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獣人の街グオルク ~創立祭~

創立祭 4 ~さしいれ~

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 創立祭、三日目。
 いったん、今日で僕達の仕事は終わりだ。
 明日から二日間の休みの後、創立祭の後片付けの手伝いをして、『リマ商会』の仕事は終わりとなる。
 創立祭の後半は、お客さんとして、楽しもうと思っている。


 子供連れの親子がやって来て、いつものように外灯のランプの説明をして、受付をして…。
 この流れにも慣れたよな…。
 オルガがそう思っていると、準備の時に声をかけてきたおじさんが、フラりとやって来た。
「ほら、差し入れだ」
 そう言って、袋を渡してきた。
 オルガが受け取り、袋の中を開けると、袋いっぱいに焼き菓子が入れられていた。
 えっ!良いの?
 振り向いてテイルさんに確認を取ると、「もらっとけ」と言われたので、おじさんの方を向く。
「「ありがとうございます!」」
 並んで座っていたオルガとフェイは、おじさんにお礼を言う。
「なに。ココのおかげで、俺達の売り上げも良いからな」
 そう言って笑う。
 何を売っているのか聞くと、普通の紙と、紐でとじた紙、本のように片側を止めた紙などを扱っていて、ココでランプを注文して、子供達用の文字を書く紙を買って行ってくれるそうだ。
 そうなんだ…。
 夜にランプで明るくなれば、文字をもっと書くことが出来るからだろうか…。
「今日までなんだろう。あと一日、頑張れよ」
 そう言って、おじさんは自分の店に戻っていった。

 もらった焼き菓子をどうしようと、テイルさんの方を見ると、予備に置いてあった小さな机を出してきて、「ココに置いておいて、後でおやつに食べましょう」と、言ってきた。
 なのでオルガは机の上に、焼き菓子が入った袋を置いた。
 そう、今はお仕事中…。
 子供を連れた親子がやって来たので、オルガは席に戻り、フェイが説明を始めた。
 
 そして説明が終わり、親子がアレイの所で申し込み用紙を書きに移動すると、待ってましたとばかりに、今度は兎族のおじさんがやって来た。
「今日までなんだってな…」
 そう言って、僕達のいる机の上に、コップに入った飲み物を三個置いた。
 えっ?
「ジュースでも、飲んで頑張れや」
「「あっ、ありがとうございます」」
 オルガとフェイがそう言うと、兎族のおじさんは、手を振って自分の店の方に戻っていった。
 えっと…確かあそこの店は、ペンやインクを売っていた店だったはず…。
 僕が持っている『魔力ペン』のように、魔力で文字を書くのではなく、インクを付けて書くペンだったよね。
 オルガが振り向くと、テイルさんが苦笑いして言う。
「ああ…。もしかしたら、まだ来るかも…」
 まだ来るかも…?
 オルガは首を傾げた。
「ジュースは冷たい内に飲めば良いぞ」
 テイルさんがそう言ったので、オルガは一つ手に取り、僕達の机とは別の机で、申し込みの受付をしているアレイの方に持って行った。
 ちょうど手続きを終えて、親子が帰るところだったので、ちょっと待って、アレイが用紙を隣にいるテイルさんに、確認に渡したところで、ジュースをアレイに渡した。
「おう。ありがとう」
「ペンとインクを売ってる兎族のおじさんから…」
 アレイはジュースを受け取り、視線を屋台の方に向けた。
 姿は見えないが、どの店なのか、把握しているのだろう…。
「美味しいな。コレ、シュワシュワって…」
 先に飲んでいたフェイが言う。
 オルガも席に戻り、コップを手に取りジュースを飲む。
 青紫色のベリーの味だけど、口の中でシュワシュワ…。
「口の中で弾ける!」
「それは炭酸だな」
 テイルさんがそう言う。 
 炭酸は、時間がたつとシュワシュワと弾けなくなるので、飲んでしまった方が良いと言われた。
 一度にたくさん飲めないが、なんかサッパリとして、後口も甘すぎない。
「コレ、良いよね」
「明日、屋台を見つけて買おうよ!」
「もしかして、味もいろいろ有るのかな?」
 炭酸のジュースを飲みながら、騒いでいると、今度は狼族の男の人がやって来た。 
 テイルさんくらいの、若いお兄さん。
「ほら、しっかりと食えよ」
 そう言って、今度は串焼きを…大きな葉っぱを皿にして包んだものを持ってきた。
「「「あっ、ありがとうございます」」」
 そう言ってフェイが受けとる。
 狼族のお兄さんは、木剣を売っているそうだ。
 練習用の木剣は、子供用から大人用までいろいろと…。
 長く使うと衝撃で、どうしても折れてしまうので、毎年この時期に売りに来ているそうだ。
 子供用の短い剣の売れ行きが良いそうです…。
 
 そんなこんなで、親子連れの説明の間に、近くの屋台の人達が顔を出して、差し入れを持ってきてくれた。
 そして気が付けば、えっと…なぜか、差し入れの食べ物が、予備に置いてあった、小さな机の上に積み上げられていた。
 
 ありがとうございます。
 お昼ご飯に、おやつにいただきます。




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