヒーカップが、こぼれ落ちた…………
「…………!危ない!!」
それにすぐに反応した二階堂先輩が………………
先生の元へすぐに駆け寄って、カップが床に落ちる前に…………受け止めた。
先生を庇うのも忘れずに、
「……………………!!!」
「だ、大丈夫か!!?いきなり手を離したら危ないだろう………………って、聞いてるのか?」
「……っ………」
傍から見ればすごいBL。
「お……お前は!!!俺が去年狙いに狙っていた高身長無愛想男子の二階堂龍輝!!!!」
狙ってたのか。
「…………………………は?」
「お前をいつ襲えるか楽しみに楽しみに計画を立てていた去年の春…………けどお前は!!一度も保健室になんて来てくれなかったな…………」
「保健室は具合が悪い人の為のものだからな?」キョトン
………………
「挙句来たと言ってもただのお見舞い………どうしてお前は体調を崩してくれなかったんだ……」
「それは、純也が生徒会の仕事で疲れて倒れた時に来た日のことか、いや……体調が悪いと分かっていれば最初から学校になんて行かない」
まあ、ですよね。
「正論パンチ痛い………」
「せんせ、ボク達保健室使っていいですか?」
「二階堂先輩をくれたらフリーパス」とか言われたから、遠慮なく使う事にした。
「フリーパスチケットもらいましたっ」
「そうか、良かったな」
「………」
ちなみに二階堂先輩は連絡先を交換した(無理矢理された)らしいけど、即ブロックしてた。
「それがあれば大丈夫だろ、それに………俺には、躾しなきゃいけない“犬”がいるからな……」
………………!
「ふふ、絶対その犬離しちゃ駄目ですからね?」
「そんな事、あいつがさせてくれないだろ」
そう言って、二階堂先輩は呆れたように笑った。
………………うん、最高です。
ーーー
「ていうか本来の目的だけど………先輩、ボク……太ってますか?」
「何言ってるんだよ……お前が太ってたら俺はどうなるんだ」
でもなぁ…………
「李世は痩せすぎだし、もっと食え」
「は、はぁい…………」
まあ、女子じゃないんだし…………体重なんて、気にしなくても……いいのかな。
太りすぎなければいいんだよね!つまり!
「うんうん!……あ、先輩!ちなみに真冬の身長も大丈夫ですか?」
きっと先輩なら希望をくれる………
そう信じて、聞いてみた。
……………………が、
「いや……真冬は小さすぎだろ、もっと食べて早く寝なさい」
………………………………
…………あぁ……………………
「…………っり、りせの糞豚……!!」
「はい、すみません」
まあ、ボクが怒られますよね。
ーーー
「……っ……っ」もっもっ
あれからずっとバナナ食べてる。
「喉渇かない?ほら、牛乳…………」
「……んく、…………ん」
わあいい飲みっぷり。
「…………、」うと……
食べすぎて眠そうにしてるし…………
「…………」こくん
「お昼休みまだあるし、寝てて大丈夫だよ」
そう言うと…………眠すぎたのか案外素直に、ボクの膝を枕にして寝てしまった。
「…………寝てれば子供みたいで可愛いんだけどな」
口を開けば糞豚糞豚って生意気だけど…………
(それすら………………結局可愛くて、許せちゃうボクがいる)
幼い表情で小さな寝息をたてて眠る真冬の前髪と額の間に手を入れて、優しく撫でて
「………どんな姿でも、好きだよ」
そう、呟いた。
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