眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

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獣人の街グオルク ~創立祭~

創立祭 3 ~視線~

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 創立祭の二日目が始まった。

 朝、僕達が来たときには、昨日、話していたみたいに、机の位置が変わっていた。
 テント側に低めのテーブルが置かれ、外灯を置いて、そこでの説明にオルガとフェイ。
 反対側…昨日、僕達が居た方に、アレイとテイルさんが配置された。
 そして誘導係として、役所の方から大猿族のモルゴさんが来ていた。
 モルゴさんは大猿族なだけあって、背も高く横幅もある人なので、人混みに埋もれること無く、通行整備が出来るだろう事から、呼ばれたらしい…。
 昨日のバスハさんは、何回も人混みに流されていたもんな…。
 

 今日は、昨日ほど混雑すること無く、お客さん達は通路を行き交っていた。
 と、言っても、創立祭に、お客さんがたくさん来ているので、ザワザワと混雑はしている。
 行き来が出来なくなるわけではないので、やっぱり通路に並んでいたのが、行き交う人を塞き止めてしまって、混雑の原因になってしまったんだな…って思った。
 僕とフェイの二人で外灯の魔道具の説明をして、自分の小さな魔力で明かりが灯ると子供達が喜んで…。
 保護者達が子供達のために、ランプの応募用紙を記入して…。
 子供達が喜んでいる姿を見ると、準備するのが大変だったけど、良かったと思える。
 それに、魔力紙で明かりが灯る外灯に興味の有る大人達も覗きに来て…。
 昨日の混雑を思えば、慣れてきたのもあるし、気持ちに余裕が出来てきたのだろう…。
 少し、賑やかな創立祭の中、周囲が良く見えるようになってきた。

 ふと、視線を感じ、顔を上げた。
 なんだろう…。
 視線の先には、黒髪の、僕と同じくらい…十五、六歳くらいの男の子が、もしかしたらもう少し幼いのかも知れないが、遠めからジッとこちらを見ているのに気が付いた。
 もしかして、人族…?
 耳と尻尾が見当たらないけれど…。
 見えないだけかもしれないけれど…。
 グオルクの学校に通っている子だろうか…。
 でも、そばに大人が見当たらない…。
 あれくらいの子になれば、一人で出歩いている可能性はあるけれど…。
 ハッと、その子と目が合い、僕が見ていることに気がつくと、その男の子はどこかへ行ってしまった。
 なんだったんだろう…。
 気になるけれど、親子連れがランプを見に来たので、説明をしているうちに、すっかりその時の事は忘れてしまった。


 そしてランプの説明を、どれだけ繰り返したのだろう…。
 今日も気が付けば、お昼になっていた。
 交代でお昼ごはんを食べ、昨日は忙しくて出せなかった箱を取り出した。
 木で出来た、手のひらサイズの箱を開けた。
 箱の中には、魔力紙で折った『ツル』が、羽を畳んだ状態で五個入っている。
 色は水色に…風魔法をかけて変化させてあった。
 一応、人寄せに、目立つこと、変わったことをしようと、準備してもらったモノだ。
 箱に入ったのを出したのは、『リマ商会』から準備されたモノだと明確にするため。
 僕がここで『魔力紙』を折ってたら、バレちゃうもんね。

 オルガは一つ取り出して、『ツル』の羽を広げる。
 そして、チョンと突っつくように、小さい魔力を入れる。
 すると『ツル』は水色の光を放ってふわりと浮いた。
 これ、好きなんだよね…。
 『ツル』がふわふわと浮かんで、揺れる様子をニコニコと見る。
 魔力操作の練習にもなるし、なんだか癒されるよな…。
「ソレ何!」
 声がした方を見ると、ふわふわと浮く『ツル』を指差す猫族?の男の子がいた。
「これは『ツル』だよ。ランプの中に入っている魔力紙と同じもの。こっちは風魔法がかけてあるから、浮くんだよ」
「面白い!」
 男の子は目をキラキラとさせて『ツル』を見上げる。
「ただ、紙だから気を付けないと、破れたり、折り目がついたりすると、直ぐに使えなくなってしまうんだ」
 オルガが一応、説明するが、子供は聞いていそうもない…。
「ランプから取り出して、同じ事出来る?」
「それは出来ないよ」
「え~っ」
「ランプから出してしまうと、違う折り目がついてしまって、浮かす事も出来ないし、戻しても、今度はランプとしても使えなくなるよ」
 余分な折り目がついてしまうと、使えなくなってしまう…。
「…出しちゃダメ?」
「うん。ランプから出してしまうと、明かりが灯らなくなるよ」
「…。」
 男の子は、耳をへにゃッと下げて、黙って『ツル』を見上げる。
 興味を持ってくれてのは嬉しいが、使い方を間違えると、ランプとしても機能しなくなる。
 そこだけは注意しないと…。
 一個『ツル』を浮かせたまま、別の親子がランプを見に来たので、オルガは説明し始めた。
 さっきの男の子はジッと『ツル』を見上げて尻尾をゆらゆらと揺らし出す。
 ずっと見上げていて、首、痛くならないのかな…。
 
 しばらくしても、その男の子は、ふわふわと浮いた『ツル』を見上げている。
 大人の人と、一緒に来ていないのかな…?
 迷子?
 オルガが気になって、テイルさんに声をかけると、苦笑いした。
 本能的に、動く蝶々を捕まえようとするみたいに、捕まえようとしているんだろう…。
 なるほど…。
 『ツル』が狩られないように、気をつけよう…。
 その後直ぐに、男の子を探していた大人が、「アレが欲しい!」と叫ぶ男の子を連れていった。

 えっと…多分、一回で、使い物にならなくなるよ…。



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