眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

文字の大きさ
上 下
138 / 182
獣人の街グオルク ~創立祭~

創立祭 5 ~ゲーム 2~

しおりを挟む
「所で、今の何…?」
 そう聞いてきたのは、テイルさん。
 そして三人は、ハッとする。
 いつの間にか、テイルとネオさんだけでなく、たくさんのお客さんの視線がこちらに向いていた。
 そうだ!
 ココ、創立祭のランプを説明する場所だった!

 
 うわ~っ。
 恥ずかしい…。
 ついつい、いつもみたいに『ツル』で、誰が食べるかを決めていた…。
 オルガは耳を真っ赤にして、テイルさんに答える。
「順番を決めたりする時に使う、遊びと言うか、ゲームと言うか…」
 オルガは、多くの視線にさらされながら、しどろもどろで『ツル』の説明をする。
 魔力操作の練習をかねての遊びなのだと…。
 
「一つ貸してくれるかな」
 テイルさんが、そう言ったので、オルガが使っていた『ツル』を渡して、使い方を説明する事になった。
 うわ~っ。
 なんか緊張する…。
 遊びで使っているのを、たくさんの視線の中で説明するって…。
 まずは…。
「机の上に置いて、一番小さい魔力を入れます」
 テイルさんが、ランプの説明に使っていた机の上に『ツル』を置く。
 その机の向こう側には、多くのお客さんが、どれどれと覗き込む。
 そしてテイルさんが、指先に魔力を集めてチョンと触ると、ほんのりと光ってフワリと浮いたが、直ぐに降りてきて、机の上に落ちた。
「「「…。」」」
「えっと…、魔力が弱すぎるんです。僕達は、十数える間は、浮いているのが前提で、魔力を入れてます」
 オルガがそう言うと、再びテイルさんが魔力を入れる。
 今度も光を放ち、フワリと浮いた。
 そして視線の高さで止まると、ユラユラと揺れて留まっている。
「「おおっ…」」
 『ツル』が浮いて留まり、お客さんの方から声が洩れる。
 一応、十数えたが、一向に降りてきそうもない…。
「降りて来ないのは、魔力が多かったからだと…」
「なるほど…。この調整は難しいな…」
 テイルさんは苦笑いする。
「これも、『リマ商会』で販売しているのか?」
 テイルさんは、役所からの出張なので、『ツル』の事は、知らないらしい…。
「はい。予約制だったと思います」
「ですよね。ネオさん…」
 フェイがそう言うと、ネオさんはハッとして我に返った。
「あ、ああ…。予約制だ『リマ商会』で注文出来る」
 ネオさんは、荷受けの担当だが、僕達と一緒に『折り魔紙』を扱うコチラに来ているって事は、内情を知っているはず…。
「それにしても、面白い使い方だな」
 テイルさんがニヤリと笑った。
 ああ…もしかして、自分の仕事を増やした…?
 そんな事を思っていると、浮いていた『ツル』が光を無くして降りてくる。
 それをそっと受け取って、忘れずに言っておく。
「『折り魔紙マシ』は繊細なので、余分な折り目が付いてしまうと、魔力が伝わらなくなって、ただの魔力紙になってしまいます。扱い方の注意が必要な事だけ忘れないで下さい」
 『折り魔紙マシ』は、紙だと言うことを忘れないで欲しい…。
 魔力を帯びているので、普通の紙よりは丈夫だが、変な折り目が付いてしまえば、魔力伝達が出来なくなって、魔力を込めても変化しなくなってしまう…。
「扱い注意か…。外灯の方は大丈夫なのか?」
 テイルさんが心配そうに言う。
「ランプの中から出さなければ大丈夫です」
「渡すときの、要注意事項だな」
「はい」
 昨日の子供みたいな子がいると、『ツル』をランプの中から出してしまいそうだ。

「コチラも対策として、『ツル』が破損した場合は、ランプを『リマ商会』まで持ってきてもらって、別途追加料金が掛かることを提示しているけどね」
 ネオさんが補足してくれた。
「どちらにしろ、面白い遊びを見せてもらった。後で『リマ商会』の方に、注文させてもらうわ」
「あ、ありがとうございます」
 で、あってるよね…。
 『ツル』の遊びを見ていた人達も、「面白そうだ」と、『リマ商会』の方に向かい始め、ネオさんが慌てて『リマ商会』の方に戻っていった。
「「「…。」」」
 えっと…、午後からも外灯、ランプの説明で、良いよね…。

 そう思ったが、僕達の遊びの話を聞いた大人達が、次から次へとやって来て、「どんな遊びだ?」と、オルガとフェイ、もしくはアレイの順番で、二人づつで実演して見せた。
 娯楽が少ない…?
 思わず首を傾げるくらいの人だった。
 
 ちなみに、ランプを見に来た親子は、申込書を書く場所で、アレイが説明して、テイルさんが受付をしていた…。
 ネオさんは夕方になっても戻ってこなかった…。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...