ゆうみお

あまみや。旧

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2章 夏休み。

78.大丈夫。

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(美優side)


朝ごはんを食べて、着替えた。



「…………」




なんか……初めて着る服って、着る時…なんか、わくわくするっていうか…………



「わぁー!似合ってる!可愛いよ、双葉ちゃんっ……!」




数日前に買ってみた半袖の白のワンピース………私なんかが似合うか不安だったけど、



「似合いますか……?変じゃないですか?」
「全然変じゃないよ!ほら、鏡見てみなよ!」



部屋の隅ににあった等身大の鏡。
その前に立っておそるおそる見てみると…………






「…………ぁ………」








可愛い……、………………服。






「ふ、服は可愛いですね……」
「双葉ちゃんも可愛いよ!でもその髪じゃ少し似合わないから…………はい、編みこみハーフアップにしてみた!」



器用な明日香さんがすぐに髪を結んでくれて、少しだけ……自分自身も……ましになった。




「明日香も髪いじってみようかなー……いつもはただのツインテールだから、三つ編みを作って付け根に巻いて……っと。」



……明日香さんって、すごく器用なんだな…………






黒くて細めのリボンがついたブラウスに、黒のスカート。
いつもはオタサーの姫みたいなオタクっぽい服装なのに、今日は……お嬢様みたい。



「なんか……今日はお嬢様みたいですね」
「そうかな?双葉ちゃんとお揃いだね……!」



 
そう言って明日香さんは犬みたいにわんわん絡んできた。





………馴れ馴れしいなぁ………………







(けど……不思議と、嫌いになれない……)









ーーー





「…………あ………そういえば」



澪にお土産頼まれてたっけ…………






「んー……」



特にここの名産品もないし、お店は遠い……



まあ…………砂でも持ってってあげるか。





「明日香さん、小瓶ってありますか?」
「昨日今日のために雑貨屋で買ってたユ〇コーンティア〇ズの宝石キャンディの瓶ならあるよ!」



丁度いい。



「それ……捨てるなら下さい、使いたいので。」
「食べおわったしいらないからあげるよー、はい!好きに使って!」




こんな可愛い瓶に砂を詰めるのはちょっと気が引けるけど…………
 





(うう……ごめんね……っ!)




勢いで庭の砂を彫り詰めた。










(双葉ちゃん砂マニアなのかなー……)
「明日香、そろそろ出るから支度…………って…美優さん何を……?!」
「母国に持って帰るための砂を詰んでるんだってー(適当)」






ーーー



短い時間だったけど………おばあちゃんの家から出て、車に乗った。

車に乗る寸前まで明日香さんと未来斗が


「おばあちゃぁぁぁんまたくるからねぇぇぇ!!!明日香のこと忘れないでね!!」
「これ……長生き出来るBL小説!!字を読むのはいい事だからちゃんと読むんだよ……!」



って寂しそうに…?してた。






「……もう、またいつでも会えるから。それじゃあ母さん、体には気をつけてね。」
「なぁに…。まだまだ元気だよ……!バク転だってできるんだからねェ……!」
「それは……やめて……?」



 
よぼよぼしてるかと思ってたけど、割とアクティブな方だった。






ーーー
 



おばあちゃんの姿が見えなくなる最後まで2人が手を振り続けてて、なんだかいいなって思いながら私はその様子を見ていた。



(私も久しぶりに親戚のおばあさん達の家に帰りたくなりました……、でも、とりあえず今は……高校に受からないとですね。)




受験勉強……出来ればあまり聞きたくもない言葉だけど、





けど…………それも試練だから………………







(うぬぬぬぬ…………)







ーーー



車に乗って数時間後…………




行きとは違って、皆どっと疲れが出てしまったのか………隣の明日香さんに限っては、爆睡していた。


そう言う私も眠気が襲ってきて…………






(………………)








いつの間にか…………眠ってしまっていた。








ーーー




(海斗side)



気が付くと、行きとは席を反対にしたから前にいる明日香さんと美優さん、そして助手席の…未来斗のお母さんも眠っていた。 




「女の人達皆寝ちゃってる……」
「疲れたんだろうなー……小声で話した方いいかも」


というわけで声の音量を小さくして…………





「でも……本当に楽しかったな」
「うん、俺田舎に来てこんなに楽しかったの初めてかも……いつもも楽しいけど、今回は……特別。」




………………





「なぁ……未来斗、俺……ちゃんと言えるかな」







怖い。






「父さんに………言える気がしないんだ………、拒絶されそうで、怖い…………」






兄のことを「気持ち悪い」と罵ったあの人に、








打ち明けることが、怖かった。









「……大丈夫、俺がいるから!」






………………







どうして、そんなに明るく笑えるんだろう。






どんなに不安でも、そうやってただ無邪気に笑ってくれるだけで…………安心する。







「………………ありがと。」













そう小さく呟いて、手を重ねた。















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