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約束

レギの葛藤 2

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 レギが『転送移動』で、たどり着いたとき、チイはヒイロに顔を擦りつけ、ヒイロが髪を撫でていた。
「…匂いを嗅がされたら…出てきて…戻らないの…」
 チイが獣人の姿になって、ヒイロに甘えている…。
「イチャイチャはその辺にしておけ」
 チイはハッとして、ヒイロから身体を離す。
 二人の親密さに、何だろう、このイライラはどっちに対してだ!
 それより、ここは奴等の巣窟!
 部屋の窓の外を見て、町が一望できるこの角度と高さ。
「ここは、山ノ上の廃棄ビルだな。ここまで調べなかった…」
 町中より少し外れに有る、小高い丘の建物。
 候補地の一つでもあったが、老朽化しているため後回しにされていた。
 元々ホテルとして開業していたが、火災で上部が崩れ、取り壊されること無く、立ち入り禁止になっているビル後だ。
 周りには木々と住宅があり、人が出入りすれば気付くだろうが、魔方陣で出入りされてしまえば分からない。
 元々ホテルだから、個室で監禁することができる。
 もっと頭を柔らかくして考えないと、いけないな…。
「きっと行方不明者も、何処かの部屋にいるはず…」
 二人は真剣な表情で、部屋の外の様子を伺う。
 そうだ、足元に転がっているこコイツら捕まえておかないと…。
「チイ。その二人を、逃がさないよう拘束出きるか?」
「はい。『布の拘束!』」
 チイはベッドやカーテンの布を浮き上がらせ、二人の男をぐるぐる巻きに息が出きるようにだけして拘束する。
 レギは通信魔法で待っているだろう人族の警察に連絡をする。
 この、ズキズキする苛立ちを何処かにぶつけたい!
「ああ、俺だけど。山ノ上の廃棄ビルだ。元締め逃したくないし、派手にやって良いか?」
 レギはそう言いきる。
「ここに居るやつは誰も逃がさないし、逃げられない」
 レギはうっすらと笑う。
 ヒイロが右手を地面にかざし、
「『フィールド転開てんかい』『光のおり』」
 光る複雑な文字の書かれた魔方陣が現れ、それが巨大化しビル全体を縦にも横に包む。
 ヒイロの『光のおり』は格別だ。
 魔法で逃げようとしても、二重構造になっているので出ることは出来ない。
 まあ、ヒイロより保有魔力が強ければ逃げられるかもしれないが…。
「これで、何処にも逃げられない。ちょっとビル一周してくる」
 そう言って部屋を出た。
 正直、二人のイチャイチャを見てられない。
「くそっ!」
 レギから冷却能力の冷気が溢れだし、壁を凍らせていく。
 誘拐者どもを氷で閉じ込めてやる!
 レギのいきどおりの矛先が、誘拐者に向いた。
 
 
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