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1章 一学期。
28.君がいないと
しおりを挟む「これが……タピオカ……!」
郁人が珍しく目を光らせていた。
そんなにタピオカ飲みたかったのかな。
「桜木ってタピオカ好きなの~?」
そこに、すかさず莉音が話しかけた。
「ううん、でも最近流行ってるからどんなのかなって……別に好きとかそういうのじゃないんだ。」
少し照れくさそうに話す郁人。
なんか、新鮮だな……
すると未来斗が、
「なぁなぁ!これ飲んだら本屋行こー!」
「……BL?」
「そう!今日新刊発売なやつあってさ、あー…でもあれ確か、アニモイトならドラマCDもつくんだっけか………」
なんか、よくわからない話をしている。
でもアニモイトは分かる、アニメグッズが沢山あるお店だって聞いたことある。
僕は行ったことないけど………どんなとこなんだろ。
「じゃあ少し歩けばアニモイトあるし、そこで買おうよ。」
郁人の提案に、未来斗はぱぁ、と笑った。
「買う!ドラマCDほしい!」
なんか、無邪気な子供みたい。
可愛い...
ふと隣にいるなにも喋らない優馬を見ると、
「あまぃ……うぇ……」
ミルクティーを飲んで死にかけていた。
「優馬……甘いの苦手なの?」
「最近なんか味覚変わってさー……いや、てかこれ程甘いものを飲んだの初めてなのかも、澪、飲んで………」
「えぇ……もう、仕方ないな。」
といって受け取って、少し飲んでみる。
自分のと比べると、そこまで甘くもない。
………んー……
また隣を見ると、今度は勝ち誇った顔をした優馬がいた。
「うぇーい!!関節キスー!!」
「………」
それが目的かよ。
頭にかけようと思ったけど、二度目は可哀想なのでやめといた。
その代わり、腹パンはしといた。
ーーー
「アニモイト!」
しばらく歩いてアニモイトに来た。
結構な距離で疲れたけど……未来斗と郁人は全然疲れてない、すごいな……
「萌の力だね…!僕、全く疲れないよ。」
「俺もー!」
もえ……?
それにしても、広いなぁ………
「………らふ、らいふ…?」
可愛い女の子が沢山書かれたクリアファイルやら何やら。
「あぁそれ?それはラフライフっていう、超人気アニメだよ~、買う?」
「う、ううん……大丈夫。」
郁人はこういう系も好きなの…かな?
しばらく1人で店内を回っていると、さっき新幹線のような速さで人混みに消えていった未来斗がいた。
なんか……誰かと話してる。
誰だろうと近寄ろうとした、その時。
「わっ…!」
人混みに巻き込まれて、転びそうになってしまった。
そこにすかさず……
「大丈夫か?澪。」
「か、海斗……!」
近くにいた海斗が手を差し伸べてくれた。
「ありがと……あ、ていうかあれ見て、未来斗が誰かと話してる。」
「え……っ、あ…ほんとだ……」
よく目を凝らすと、未来斗の話し相手は、よく知った顔だった。
「……李世さんと、真冬さん?」
2年生の後輩達。
未来斗を尊敬していて、それでかつ腐男子の2人。
未来斗と後輩2人は、仲良いんだよね。
とりあえず、海斗と一緒に未来斗のところへ向かう。
「…あっ、小さい先輩とクソ…じゃなかった、青い先輩!!」
この子は何を言ってるんだろう。
「……」クス
もう1人には笑われたし……
後輩の1人は高山李世、金髪で星のピンをつけた素直で活発な後輩。
まぁ、素直すぎてたまに傷付くけど。
もう1人は雪島真冬、一切声を出さない無口な後輩。
白い髪で、李世さんとお揃いなのか、頭にヘアピンをつけている。
李世さんは片方に星型にしたアメピンを付けてて、真冬さんは両方にアメピンを×にしてる。
ちなみに2人共、その上にもう1つアメピンをつけてて、そこがお揃いっぽい。
……って、僕の説明じゃ分かりにくいかな………
そもそも、誰に説明してるんだろ。
「あ、澪、海斗。たまたま李世達にあってつい話してた!偶然だよなー!」
「はい!もしかしたら運命かも、ですね?」
「……っ」
そう言って李世さんが未来斗に抱きついた。
こんな所で何してんだよ……って思ったけど、海斗を見るとそれどころじゃなかった。
なんか……嫉妬…してるのかな。
オーラが、怖い………
「そ、そうですか……ていうか、距離近くないですか?」
もう余裕が無いのがまるわかりだった。
声でもう、伝わってくる。
「わっ、こわーい…真冬、こんな先輩になっちゃダメだからね?」
「……」コク
李世さんも、普通なら優しいしこんな意地汚くなんてないんだけど……海斗には何故か態度がひどい。
僕は小さいって言われるだけですんでるけど、なんで李世さんは海斗を煽るんだろう。
「……」
次の瞬間、ずっと無口だった真冬さんが李世さんの裾をくいっと掴んだ。
「ん?どしたの真冬。」
李世さんが特に甘いのは真冬さん。
無口で人と話せない真冬さんの代わりに会話してあげている。
真冬さんは李世さんにだけ耳元で囁くように話すから、誰も真冬さんの声を聞いたことがない。
まぁどっちにせよ、真冬さんは李世さんがいないと駄目だってこと。
それを理由に李世さんは真冬さんの我儘を聞いたり人混みの中では手を引いていたりって、しっかり者ならではの甘やかし方をしている。
「ボクがいないとなんにも出来ないお人形さんになってね」って感じ……な気がする。
まぁ、そんな話はおいといて。
「……」ゴニョゴニョ
「ん?あー、わかった、……それじゃあ先輩!ボク達はこれで失礼します!」
どうやら、真冬さんがここから李世さんを遠ざけた。
ナイス助言……ありがとう、真冬さん…!
後輩達は去っていった。
「………」
「海斗……?」
「あ、いや…」
なんだか、海斗の様子がおかしい。
さっきまで普通だったのに……
すると未来斗が、
「…海斗」
「…?……っ、ふぇ?」
え?
何をしてるのかわからなかった。
ふにふにふにふに
「ちょ、やめ…ふ、…ぁ、ちょ…」
俯いていた海斗の頬を、未来斗がいきなりつまんだ。
口角を上げるように、ずっと上につまんだりふにふにとつまんだり。
「さては財布を落としたんだな!元気出せっ!!」
そして、よく分からない事を言ってる。
どうやら、海斗が財布を落として落ち込んでいるのだと思い、笑わせてあげようとしているらしい。
「み、みひゅ、と…いいかげんに……っ…!!」
「未来斗、そろそろやめてあげて。」
こんな公共の場で何をしてるんだろうと思い、とりあえず僕も未来斗に辞めるように言った。
手が離れる。
「……っ、うぅ………」
手が離れた途端、海斗は一歩未来斗から離れて、顔を真っ赤にしていた。
「ば、ばか……」
え、何?なんなのこいつら。
付き合ってんの?
僕……この場にいていいの?
周りにいる可愛い女子達が、ひそひそと何か言っていた。
「ちょ、リアルBLゥゥゥ」
「┌(┌^o^)┐」
なんか、怖い……。
「……あ、ていうか優馬と郁人と莉音さんは?」
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