眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

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獣人の街グオルク ~~

ユナの事情

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「ユナはもうすぐ施設を卒業して、学校の寮に入ることになる。今はまだ、無理なのだけれど、いずれ熊族の住む『ベイエル』で保護してくれないかしら」


 ユナは『魔力紙』を折る事が出来、説明も無しに『ツル』までも折れてしまった。
 ユナが言うには、時々夢の中で本が出てきて、ソコに折り方が書いてあって、その通りに折っているだけなのだと言う…。
 ああっ…コレ、『神託』だったか…『お告げ』だったか…。
 神官が、まれに託される、何かなんじゃないか?
 でも、折り方だけで、それをどうするとかは無いって事は、また違うのか?
 今は子供の遊びとして、文字を練習した紙を使って折っているが、今回の創立祭で、『ツル』と言う『折り魔紙』が一般市民にも目にするようになった。
 今までは、行商人や旅人、調査隊、街や国を渡り歩く人々の、補助的な魔道具として活用されてきたが、生活の一部として活用されるようになると、出所を探すそうな者が現れる。
 今は『コップ』だけなので、折り台さえあれば誰でも折れるから、子供達のお小遣い稼ぎくらいにはなる。
 だが、『ツル』は折れない。
 今後『ツル』を使う事が増えれば、何処で『ツル』を折っているか探されて、知られてしまうのがと困ると言う事だった。

 そしてユーリさんは、昔…グオルクに来たばかりの事を話してくれた。

 この施設は昔、役所の管理の目が届かない所で、以前の管理人が、保護した子供が行方不明になったと言って、密かに売っていたそうだ。
 異変に気が付いた役所が調査し、その人達を逮捕して、荒れた施設を建て直したのが旦那さん。
 ユーリさんがグオルクに来て、旦那さんと、ココを管理するようになってから、逮捕から逃れた残党による襲撃事件が有って、魔道具のおかげで、残党を一網打尽にして、子供達を守れたそうだ。
 今は、便利な魔道具を駆使して使って、施設と隣の保養所、奥の丘から山の方に向かって広範囲で、結界が張られていて、不審者が迷い込めば直ぐに分かるようになっているそうだ。
 隣の保養所と、丘から山の方にって、どれだけの魔道具を使っているんだ…。
 とは言え、『折り魔紙』の『ツル』の価値が上がれば、ユナだけでなく、子供達も狙われかねない…。
 それがユーリさんの心配事。
 ユナをベイエルで保護して欲しいと言う理由…。
 今はまだ、ユナの魔力が弱いから、森の奥地、ベイエルへ行っても、魔素に耐えれないだろうから、せめて、もう数年後の話なのだと、ユーリさんは言う。

 ユナは、もうすぐ寮に入り、施設から卒業する。
 予定としては、寮で生活して、午前中は学校、午後から施設の子供達と一緒にココへやって来て、『コップ』を折る仕事をする。
 その日は施設に泊まって、次の日に施設の子供達と一緒に学校に行き、寮に帰る。
 何日かに一度、ココでの『コップ』を折る仕事をする予定なのだとか…。
 まあ、月々に納める数が決まっているので、毎日折らなくてはいけないほど多くはない。
 納品も、この部屋からリマ商会のヤナックさんの所に、物質転移魔法陣を使って、手のひらに乗るくらいのモノなら送れるそうだ。
 『折り魔紙』用の魔紙は、『コップ』用の大きさだけが、空間魔法の掛けられた小箱から取り出せる。
 繋がっている先は、『クルーラ』のヒナキさんの店の横に作られた、僕が使っている『折り魔紙』用の小屋。
 常にココから補充されているので、なくなる事はない…。
 だから今のところ、『コップ』に関しては、大丈夫なのだとか…。
 この部屋に、『クルーラ』に繋がる小箱と、『リマ商会』に繋がる物質転移魔法陣があるんだ…。
 それなら余計に結界は強化するよね…。
 
 オルガは、黙って話を聞いていたユナが、これからの事を、『折り魔紙』の事をどう思っているのか気になった。
「ユナは折るの好き?」
 オルガが聞くと、ユナはコクりと頷いた。
「ベイエルに…熊族の町に住むことになっても良い?」
 アレイが訪ねると、ユナはモジモジとして、アレイを見た。
「熊族の町に行っても、ココに来ることは、出来るよね?」
 もしかして、卒業した子供達がたまに来て、泊まっていくと言っていたからか…。
 その楽しみは欲しいな…。
「ああ、来れるぞ。さすがに一人でって分けにはいかないがな…」
「だったら、行ってみたい…」
 ユナは好奇心一杯の目で、アレイ達を見る。
 そうだな…。
 今すぐではないし、僕だって、クルーラの外の町に興味を持ったりするのだから、ユナもそうだろう…。
 オルガがアレイの方を見ると、アレイもこちらを見て苦笑いした。
 アレイも同じ事を思ったのだろう…。
 僕達はユナの方を見て言う。
「ベイエルを案内するよ」
「ソレまでに、魔素の耐性に慣れるよう、訓練していこう」
 ユナは嬉しそうに微笑んだ。


 
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