ゆうみお

あまみや。旧

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1章 一学期。

31.怖くない

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(澪side)

汗が止まらない。
「……じゃあ、行くよ、澪。」

本当なら今すぐ消えてしまいたい。
「う、うん……」

でも……
「大丈夫?怖くない?」
 


覚悟を決めないと。




「怖く、ないよ………」



もう、逃げられない。





「じゃあ行こっか……肝試しへ!!」
「ほんとにいくの…!?」

めちゃくちゃ帰りたいです……っ


「大丈夫、生きて帰れる大丈夫大丈夫大丈夫………「澪?」ひぅっ…!!」


もうやだ……帰りたい。
怖い………



まさか、コースがこんなに怖いとは……


お墓、森の中、神社。それぞれの場所のどこかにスタンプのハンコがあって、それを今手に持っているスタンプカードに全て押して無事この場所に戻ってこれたら合格、というわけ。


でも、でもでも……



(怖すぎるよ………)





こんなの、聞いてない……





ーー

とりあえず歩いてみたけど、怖い……
人がいなくなって尚更怖さが増した。


少し前を歩く優馬を小走りで必死に追いかけた。

「…ゆ、優馬、離れて迷子になったら大変だし、あんまり早く行かないで。」


ぎゅっ、と優馬の服の袖を掴んだ。


「っ……!分かった、じゃあ手、つなご。」



恥ずかしいけど………それより今は怖いから、





「う、ん。」




……人と手を繋ぐ事なんて、二度とないと思ってたけど、



(悪いものでは無い、かな……)



自分よりも少し大きい優馬の手が、優しくて暖かくて、少しだけ落ち着いた。





「……っ」


いきなり冷たい風が吹いた。


「風かー……まだ少し寒いし、パーカーだけじゃ寒いなー……」


そう言いながら照れくさそうに笑う優馬。

まあ、僕はシャツの上にカーディガン着てるから、そこまででもないけど………



「………あ、あっためてあげよっか?」
「え?どうやって?」


「それは……」



そう言うと、僕は優馬をぎゅっと抱きしめた。


「えっ…」



優馬の方が身長が高いから、自然となる上目遣いは仕方ない。


「……少しはあったかい?」










「あったかすぎて、召されそう………」
「召されないで」



ーーー


それからしばらく歩いて、周りはもう何も見えないくらいに暗くなっていた。
本格的に怖くなってきたかも……


「………どう、しよ。」
「え?」


優馬?
なんか、様子が………


「………やっぱり、暗いのは……」


急に風が吹いて、その呟きは聞こえなかった。


「………」





風がやんでもまだ、優馬は下を向いていた。

「……何でもない。

こんな暗いところに2人きりだと、理性がたもてないなーって!」


……あ、いつもの変態な優馬。

なんか、元気なさそうに見えたけど、気の所為だったかな。




「……ところで、これは期待してもいいってこと?」






ふと下を見ていると、何故か自分の手の指が、優馬の着ていたパーカーの裾をつまんでいた。



「何?怖いの~?」

すごく嬉しそうにニヤニヤしている優馬。



……………




………






……ッ!!?






「な、なんで……!?違う!!怖くて気が付けば掴んでたとか……そんなんじゃない!!!」
「全部言ってるよー」



……っ!!



「もー……顔真っ赤にしちゃって~、可愛いなぁ、澪は。」
「頭撫でんな……ッ!!」



ムカつく……!!





なんか、ほっとした。
いつもの雰囲気だ。




「あ、てか何してもいいってことだよな?」



…………え?






ーーー


……何してんだろ、ほんと。


こんな夜道で、高校生の男2人で……手を繋ぎながら歩くなんて。


一体、何してんだろ………


隣で優馬は嬉しそうにしていた。


『じゃ、手、繋ごっか!』



……最悪だ。




こんな奴と、手繋ぐなんて………




でも。






(不思議と、怖くはない。)




それが、隣にこいつがいるからなのか、



手を繋いでいたからか、




そんなの、知らないけど。





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