眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

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熊族の町ベイエル

オルガの目標

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 オルガが店の扉を開けると、右奥のソファーに座るヒナキさんと目が合った。
「ただいま!」
 ベイエルは楽しかったけれど、やっぱり僕が帰ってくる場所は、ココ…。
 帰る場所だと思える所…。
「お帰り」
 ヒナキさんがニコニコと微笑む。
 その笑顔を見て、帰ってきた…そう思えるほどに…。

 オルガが、ヒナキの側のソファーに座ると、遅れてシュウベルさんが店の中に入ってきた。
「お迎え、ご苦労様」
 ヒナキさんがそう言うと、シュウベルさんが苦笑いして言う。
「俺が行って良かったよ」
 うん。
 シュウベルさんが迎えに来てくれて良かった。
「なに…」
 ヒナキさんが、シュウベルさんを睨み付ける。
 えっと…。
 ベイエルの三つ眼の獣の話は、まだ、伝わって無いんだ…。
 と言うか、今、着いたばかりだもんね。
 シュウベルさんが、ヒナキさんの前のソファーに座ると、アレクさんが、慌てた様子で店の中に入ってきた。
「お帰り。オルガ。無事に帰ってこれて良かった…」
 本当ならば、一緒に行く予定だったアレクさん。
 一応、一人?でのお出かけだったから、不安だったようだ。
 

 オルガは熊族の町ベイエルに行って、果樹園の収穫を手伝った話や、学校で習った魔法の話、お菓子屋さん巡りをした話をして、最後にマロイ湖に釣りをしに行って、三つ眼の獣に遭遇した話をしだしたら、ニコニコと話を聞いていた、ヒナキさんとアレクさんの顔色が悪くなっていった。
 ちゃんと帰ってこれたからね。
 魔法を習っていて、体力作りをしていて良かったと実感したからね。
 これからも頑張って練習するからね。

 そして出掛ける時に渡された、ブレスレットを両方外して机の上に置く。
 これのおかげで、最初の一撃を受けなかった。
 無かったと思ったらゾッとした。
 ココに帰って来れなかったかもしれない…。
 対物用のブレスレットは使ってしまってので、再度魔法をかけて、構築しておいてくれるそうだ。

 そしてオルガは決意が揺らがないうちにお願いする。
「だからね、守りたい者を守れる魔法…。僕でも出来そうな魔法を教えて欲しい!」
 自分から誰かのために、魔法を習いたいと思ったのは始めてかもしれない。
 空を飛んでみたい、水魔法で水撒き、風魔法で荷物を運ぶなど、自分の生活のために、使えると便利な魔法を教わってきた。
 ヒナキさん達も、生活するのに使える基本の魔法を教えてくれていた。
 三つ眼の獣は怖いから、戦いたいとは思わない。
 だけど、僕が使える魔法で、誰かを守れるなら…。
 守ることが出来るなら、教わって、守りたい。
「そうだな…。そろそろ次の段階の魔法を教えようか」
 ヒナキさんがそう言うと、アレクさんも頷く。
「後方支援の魔法系だったら、オルガの負担にはならないんじゃないか?」
「それより先に、防御魔法だ!」
 シュウベルさんが口を挟む。
「水魔法か、風魔法での防御魔法が先だ!魔法で自分の身を守れなければ、誰かを守るなんて無理だぞ!」
 呆れたように言う。
「それもそうだな…」
 そうだね…。
 一回きりの、対物理攻撃や対魔法攻撃用の、護身用のブレスレット頼りでは、長期戦には弱い…。
 まずは、自分を守る防御魔法を習って、守りたいモノも守れるように習って…。
 シュウベルさんは苦笑いしながら言う。
「こっちで教えて良いのなら、『青の館』での訓練に、付け加えるぞ。防御魔法を練習している奴らも居るしな…」
「それなら『青の館』の方でよろしく!」
「その方が、実戦的だしな…」
 ヒナキさんとアレクさんが、ウンウンと頷いている。
 まあ『青の館』の人達は、専門職だし、教わるのなら、その方が良いのかも…。
 オルガはシュウベルさんの方を見て言う。
「よろしくお願いします!」

 その後、お土産の話になり、明日、持ってくるからと約束して、オルガは『白の館』へと戻った。
 獣馬車の中で、ずっと眠っていたから、だいぶん魔力は回復してきている。
 とは言え、まだ体調は不調のまま…。
 お風呂に入って、早めの夕食を食べて、今日は早く寝よう…。



 シュウベルさんに防御魔法を教えてもらう約束をして、『青の館』で風の防御魔法と、水の防御魔法を習い始めた。
 今までの基礎練習をしっかりとしていたから、コツとイメージさえ分かれば、難なく習得した。
 後は防御魔法の強度。
 今は、一回の攻撃なら防げるけれど、その一回で防御魔法が霧散してしまう…。
 強度を上げるため頑張るぞ!




 そしてベイエルでの三つ眼の獣の騒動のあと、防御魔法を習い始めてから、三年の月日が流れ、オルガは十六歳になっていた。



☆☆☆☆☆


 オルガが一人?でベイエルに行って、いつもと少し違うことを体験して、少しづつ成長していきます。
 そしてやっと、獣人の街グオルクでの話になります。
 リーンの子供や孫達が出てくる予定です。
 
 次は『獣人の街グオルク』編です。


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