眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

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獣人の街グオルク ~~

魔素濃度 1

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 さっきの案内所の所にいた人がやって来て、ヤナックさんの手が空いたから、呼んでるよ。と、教えてくれてので、遊具の的当てだけを購入して、二階のヤナックさんの執務室へと向かった。

 僕達の、『グオルク』に滞在中の身元保証人は、『リマ商会』のヤナックさんだ。
 毎年何人か、『クルーラ』から『グオルク』を訪れ、相談や手助け、拠り所として、お互いに協力する契約を『クルーラ』と、しているそうだ。
 『クルーラ』から来ているオルガがいれば、『クルーラ』出身でなくても、一緒に行動するアレイやフェイの、身元保証人までしてくれるらしい…。
 有りがたいです…。
 そして一緒に行動する人達は、『クルーラ』出身者の護衛も兼ねるのだとか…。
 アレイとフェイは、名目上の護衛になっている。
 『クルーラ』から離れて、仲間と一緒に行動して協力し合い、『グオルク』での仕事や目的を楽しむと言うのも、僕達の勉強になるようだ。
 困ったときの相談場所として、ヤナックさんがいてくれるのは、初めての街を歩く僕達にとって、とてもありがたいことだ。
 

 部屋に入ると、ヤナックさんはソファーに座ってニコニコと微笑んだ。
「どうした?」
「欲しいものが有って…」
 オルガがそう言うと、ヤナックさんに「とりあえずソファーに座れ」と言われて、三人はヤナックさんの向かい側のソファーに座った。
 そしてオルガは、今日、行ってきた施設の話をして、『魔力紙』に記録を残したいから、『魔力紙』は置いてますか?と、聞いた。
 一応、何に使いたいか、説明しないとね…。
 ヤナックさんは微笑んで「有るぞ」と、言ってくれたが、「『グオルク』で書くのには向かないぞ」と、教えてくれた。
 『グオルク』で書くのは向かない?
 どういう意味だろう…。
 オルガが首を傾げると、ヤナックさんに、『魔力ペン』は持っているのかと聞かれ、鞄の中から細長い箱に入った『魔力ペン』を取り出した。
 『魔力ペン』は、『魔力紙』に魔力で文字が書けるペン。
 主に魔法書関係の保存版を書くときに使われている。

 オルガは箱を机の上に置くと、中から『魔力ペン』を取り出した。
 文字を書く練習をするのに、ヒナキさんにもらった『魔力ペン』は、いつも大切に使っている。
「いつものように、魔力を流してみろ」
 ヤナックさんに言われて、『魔力ペン』に魔力を流した。
 『魔力ペン』に刻まれた魔方陣が、魔力をインクに変えて、魔力紙に文字を書くことが出来る、不思議な魔道具だ。
 オルガがいつものように魔力を流すが、一向に『魔力ペン』に刻まれた魔方陣の反応が無い…。
 何でだ…?
 もう少し強く魔力を込めてみようか?
 オルガはゆっくりと魔力量を増やした。
 いつもの倍くらいの魔力を流し初めて、やっと『魔力ペン』に反応が有った。
 さらに『魔力ペン』の魔方陣を発動させるために魔力を込めるが、なかなか発動してくれない…。
 これだと、とんでもなく魔力を使う…。
 それでも、一度どれだけ魔力を込めれば発動するのか確かめたくて、さらに魔力を込めた。
 
 えっと…通常の五倍くらい…。
 オルガは、『魔力ペン』が起動した時点で魔力を込めるのを止め、手にしていた『魔力ペン』はゆっくりと魔力が薄れて、元の状態に戻っていった。
 どっと脱力感が襲ってきて、オルガはソファーに寄りかかった。
 アレイとフェイが心配そうに、オルガの顔を覗き込む。
 さすがにちょっと疲れた…。
「書くのが向いていない理由がわかっただろ…」
 オルガは頷いた。
 コレだけ魔力消費が激しいと、文字を書くどころではない…。
 『クルーラ』と『グオルク』の違い…。
 そうか、『ベイエル』に初めて行ったとき、魔力操作が出来なかった事の理由と同じだ!
「『グオルク』の魔素濃度が薄いから、多くの魔力を使う…って事ですよね…」
 ヤナックさんはニコリと微笑んで言った。
「そうだ。『クルーラ』に比べて『グオルク』の魔素濃度は、七、八割りくらい…。体内魔力を多く使うからな。そのため魔石を使った魔道具が多く売れているのは、少ない魔力で稼働することが出来るからだ」
 納得だ。
 『グオルク』に来てから、魔力を使っているのを見たのは、『折り魔紙』の『ツル』の外灯に魔力を入れている時だけだ。
 
 でも僕達が創立祭で、『折り魔紙』の『ツル』に魔力を入れて遊んだときは、ソレほど魔力を使った感じがしなかった…。
 何が違うのだろうか…。
「…魔方陣を…使ってない…」
 オルガはハッとして、ヤナックさんを見る。
「『折り魔紙』は、『魔紙』魔力を帯びた紙だから、魔力をあまり使わない…もともと紙じたいに魔力を保有しているから…なのか…」
「魔石の代わりとまで言わないが、使い方しだいで便利だと思うぞ」
 ヤナックさんは微笑む。
 ああ、そうか…。
 創立祭で使った外灯は、ソレの代表的な魔道具だ。
 一般家庭でどれだけ使えるのかの、検証も兼ねての販売だと言っていた…。
「…まあ『グオルク』でも『魔力ペン』を使えるように、魔力量の調整はしておいた方が良いだろうけどな…」
 魔力の余裕がある時に、ちょっと試しておこう…。

 と、言うことは、普通の紙に書いて記録して、『クルーラ』に帰ってから、清書すれば良いのか…。
 だったら、『リマ商会』の売場にも売っていたはず…。
 今度、施設に行く前に、買っていこう!
 オルガが納得したような顔をしたので、ヤナックさんが声をかけてきた。
「次はいつ、施設に行く予定をしているんだ?」
 

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