ゆうみお

あまみや。旧

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1章 一学期。

21.させない

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(郁人side)



「葉月」



「…!間違いない…!」
「……葉月、ねぇ。」 

葉月って、名前かな、苗字かな。 



「あ、俺もそれ知らない……名前じゃないのか?」

声に出てた。

「ふぅん……まぁ、行くなら早く行きなよ。」
「で、でも心の準備が……」
「………はぁ」



ピンポーン。




「!な、何してんだよ!!」
「お前がそんななよなよしてると気持ち悪いんだよ。」
「だ、だからって、まだ俺心の準備が……」
「そんな事言ってないで、早く行きなよ。」



そんな言い争いをしているうちに、扉がゆっくりと開いた。


そして……








「か、海斗様……………!?」











(優馬side)
「ふぅ……そろそろ熱、下がってきたかも。」
「ほんとに大丈夫?」
「うん、ありがとね……」

えぇ、急にそんなこと言われると照れる………


「あはは、あ、なんか飲む?郁人の部屋だけど、まぁ大丈夫っしょ。」
「……じゃあ、甘いもの飲みたいかも。」

あ、可愛い……
上目遣いやめて……

「じゃあ、あるもので適当に作るね!」

そう言って、理性を抑えて立ち上がった。





「………優馬って、幸せそうだよね。」

「えー?」


台所からかなり距離があったからよく聞き取れなかった。




「……いいなぁ。僕も幸せになりたいよ。」






だから勿論、そんな呟きも聞こえなかった。







その時。



『申し訳ございませんでした!!!』



「「っ…!?」」




外から、叫び声が聞こえた。




「な、何…?」



聞こえてきた方向だと、きっと海斗と隣人が何かあったんだろう。






「……だ、大丈夫かな、俺、ちょっと見てく「い、行かないでよ…!」へ?」




「ぇ、あ……」




い、今何が……?


俺には、天使が天使みたいなことを言ったように見えた。


「な、何でもない…!早く、行って。」


俯いて恥ずかしそうにしている彼の顔が真っ赤になっていた。


それって、熱のせいなのか、それとも……



「………」

「え、何、は、早く行けよ……」




「行かないよ、俺、どうせ関係ないし。」



台所に戻って、棚からカップを取り出す。



動揺してる澪を気にせず、テキパキとあったもので何か甘くて温かい飲み物を作った。



「こんなんでよかった?」
「……ほ、ホットチョコレート?」
「うんっ、熱いから気を付けてね。……は、それ、と




1人になんて、させないよ。」









『お母さんもお父さんも、どうして帰ってきてくれないの……?』





1人の辛さは知ってるから。





だから、そんな辛い思い、させたくない。









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