眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

文字の大きさ
上 下
126 / 182
獣人の街グオルク ~創立祭~

到着

しおりを挟む
 猫族の町ミルーシャから馬車に乗って約二時間、昼過ぎにグオルクの街に到着した。
 
 到着したと言っても、まだグオルクの街中ではない。
 街の端にある、街の外を走る馬車乗り場から、街中を走る馬車に乗り換えだ。
 猫族の町ミルーシャの馬車乗り場の混雑よりも、もっと人が多い…。
 大丈夫だろうか…。
 オルガは少し不安に思いながら、アレイの後を付いていった。
 
 街の中心部に行く馬車に乗り換えだが、アレイは迷わず馬車の案内所に向かった。
 もしかして、アレクさんに聞いている?
 オルガは出発前に、場所が分からない時は、各案内所に行って聞いた方が間違いない。と、アレクさんに聞いていた。
 初めて来る場所だがら、どの馬車に乗れば良いか分からないもんね。
 人混みを掻き分けながら案内所へたどり着くと、同じ様に、乗り場を聞いている人がたくさんいた。
 順番に並んで待っていると、何か気になって、オルガは辺りをキョロキョロと見回した。
 なんだろう…。
 すごく視線を感じる…。
 そして思い出す。
 もしかして、僕が人族の子供…だからだろうか。
 十六歳になったとはいえ、身長は低い…。
 特に頭一つ分、背の高いアレイとフェイと一緒にいれば、余計に小さく見えてしまう…。
 猫族の町ミルーシャで、おじさんに言われた事を思いだし、オルガは今さらだが、フードをかぶった。
 それに気がついたフェイが「どうした?」と、聞いてきたので、小声で説明した。
「…そうだった」
 フェイは苦笑いして、オルガの頭をフードの上から撫でできた。
 
 そして順番になり、街の中心部にある、役所行きの乗り場を聞いて、馬車乗り場に向かった。

 
 たまたまなのか、オルガ達が乗った馬車は混雑していなかった。
 ゆったりと座ることができ、流れ行く街並みを眺めていた。
 馬車乗り場を出ると、最初は小さな集落のような場所を横切り、次第に建物が増えていった。
 一軒一軒の敷地が大きい、庭付きの家が建ち並ぶ道をしばらく走ると、今度は小さな家が密集して集まる道を通り、長屋のような大きな建物が並ぶ道を走り、最後に大きな広場に出た。
 馬車乗り場から走り出して三十分ほど…。
 広場の側に、回りに比べて、ひときわ大きな建物が有り、馬車はその前で停まった。
 一度も停車せずたどり着いた場所は、グオルクの中心になる役所前…。
 役所前へ行く、直通馬車だったようだ。
 三人は馬車から降りて、その建物を見上げた。
 ココが、グオルクの役所…。
 アレイの家の屋敷を五つぐらい横に並べた幅があり、天井の高い二階建てだ。
 種族によって背が高いからかも知れないが…。
 奥行きもありそうで、今まで見たことの有る建物の中で、一番大きい建物に驚きを隠せなかった。
 オルガは建物の大きさに呆然と見上げて、しばらくして、ハッとして正気に戻った。
 僕達の目的は、ココではない。
 隣に有る、リマ商会だ。
 未だに見上げる二人を呼んで、目的に向かう。
 舗装された道は歩きやすく、馬車の走る道と、人が歩く道の区別がされている…。
 この周辺だけかもしれないが、村や町では考えられないことだ。
 
 役所の隣に有る『リマ商会』は、役所よりも小さいが、それでもアレイの屋敷が三個分くらいの横幅は有る…。
 やはり大きい建物だ。
 常に人が出入りして、荷物を持って帰る人も見かける。
 オルガ達は、ドキドキしながら『リマ商会』の建物に入った。
 建物に入ると、正面に大きな看板があって、建物内の案内図になっていた。
 木工品、金物品、布生地品、食品、生活雑貨など区域わけされてされている。
 そうじゃないと、欲しいものを探せないよね…。
 でも、僕達の最初の目的は買い物ではない。
 辺りを見回すと、看板の後ろ側に総合案内所とかかれたカウンターが有り、僕達はそこに向かった。
 カウンターには二人の犬所族の男の人がいて、その一人の人に、ヒナキさんから渡された紹介状を差し出す。
 すると彼はそれを受け取り、直ぐに魔道具を使ってどこかに連絡をしていた。

「しばらく待っていて下さいね。担当が来ますから」
 彼がそう言って微笑んだが、大きな売場が気になって仕方ない…。
 待つ間、案内所の目の前に有る、生活雑貨の売場をちょっと覗いて見たい…。
 視界に案内所が見える所くらいまでなら、大丈夫だろう…。
「ちょっと、前の棚、見てきます」
「すぐ戻ってきます」
 そう言って、オルガとアレイ、フェイは、目の前の生活雑貨の売場に、早足で向かった。

 入り口付近は、可愛いコップや綺麗な色付きのグラス、お皿などの食器類が並んでいた。
「すごい綺麗…」
 オルガはキラキラと光に反射して輝くグラスに目がいった。
 割れてしまいそうだけど、眺めているだけでも綺麗で、良いよな…。
「可愛いよな…。ライカとライクの土産に買おっかな…」
 アレイは、魚の形が書き込まれた水色のマグカップと、イチゴの形が書き込まれたピンク色のマグカップを交互に眺める。
 それも「落としても割れにくいマグカップ」と、書かれていて、お値段も、ちょっと高め…。
「…まだ着いたばかりだぞ」
 あきれたフェイの声が背後ですると、オルガとアレイはフェイの方を向いて苦笑いした。


「君たち!」
 案内所の方から呼ばれて、三人は慌てて案内所に戻ると、そこには人族の優しげな男の人がいた。
「こんにちわ」
 


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...