眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

文字の大きさ
上 下
174 / 182
獣人の街グオルク ~~

古着

しおりを挟む
 僕達が談話室に入ると、年小組の子供達が嬉しそうに駆け寄ってきた。
 来ただけで、これだけ喜ばれると嬉しいよな。
 フェイの足元に、双子の兎族のカタとロタが抱きついて、アレイの足元に、熊族のグイーノと犬族のセグイが抱きついて、オルガの所に羊族のモモがゆっくりと、たどり着いたところ。
 オルガが屈んでモモを抱き寄せると、恥ずかしそうに顔を隠した。
 うん。可愛い…。
 子供達は絵本読んで!ボールの投げっこしよう!と騒いでいたが、ユーリさんに止められて、木箱の中から古着を選ぶ事になった。
 次の配達までに選んで、使わない服を渡さなくてはいけないからね…。
 子供達もワクワクしながら出されてくる服を楽しみに待っていた。

 ユーリさんとリーンさんが、木箱の中から布に包まれた古着を取り出し、服の多きさごとに確認する。
 そしてカタとロタの前に、着れる大きさの服とズボン置いて、二人に好きなのを一着づつ選ぶように、ユーリさんが言うと、嬉しそうに服を広げて選び始めた。
 それを一緒に選ぶのはフェイ。
 一着づつ広げて見せる二人に、フェイは苦笑いしながら一緒に選ばせていた。
 グイーノとセグイとモモは、同じくらいの大きさの服みたいで、三人もその服の山を広げて選び始めた。
 それを一緒に選ぶのはアレイ。
 アレイは小さいイトコがいるから上手くあしらって、「コレが良い」とか「こっちは」とか言って、楽しそうに一緒に選んでいる。
 オルガは、リーンさんと一緒に、猫族の真っ白な双子の赤子の、着替えやよだれ掛け、オムツカバーなどを選ぶ。
 赤子の場合は直ぐに汚れてしまうので、古着だけでなく、店で売れ残っているモノも入っているので、比較的に多く入っている。
 自分のモノではなく、似合いそうなのを選ぶのは楽しい…。
 
 そう思っていると、カタとロタが一枚の服の両端を互いに持って言い合いを始め、フェイがオロオロとしていた。
 ユーリさんがフェイに、どうしたのか聞くと、カタとロタが同じ服の取り合いになったようだ。
 双子だから好みも似てしまうんだな…。
 一枚の服を前に、カタとロタにユーリさんが言う。
「順番に着ようね。カタが着たら次はロタ。ロタが着たら次はカタ。一枚しかないから、一緒に着れないことは分かるよね」
「「うん…」」
 二人はしょんぼりと頷く。
 同じ服を一緒に着たかった?
 古着だから、同じものは二着無いから仕方ないけど、なんだか寂しそうだよな…。
 そう思っていると、アレイが何か思い出したように立ち上がって、木箱の中から何かを探しだし、ニヤリと笑った。
 アレイが取り出したのは、熊族の大人が着れるくらいの、ちょっと大きめの服。
 何で大人の服が入っているかと聞くと、服の面積が大きくて綺麗だから、これで子供の服を作ったりするのだとか…。
 ユーリさんが作るの?と、思ったら、他の施設に得意な人がいて、その人に作ってもらったりするのだそうだ。
 アレイはその大きな服をカタとロタの前に見せて、
「二人で一緒に着てみる?」
 と、誘った。
 二人は興味心身に、頷いて、ユーリさんは苦笑いしていた。
 アレイがまずカタに服を被せて、首もとから頭を出させると、その時点で服はカタの足元を隠し、床スレスレだ。
 片袖から右手を出させて、ロタにその服に潜り込むように言って、首もとからロタが頭を出す。
 揺ったりとした首もとに、二人の頭が出てきたところで、グイーノとセグイ、モモは笑い出した。
 分かる…。 
 何とも言えない面白さ…。
 そしてロタに片袖から左手を出させて、服の中で二人が手を繋げば、完成のようだ。
「歩いてみようか」
 アレイの誘いに、真面目な顔をして二人が真っ直ぐ歩きだし、さらにグイーノ達がお腹を抱えて笑い出した。
 それが面白くて、タカの右手がロタの頭を撫でると、ロタも真似して左手でタカの頭を撫でる。
 グイーノ達、三人の笑いが止まらなくなった。
 二人が真面目な顔をして、真剣にそれをしているから余計に笑いを誘う…。
 僕達も楽しそうな子供達を見て、いつの間にか笑みを浮かべていた。
 
 で、一緒に着るってこう言う事も有るよ。
 と、アレイが笑って言った。
「一枚を交代で着れるよね」
「「うん!」」
 いっぱい笑って楽しんだ二人は交代で着ることを約束してくれた。
「よく一緒に着るって思い付いたね」
 オルガは気になってアレイに聞くと、イトコのライカとライクが二人で着て遊んでいたのを思い出した。と、言っていた。
 
「さあ、選んでしまいましょう」
 ユーリさんにそう言われ、カタとタカはそれ以外の服を一枚づつ選び、他の子供達も選び出した。
 子供達には、好きなのを一枚選んでもらって、後はこちらで好きそうなのを選ぶそうだ。
 着替えは、一枚では足りないもんね…。

 選び終わる頃にはお昼の時間になり、そこそこに片付けて昼食を食べることになった。
 年小組の子供達はお昼の後はお昼寝。
 その間に、ユーリさんは他の服を選ぶのだとか…。
 学校組は、帰って来たら、服を選んでもらうそうだ。
 好みも有るしね…。

 そして僕達は、年小組がお昼寝の間に、リーンさんと一緒にユーリさんの家に行って、結界が張られた部屋で話をする事になった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...