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約束

ブレスレット

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 チイはプレゼントされた、金茶色のブレスレットを付けて仕事に行った。
 「外に出るときははずさないで」ヒイロにそう言われて、外せずにいた。
 細目だし、そんなに目立つような物ではないから、仕事に支障はない。
 ただ、目ざといレギに見つかってしまったけど…。
「これはヒイロが?」
「お守りだから「外に出るときははずさないで」と、言われたので…。仕事中は外した方が良いですか?」
 レギはじっとブレスレットを見て、ため息をつく。
 …なんのため息?
「チイは付けていたい?」
「…。」
 …分からない。
 何となく、手放したくない気がして…。
 レギがふっと笑う。
 そして、チイの髪をくしゃっと撫でる。
「良いよ。大事にしてあげて」
 そう言ってレギは自分の仕事部屋へ戻っていった。
「…。」
 …ブレスレットの事だよね…。

 
 ヒイロは二日に一度はリマ商会に、通ってきた。
 そして、チイがブレスレットを付けているのを確認すると、嬉しそうに微笑んでレギの仕事部屋へ入っていった。


 次の休日、何処へ案内しよう…。
 迷ったので、同僚の人族の友達に相談した。
 彼女は、メイは私が獣人だと知っている数少ない友達。
 仕事帰りに、最近出来たお店で夕食を食べながら話すことになり、予約してくれた。
 個室だから、周りを気にせず話せるみたいだし。と、メイも、まだ行ったことがなく、楽しみにしているみたいだ。
 最近よく来てるヒイロとの事を聞きたそうなのもあるけど…。
 
 仕事が終わり、メイと一緒にお店に向かった。
 店の周囲は木々で囲まれていて、まるで森の中へ入っていくようだった。
 料理は、香草こうさいが中心で、サラダ、ステーキ、スープなど。きつい匂いが苦手な私でも食べれる、優しい味だった。
 そして、話しはヒイロの話題になる。
「そのブレスレットをプレゼントしてくれた人でしょう。背が高いし、チイとお似合いだと思うけど…」
「…。こんな風に…好意を寄せられた事が無いから…どう接したら良いか分からなくて…戸惑ってばかりで…」
 どう話せば良いか分からなくなる…。
 メイはため息をつく。
「それ、レギさんのせいね。」
 レギさんのせい?
「気付いてなかった?チイに近付こうとする男達、片っ端からレギさんが排除してたから…」
「…。」
 気付いて無い…。
 そう言えば、長屋の皆もそんな事を…。
「だからレギさんと、チイが一緒になると思ってたのよね…。でも、そこへ彼が現れた。それも、レギさんの知り合いみたいたったし…」
「幼馴染みだって言ってた」
 喧嘩するほど中が良い…て、感じだった。
「レギさんの事はどう思っているの?」
「…お兄さん…みたいな感じ…」
 出会った頃から一回り大きくて、いつも側に居てくれた家族みたいな存在…。
「だったら、ヒイロさんは?」
「…。分からない…まだ、出会って一月も経ってないし…」
「でも、ブレスレット外さないで、て、言われて、守っているのよね…」
「ううぅ…。」
 …そう、外してはいけないのだ。
 何故か分からないけど…直感的に、身を守るために…?
「のんびり近付いて行けば良いんじゃないかしら…。チイのペースで」
 メイはくすっと、笑う。
「初々しくて、見てる方は楽しいわよ」
「そう言うこと言う!こっちはハラハラ、ドキドキしてるのに!」
「ソコが可愛いんだって」
 次の休日は、少し足を伸ばして港の方へ行ったら良いのでは。と、言う事になった。
 山や森の話しはするが、海の話しは聞いたことがない。
 浜辺をぶらぶらして、海鮮の食事をするのも悪くはない。
 お店、何処が良いかしら…。
 メイと相談して、だいたい休日の段取りを決める。
「デート。楽しんできてね」
「デートじゃ無いってば!」
 チイは、頬を染めながらそう叫んでいた。

 お店を出て、ぶらぶらと歩く。
 長居してしまって、人通りが少なくなっていた。
 美味しい食事をして、いっぱい話をして、チイの少し前を歩くメイは楽しそうだ。
 不意に、嗅いだことの無い匂いがした。
 きっと浮かれていて、注意力が散漫になっていたのかもしれない。
 ハッと気付いた時には背後に誰かが居て、口を布でふさがれ意識を失った。

「また、ご飯食べに行こうね」
 メイが振り向いたとき、ソコにチイの姿はなかった。
「チイ?」
 
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