上 下
162 / 182
獣人の街グオルク ~~

街の散策 2 ~小さな広場~

しおりを挟む
 フラフラと西区の商店街を見て歩いていると、こちら側にも木々で囲まれた小さな広場が有って、入り口付近に屋台が三件並んでいた。
 お昼に近いからなのか、屋台には三人づつ人が並んでいた。
 オルガ達は何が売っているのか気になって、広場の屋台に近付いた。
 それぞれの屋台の横の看板には、簡単な絵と値段が書かれていた。
 丸いパンに切り込みを入れ、野菜と肉を挟んだパンの屋台。
 飲み物と小さな蒸し菓子の屋台。
 鳥の唐揚げの屋台。
 三人は顔を見合わせた。
「「「全部欲しいよね!」」」
 ちょっと昼には早いが、三人はそれぞれの屋台に並び、三人分購入して、一番最初に購入し終わった人が、座る場所を確保することにした。
 
 オルガが並んだ飲み物と蒸し菓子の屋台で、飲み物を三個と蒸し菓子を三個購入して、お店の乗せ板を借りて運んだ。
 どこでも乗せ板の貸し出しをしてくれるのはありがたい…。
 両手では持ちきれないからね…。
 すでに購入し終えていたフェイは、肉と野菜の挟まったパンを五個持っていて、近くのベンチに腰かけていた。
 えっと…五個って事は、二人は二個づつだよね…。
 そう思っていると、アレイも唐揚げが入った大きな袋を手にして近付いて来た。
 その量、食べきれるのか…?
 思わず心の中で思った。
 食べきれるだろうが、この後、まだ、チーズケーキを食べる予定をしているんだけど…。
 食べ盛り…僕も同じはずなんだけど…。
 オルガは苦笑いしてベンチの上に飲み物が乗った板を置くと、ベンチに三人並んで座り、購入してきた食べ物を分け合って食べ始めた。

 オルガはパンにかぶり付き、小さい広場を眺める。
 屋台は、さっきより人が並び、作っている人は忙しそうだ。 
 購入したモノを持って帰る人もいれば、ベンチが空いていないので、草の上に敷物を敷いて座って食べている人もいる…。
 用意周到だ。
 まあ、毎日になってくると、準備して買いに来るのかも…。
 唐揚げの袋を差し出されて、一つ摘まみ、口の中に入れ、味わう。
 唐揚げはやっぱり美味しい!
 飲み物を飲んで、パンをかじる。
 ほどよい風が木陰に吹き、葉っぱが重なりあって、サラサラと音をたてる…。
 『クルーラ』とは違う音…。
 木々が少ないからか…。
 水呑場の水の流れる音も、小川とは違う…。
 『クルーラ』から出て、街にいるんだ…。
 オルガは食べながら、周りの音の違いに、ようやく実感がわいてきた。


 昼食を食べ終わり、ゴミを屋台の横の箱に入れ、乗せ板を返して、小さな広場を出た。
 ぼくたちが座っていたベンチは、すぐに屋台で買い物した人が座り、食事を始めていた。
 こういった屋台が所々に有るのは良いよね…。
 ちなみに、お腹が一杯で、蒸し菓子まで食べれなかったので、鞄の中にしまった。
 今日の夜のおやつだ。
 昼時だからか、人通りはさっきよりは人出が減って歩きやすくなっていた。
 オルガは見たことの無いお菓子を見つけると、お店に入って、お持ち帰り出来ればちょっと買って、宿に帰ったら味見して、気に入ったら、『クルーラ』に帰る前に、もう一度来て、お土産にしようと考えていた。
 『白の館』の皆にと、ヒナキさんやアレクさん達にだ。
 アレイとフェイと一緒にだったら、出掛けても良いと、やっと許可を出してもらえたから…。
 『クルーラ』の外では、誰も助けに行けないから、心配なのは分かる。
 僕も気を付けるし、少しは自立していかないと…。
 心配性の皆に、「ただいま」と笑顔で言えるように…。
 それに、意外と皆、甘いもの好きだから、また『グオルク』に行っても良いよと、懐柔してくれないかな…と、思うのもある。
 なので、半分お菓子屋巡りになっていた。
 
 もらった地図の中心部の交差点に来て、右に行けば、テイルさんが教えてくれた、東区寄りのチーズケール屋さんだ。
 まずはお店の場所の確認に、右手に曲がって歩き出した。
 この通りも装飾品の店や、服屋、紙屋が有った。
 そうだ!
 『折り魔紙』の解説書を作るための、普通の紙束が欲しい!
「紙屋に行こう!」
 オルガ達は紙屋に入り、店内を見回した。
 思ったより、紙の種類が多いぞ…。

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

超時空スキルを貰って、幼馴染の女の子と一緒に冒険者します。

烏帽子 博
ファンタジー
クリスは、孤児院で同い年のララと、院長のシスター メリジェーンと祝福の儀に臨んだ。 その瞬間クリスは、真っ白な空間に召喚されていた。 「クリス、あなたに超時空スキルを授けます。 あなたの思うように過ごしていいのよ」 真っ白なベールを纏って後光に包まれたその人は、それだけ言って消えていった。 その日クリスに司祭から告げられたスキルは「マジックポーチ」だった。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

見よう見まねで生産チート

立風人(りふと)
ファンタジー
(※サムネの武器が登場します) ある日、死神のミスにより死んでしまった青年。 神からのお詫びと救済を兼ねて剣と魔法の世界へ行けることに。 もの作りが好きな彼は生産チートをもらい異世界へ 楽しくも忙しく過ごす冒険者 兼 職人 兼 〇〇な主人公とその愉快な仲間たちのお話。 ※基本的に主人公視点で進んでいきます。 ※趣味作品ですので不定期投稿となります。 コメント、評価、誤字報告の方をよろしくお願いします。

処理中です...