ゆうみお

あまみや。旧

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1章 一学期。

17.あの人は

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手を洗って、言われた通りリビングに向かった。
リビングには父さんだけがいて、何やら険しい顔をしていた。


(……なんなんだろう。)


緊迫した空気の中で、父が座っている向かいのソファに腰掛ける。


「話って、何………」



父は、少しだけ顔を上げた。




「お前が転校する前にお前についていた執事、覚えているだろう。」





……それは。



「葉月さんの事ですか?」




俺が今の学校に転校してきた日の前日。
それまで、俺には執事がいた。



けど、あの人は……





「そうだ。刹那が、昨日彼の姿を見たと言っていた。」



……えっ



「母さんが……?」



「ああ、彼はどういう訳か失踪してしまっていたが、昨日、あるアパートの一室にいる事が分かった。」



葉月さんが……




彼とはあまり付き合いは長くなかったけど、優しくていい人で、俺は大好きだった。
中学の時にいじめられて病んでいた俺にも、葉月さんは励ましてくれた。

(もしいるのなら、会いたい………)




そして話したい。



どうしていなくなったのか。






「葉月君が失踪したのは……お前が転校してきた翌日。」


確かその日は、転校初日から友達が出来て舞い上がってたせいか、葉月さんに沢山話してしまったんだ。


そしたら、葉月さんに「××××という名前の方はいませんでしたか?」って聞かれて………


でも、一体誰の名前を聞かれたんだっけ…… 


それより……


「葉月さんは、どこにいるんですか?」



「確か、〇〇っていう所だったような……」






……あれ、それって。




「郁人が住んでるアパートじゃ………」











(郁人side)
「楽しかったね~」
「うん、ロッペリア、また行こ。」
「うん……わっ!」


部屋に向かっていると、急に扉が開いて危うくぶつかりそうになった。

「…あ、ごめん、ちょうど桜木さんの部屋に行こうと思ってて、ちょうど良かったよ。」
「……え?あ、ありがとうございます。」

出てきたのはお隣さんでこの前チョコをくれた人だった。

「で、でも悪いですよ……チョコだって貰ったのに。」

渡された紙袋には、今度は美味しそうなクッキーが入っていた。
「……美味しそう。」
「み、澪…!」

「はは、気に入ってくれるといいんだけど、良かったら友達とでも食べて。」

そう言って、お隣さんは部屋に戻っていった。





「……莉音の事、よろしくね。」






最後に、聞こえないように小声で何かを残して。




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