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2章 夏休み。
83. 小さいおとこのこ
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「……あ、このアニメ…見た事ある」
目当てではなかったけど、たまたま通りかかった時に目に入った同人誌の元ネタ。
(確か……病弱な女の子と、その子の病室に毎日遊びに来てくれる……名前以外は何も分からない、不思議な男の子の話だったっけ)
小学生の時に何となく見ていた気がする。
(病室に毎日遊びに来てくれる男の子………か)
あの時は気付かなかったけど、なんか……この話って、
(あの時の、僕と未来斗の話に似てるかも………)
ーーーーー
数年前……僕が4才位の時の話。
あの時はまだ、僕は生まれつき体が弱かったのと、病気持ちだったせいで毎日病院で生活していた。
「………っ、けほ、けほ……、ッ……ぇう………」
「郁人、大丈夫?」
「病弱」なんて今でも言われるけど、今はまだましな方。治療して体が整うまで、毎日毎日、苦しかった。
たまに発作が起こるから、家に帰れずに、母に毎日来てもらいながら病室で過ごしていた。
「………ぅ…ん……大丈夫だよ………」
咳込む度に母が隣でリンゴを切る手を止めて、背中をさすってくれる。
どうしてこんなに母に迷惑をかける体に生まれてしまったのか、苦しくて、生まれてきたことを何度後悔したか……本当に、辛かった。
父が僕の為に書いた子供向けの小説も、母に文字を教えてもらいながら読み続けていたら、とっくに飽きてしまっていた。
そのおかげか、年齢の割に頭はよかった方だったと思うけど………いろいろな言葉の意味を覚えてしまったせいで、悪い言葉も知って………まだ4才なのに、死んでしまいたいとさえ思う程。
そんな状況でも、生きたまま明日は来てしまう。
今日もまた、苦しい1日になる。
でもその日は、少しだけ………違かった。
「……おかあさん、今日…調子いいから、歩きにいきたい。」
今日は隣で洋梨を切っている母に、思い切って聞いてみた。
母も父も体は強くなくて、きっと僕はそんな2人の遺伝でこうなってしまったんだと思う。
ふわふわした髪を腰まで伸ばした母が、咄嗟に窓の外を見た。
「……そうね。天気もいいし、お散歩に行きましょうか」
母は、すごく優しい。
けど少し控えめで、気の弱い人だった。
「………うん」
「どこに行きたい?」
きっと母は、僕が外に行きたいと思っている。
だから天気を確認したたんだろうし、免疫力をつけるためにできるだけ運動して欲しいんだと思う。
………………でも、
(外は……)
ふと、ベッドから、窓の外……中庭を見た。
中庭では、僕と同じくらいの……小さな子供達が、走ったり何かしたりして、遊んでいる。
そんな中に、1人で行けるはず……ない。
僕には、友達がいなかった。
「………病院の中を歩きたい。外は暑いから。」
そう言うと、母は少し悲しそうにこくんと頷いた。
ーーー
廊下に出ると、いろんな人が歩いていた。
4才な上に小柄だった僕の身長は1mに満ているかどうかくらいで、周りの人は大きくて怖かった。
母についてきてもらいながらしばらく歩いて、疲れたから広場の椅子に座って休んだ。
「……………」
ぼーっと壁にかけられたテレビの画面を見ていると、
「…………………、…………わ」
隣に………男の子が座って、こちらをじっと見ていた。
自分より少しだけ背の高い、茶髪の男の子。
(………………4、5才くらいかな)
「………………なに………?」
つい、話しかけていた。
男の子は、何故か僕に興味津々というかのようにきらきらした目で僕を見ていた。
そして、
「お前………小さいな!!」
なんて………………
「っ……う、うるさいな……!!」
つい叫んでしまって、すると男の子はにぱっと笑った。
「はじめまして!!おれ、みくとっていいます!」
(みくと…………………………?)
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