眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

文字の大きさ
上 下
136 / 182
獣人の街グオルク ~創立祭~

創立祭 4 ~さしいれ~

しおりを挟む
 創立祭、三日目。
 いったん、今日で僕達の仕事は終わりだ。
 明日から二日間の休みの後、創立祭の後片付けの手伝いをして、『リマ商会』の仕事は終わりとなる。
 創立祭の後半は、お客さんとして、楽しもうと思っている。


 子供連れの親子がやって来て、いつものように外灯のランプの説明をして、受付をして…。
 この流れにも慣れたよな…。
 オルガがそう思っていると、準備の時に声をかけてきたおじさんが、フラりとやって来た。
「ほら、差し入れだ」
 そう言って、袋を渡してきた。
 オルガが受け取り、袋の中を開けると、袋いっぱいに焼き菓子が入れられていた。
 えっ!良いの?
 振り向いてテイルさんに確認を取ると、「もらっとけ」と言われたので、おじさんの方を向く。
「「ありがとうございます!」」
 並んで座っていたオルガとフェイは、おじさんにお礼を言う。
「なに。ココのおかげで、俺達の売り上げも良いからな」
 そう言って笑う。
 何を売っているのか聞くと、普通の紙と、紐でとじた紙、本のように片側を止めた紙などを扱っていて、ココでランプを注文して、子供達用の文字を書く紙を買って行ってくれるそうだ。
 そうなんだ…。
 夜にランプで明るくなれば、文字をもっと書くことが出来るからだろうか…。
「今日までなんだろう。あと一日、頑張れよ」
 そう言って、おじさんは自分の店に戻っていった。

 もらった焼き菓子をどうしようと、テイルさんの方を見ると、予備に置いてあった小さな机を出してきて、「ココに置いておいて、後でおやつに食べましょう」と、言ってきた。
 なのでオルガは机の上に、焼き菓子が入った袋を置いた。
 そう、今はお仕事中…。
 子供を連れた親子がやって来たので、オルガは席に戻り、フェイが説明を始めた。
 
 そして説明が終わり、親子がアレイの所で申し込み用紙を書きに移動すると、待ってましたとばかりに、今度は兎族のおじさんがやって来た。
「今日までなんだってな…」
 そう言って、僕達のいる机の上に、コップに入った飲み物を三個置いた。
 えっ?
「ジュースでも、飲んで頑張れや」
「「あっ、ありがとうございます」」
 オルガとフェイがそう言うと、兎族のおじさんは、手を振って自分の店の方に戻っていった。
 えっと…確かあそこの店は、ペンやインクを売っていた店だったはず…。
 僕が持っている『魔力ペン』のように、魔力で文字を書くのではなく、インクを付けて書くペンだったよね。
 オルガが振り向くと、テイルさんが苦笑いして言う。
「ああ…。もしかしたら、まだ来るかも…」
 まだ来るかも…?
 オルガは首を傾げた。
「ジュースは冷たい内に飲めば良いぞ」
 テイルさんがそう言ったので、オルガは一つ手に取り、僕達の机とは別の机で、申し込みの受付をしているアレイの方に持って行った。
 ちょうど手続きを終えて、親子が帰るところだったので、ちょっと待って、アレイが用紙を隣にいるテイルさんに、確認に渡したところで、ジュースをアレイに渡した。
「おう。ありがとう」
「ペンとインクを売ってる兎族のおじさんから…」
 アレイはジュースを受け取り、視線を屋台の方に向けた。
 姿は見えないが、どの店なのか、把握しているのだろう…。
「美味しいな。コレ、シュワシュワって…」
 先に飲んでいたフェイが言う。
 オルガも席に戻り、コップを手に取りジュースを飲む。
 青紫色のベリーの味だけど、口の中でシュワシュワ…。
「口の中で弾ける!」
「それは炭酸だな」
 テイルさんがそう言う。 
 炭酸は、時間がたつとシュワシュワと弾けなくなるので、飲んでしまった方が良いと言われた。
 一度にたくさん飲めないが、なんかサッパリとして、後口も甘すぎない。
「コレ、良いよね」
「明日、屋台を見つけて買おうよ!」
「もしかして、味もいろいろ有るのかな?」
 炭酸のジュースを飲みながら、騒いでいると、今度は狼族の男の人がやって来た。 
 テイルさんくらいの、若いお兄さん。
「ほら、しっかりと食えよ」
 そう言って、今度は串焼きを…大きな葉っぱを皿にして包んだものを持ってきた。
「「「あっ、ありがとうございます」」」
 そう言ってフェイが受けとる。
 狼族のお兄さんは、木剣を売っているそうだ。
 練習用の木剣は、子供用から大人用までいろいろと…。
 長く使うと衝撃で、どうしても折れてしまうので、毎年この時期に売りに来ているそうだ。
 子供用の短い剣の売れ行きが良いそうです…。
 
 そんなこんなで、親子連れの説明の間に、近くの屋台の人達が顔を出して、差し入れを持ってきてくれた。
 そして気が付けば、えっと…なぜか、差し入れの食べ物が、予備に置いてあった、小さな机の上に積み上げられていた。
 
 ありがとうございます。
 お昼ご飯に、おやつにいただきます。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...