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1章 一学期。
27.自己紹介
しおりを挟む(優馬side)
………やばい。
あと10分で待ち合わせ時間だと言うのに、最悪な状況におちいってしまった。
さっき、道で転んだ女の子の飲み物の中身がかかって、びしょ濡れになってしまった……
「家が近い」なんて言っちゃったけど、結構遠いし………
どうすればいいんだ………
「あ、優馬!」
「…!」
声がして、振り返った。
「……!未来斗!海斗!」
ーーーーー
(澪side)
皆、待ち合わせまでに来れるかな……
莉音が飲み物を買いに行って、郁人と僕だけが待ち合わせ場所にいる。
けど……
あと待ち合わせ時間まで5分くらいなのに、まだ誰も来ない。
優馬も、未来斗も、海斗も………
それに、莉音…も中々帰ってこない。
どうしちゃったんだろ………
「ただいま…!」
「!莉音……遅かったね。」
「ごめん……色々あって、服も汚れたし最悪………」
見ると、確かに少し汚れている。
フリル…?がついた白くて短い綺麗なスカートは少し砂がついていて、上に着ていたピンクのセーターも、若干糸がほつれていた。
タイツは破れてはないけど……大丈夫、かな。
ていうか、ほんとにこの人男なんだ……
女の子にしか見えないよ………
「まぁ……莉音は澪くらい華奢だし身長も小さいし、顔も可愛いから男に見えないよね。」
今の、心の声だったんだけど………
郁人は、心が読めるのかな。
ーーー
そして、30分後…
「おまたせー!ごめん!遅れた!」
「い、色々あってだな…ゼェ…悪かった……ハァ」
未来斗と海斗が来て、その次に優馬も走ってきた。
未来斗は元気そうに笑ってたけど、後ろで未来斗のパーカーの裾を掴みながらぜぇぜぇ言ってる海斗は多分、未来斗のペースに合わせて必死に裾を掴みながら走ったんだろうけど、結果死にかけてる、って感じかな……
優馬は、自分のペースで来たのかな、息も切れてないし………
あ、ていうか優馬……珍しくパーカー着てる。
ふと莉音を見ると、何やら驚いた顔で優馬を見ていた。
そして優馬も莉音を見て、ギョッとしていた。
「「さっきの……!!」」
え?何?知り合い?
「ぁ……あ、えぅ……さ、さっきはすいませんでした!!」
すると、莉音が急に優馬に謝った。
周りは訳が分からない感じで見ているけど、海斗は何か察しているようにも見えた。
「あ、あの…まさか澪と桜木の友達だともしらじゅ…!!」
噛んでる………
「お、俺こそ!!だ、大丈夫…だった?」
優馬が珍しく人を気にかけている……!?
少し驚いた。
「は、はい!き、着替えてくるの早いですね……!」
……着替えてくる?
すると、未来斗がようやく察した、みたいな雰囲気を醸し出した。
「なるほど!優馬がずぶ濡れだったのはこの美少女となにかあって、それでずぶ濡れだったんだな!!」
馬鹿なりの推測……頑張った、ね。
優馬が説明した。
「じ、実はさっきこの子が転んで、持ってた飲み物が俺にかかって……みたいな?」
すると海斗が、
「あぁ…俺達が通りかかった時、優馬が濡れていて、そこから一番近かった未来斗の家で着替えを借りたって、事か。」
なるほど……
だからこんなに時間、かかってたんだ。
それに、莉音が少し汚れているわけも分かった。
「いやー、髪乾かすの大変だったわ……」
「ぴぇ!?ご、ごめんなさい…!!」
あ、いつものクズ優馬だ。
「まぁ……でも肝試しは夜だから、夜になるまで色んなお店回ろーよ、僕タピオカ飲みたい!」
JKかよ…
「郁人がタピオカ……!?なんか、エロいな!」
「み、未来斗…!?急にそういう事言うなよ…!!」
よく聞こえなかったけど、何やらNGワードを言っちゃったらしい。
海斗が全力で止めてた。
「でも、なんか飲んでみたい気はするよな……行ってみようぜ…!」
優馬が賛成すると、莉音、僕…って、皆が賛成したので、とりあえず行く事に。
「あ……その前に、自己紹介まだだった…ですね……俺、宝条海斗っていいます…!!」
海斗は女子の前でキョドるタイプかな。
まぁ、女子じゃないんだけど……
「!ヘタレ金持ちさん……?」
「は?」
誰が吹き込んだんだろう………
「い、いえ!ボクは莉音っていいます…!あとボク…男です。」
「……………えっ…!?」
割と普通の反応だった。
つまらないな……
「女装男子ってやつだな!可愛い!俺は鳳未来斗!気軽に名前で呼んでくれていいぞ!」
未来斗は、ほんとに気さくっていうか……馴染みやすいよね。
八重歯がチラついた猫口が可愛い。
「あ…イキリ、腐男子さん…?」
「え?」
「な、なんでもないです!!よろしく、未来斗。」
「お、おぅ…!よろしく、莉音…!」
この2人は、仲良くやれそう。
後は……
「えっと……俺は早苗優馬、あの小さい子は俺の嫁です。」
そう言って僕を指さした。
「おい」
冗談でもやめて欲しい。
すると、莉音は少しほっとしていた。
「………そ、そうなん、ですか?」
どうしてほっとしたかは分からないけど……
「………良かった、相手がいるなら、桜木はボクのものでいい、よね…………」
何か、独り言が聞こえた気がしたけど、気の所為だと思った。
「…そ、そうなんだ!澪、こんなかっこいい彼氏がいるなんて羨ましいな~!」
「なっ…!?か、かかかかっこいい…!!?まぁ……確かに俺はかっこいい、ケド……」
なんで優馬は照れてんだろ。
てか、彼氏じゃないし、こんなクズ。
「変な事言ってないで、早く行こ。」
「あ……澪がツンデレモードに入った……」
「2年生ぶりだな…っ!」
ツンデレモードって何だよ。
………はぁ……
(………桜木は、譲らないよ。)
莉音がその時そんな事を思っていたなんて、その場の誰も…知らなかった。
ーーー
この時はタピオカ全盛期だった。
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