眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

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獣人の街グオルク ~~

お留守番

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 「おやつ!」と、騒いでいた子供達は、おやつを食べ終わると落ち着いたので、改めて自己紹介することになった。
 兎族の双子の子供は、カタとロタ。
 熊族のグイーノ。
 犬族のセグイ。
 四人とも元気な子供達だ。

 そしてアレイとフェイが挨拶し、オルガが自己紹介すると、僕を見た子供達が叫んだ。
「「「「お兄ちゃんと一緒!」」」」
「…?」
 オルガ達が首を傾げると、ユーリさんが微笑んだ。
「私の上の子が人族で、あなたと同じぐらいの年なの」
 なるほど。
 僕に耳や尻尾が無いから、その子と一緒だと言うことか…。
 獣人の街『グオルク』では、人族は少ない。
 さらに子供…僕達くらいの子供は少ないのだろう…。
 それに『グオルク』は、『クルーラ』に比べて魔素は少ないが、人族の住む場所に比べて魔素が濃いと言われている。
 その魔素に順応出来た者しか、『グオルク』には住めないのだ。
  
 少し警戒が揺るんだ子供達四人と、ユーリさんとアレイとフェイが一緒に、散歩をするため建物の外に出ていった。
 アレイとフェイは、両腕を子供達に捕まれ引っ張られ、仕方ないな…と、苦笑いして外に出ていった…。
 ココには、古い建物とこの屋敷の間に、整備した広場が有り、その奥に、木陰の小道が有って、奥に浅瀬の水が流れている場所があって、そこまで行ってから戻ってくるのが日課だそうだ。
 道草をしながら散歩して歩くので、一時間くらいは帰ってこないとか…。
 お昼寝中の赤子を見守るナスキムさんが、いろいろと教えてくれた。
 ああ…。
 お留守番で良いです…。
 アレイの所にいる、ライクとライカが、あれくらいの年の頃、走り回るの僕は付いていけませんでした…。
 急に走り出すし、気になるモノが有ると道を逸れて草むらの中に入っていくし、川に突っ込んで行こうとするし…。
 僕は追いかけて、ふらふらになりました…。
 置いてけぼり…体力が無さそうなので置いてかれたオルガは、気持ちを切り替え、猫族の赤ちゃんを見守ることにした。


 猫族の赤ちゃんの入ったカゴを間に、ナスキムさんの側に座ると、赤ちゃんが目を開けた。
 綺麗な青い瞳をオルガがに向け、小さな手が何かを探して動き、一緒に眠る赤ちゃんの尻尾を掴むと、口許に持っていって、チュウチュウと吸出した。
「お腹が空いて、目を覚ましたみたいだ」
 ナスキムさんが、側に置いてあった布を掛けてあったカゴから哺乳瓶を取り出すと、咥えている尻尾をそっと離させ、赤ちゃんをカゴから抱き上げ、胡座をかいた太股の上に乗せると、ミルクをあげだした。
 小さな手で哺乳瓶に触れ、チュウチュウと飲む様子がなんとも言えないほど可愛い…。

 するともう一人も目を開けて、手足を動かし出したので、ナスキムさんに「ちょっと遊んであげて」と言われた。
 どうすれば良いのだろう…。
 オルガが戸惑っていると、
「指に捕まらせて、少し動かすだけで、喜ぶから」
 そう言われたので、人差し指を、赤ちゃんの小さい手のひらに触れさせると、赤ちゃんがキュッと指を掴んだ。
 オルガが、ゆっくりと上下に動かすと、ニマニマと笑って赤ちゃんが腕を動かす。
 嬉しそうに笑ってる…。
 ホッとしたのと、緊張していたオルガも、つられて笑みを浮かべていた。

 赤ちゃんがミルクを飲み終え、ナスキムさんが「ケプッ」とげっぷをさせると、オルガの方に赤ちゃんを差し出してきたので、捕まれていた指をそっと離し、両手に猫族の赤ちゃんを受け取った。
 温かく、重みの有る、小さな命…。
 ミルクを飲んで満足した赤ちゃんは、僕を見て、腕や足を伸ばしたり縮めたりしている…。
 遊んで…いるのだろうか…。
 ナスキムさんは、もう一人を抱き上げ、ミルクをあげ始めた。
 
 ふと、ナスキムさんの側に有るカゴの中が動いた気がした。
 猫族の赤ちゃんが入っていたカゴではなく、ミルクの入ったカゴもなくて、もう一つ、ナスキムさんの側だけど、僕から一番遠い場所に有るカゴだ。
 オルガがそっちに視線を向けると、モコモコの髪の毛の羊族?の子供と目が合った。
 その子はビックリして、再びカゴの中に隠れてしまう…。
 モコモコの髪の毛のだからか、タオルに紛れてわかんなかった…。
 しばらく見ていると、そっと頭を上げて、カゴの中から目元まで浮上して、じっとこちらを見ている。
「ナスキムさん。もう一人、目が覚めたみたいです」
 オルガがそう言うと、ナスキムさんは微笑んで言う。
「モモは、カゴから自分で出てくるまで、そのままで良いよ。人見知りなんだ」
 それならあまり、見ない方が良いね。
 オルガはそう思って、抱っこしている赤ちゃんに視線を向けた。
 ちょっと気になるから、時々、チラッと見ながら、モモの様子をうかがった。
 しばらくするとモモは少し慣れたのか、カゴから這い出て来て、ナスキムさんの背中にピタリと張り付いた。
 僕から隠れているみたいだ。
 そして、ナスキムさんの背中から、ちょこっと顔を出してオルガの方をじっと見る。
 視線を感じてモモを見ると、モモは視線を反らす。
 なんか可愛いぞ…。

 そんな事をしている内に、子供達とアレイと、フェイ、ユーリさんが、散歩から帰ってきた。


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