113 / 182
熊族の町ベイエル
帰還 ~シュウベル~
しおりを挟む
それからアラカとシュウベルは、現在確認されている、魔素溜まりの印を地図上に記し、今朝、巡回したときの状況報告を照らし合わせ、唸った。
「地図外の可能性が有るな…」
「この奥地には、誰も行かないからな…」
地図上に記した場所は、毎日巡回していて、多少変化があっても魔素濃度もそれほど高くない。
と、なれば、巡回ルートの外から、三つ眼の獣が来た可能性が有る…。
「リーン様に来てもらった方が良さそうだな」
『森の守り人』であるリーンならば、『風使い』や『土使い』を使って、離れた場所も捜索することが出来る。
「それも要請に、書いておく」
アラカとシュウベルは大きなタメ息を付いた。
オルガを迎えに来ただけなのに、大変な事になってしまったな…。
討伐隊が出ていってから、一時間は経っていないが、外がザワザワとし始めた。
詰所の応接室からアラカとシュウベルが、外に顔を覗かせると、門が開き、討伐隊が戻ってきた処だった。
シュウベルは慌てて詰所を出る。
オルガは無事なのか?
詰所から出ると、討伐隊の一人がオルガを抱え、そのそばに、心配そうについてくるアレイの姿が見えた。
「オルガ!」
シュウベルが駆け寄ると、オルガは討伐隊の腕の中で、青い顔をして眠っていた。
顔色は悪いが、大きな怪我をした感じはしない…。
「…魔力切れを…起こしたんだ…」
そばにいたアレイが泣きそうな顔で、そう答える。
「魔力切れ…」
シュウベルはホッとして力を抜く。
「医務室で、寝かせておけ」
後ろに付いてきたアラカさんがそう言うと、オルガを抱えた討伐隊が、詰所の中へ入って行き、アレイがあとに続いて入って行った。
オルガの事も気になるが、三つ眼の獣の事も気になる。
シュウベルは一瞬迷って、アラカと一緒に帰還した討伐隊集まる場所に向かった。
五匹の三つ眼の獣は討伐され、解体小屋に運ばれたらしい。
魔素を多く取り込んだ三つ眼の獣は、食べることは出来ないが、解体して薬や衣料などの生活用品として活用される。
討伐隊の半数は、マロイ湖周辺の調査に向かい、異変がなければ、犬族側の街道の通行を再開をするようだ。
注意をするように警告を出して…。
アラカが警備隊に指示を出して、動き始めたので、シュウベルは詰所の医務室に眠るオルガの元に向かった。
オルガが魔力切れのままだと、明日、帰れないかもしれないな…。
シュウベルは悩んだ。
熊族の町ベイエルは魔素濃度が『クルーラ』に比べて薄い。
空気中の魔素を吸収して、身体に魔力が戻ってくるのには時間がかかる…。
普段『クルーラ』にいるオルガは、『クルーラ』の濃い魔素に身体がなれてしまっているので、余計に時間がかかるだろう…。
『魔力譲渡』でもして、意識だけでも浮上させておかないと、眠ったままになって、後々大変そうだ。
医務室に入ると、オルガが眠るベッドの横のイスにアレイが座り、泣きそうな顔をしてオルガの手を握りしめていた。
ああ、こいつの為にも『魔力譲渡』をして、意識を取り戻させておいた方が良さそうだ。
「マロイ湖で何が有ったか話せるか?」
シュウベルがそう訪ねると、アレイはシュウベルの方を向いて頷いた。
アレイは、だいぶ落ち着いたみたいだ。
シュウベルは、隣の部屋にいた、警備隊に声をかける。
ココは熊族の詰所なので、シュウベルが聞くわけにはいかない…。
熊族の警備隊の一人が頷いて医務室に入り、アレイに当時の状況を話してもらった。
二人で釣りに行って、なかなか釣れなくて、マロイ湖周辺の場所を移動して、今日は釣れないから帰ろうと、帰り出したとき、背後から襲われて、オルガの護身用のブレスレットが光って、その隙に逃げ出したそうだ。
持たせた、対物用のブレスレットは効果を発揮したみたいだな。
逃げるとき、オルガが風魔法を使って飛び上がって、そのまま木の上に避難し、『ヒコウキ』を熊族の警備隊に向けて飛ばしたのだと…。
そう言えば、ベイエルに着いたとき、オルガの魔力を少し感じる『ヒコウキ』が、シュウベルの元に飛んできたと伝えると、アレイは眼を丸くして驚いていた。
アレイいわく、木の上に避難したとき、オルガが落としてしまった『ヒコウキ』ではないかと言うことだった。
「…。」
オルガには『ヒコウキ』を二個持たせていた。
もしかしたら、『ヒコウキ』に魔力を込めて風属性にしたのが、シュウベルだったから、なのかもしれない…。
向かう場所を設定しなかったので、近くにいた俺の所に戻って来たのかもしれないな…。
アレイの話が終わり、シュウベルは言った。
「さてと、『魔力譲渡』でオルガの意識を戻すか…」
「「…。」」
アレイと話を聞きに来ていた警備隊員が目を見開き、シュウベルを見る。
「うん?」
俺、なんか変なことを言った?
◇◇◇◇◇
~シュウベル~は、もう一話で終わる予定です。
なんだかんだ言って、シュウベルも過保護です。
「地図外の可能性が有るな…」
「この奥地には、誰も行かないからな…」
地図上に記した場所は、毎日巡回していて、多少変化があっても魔素濃度もそれほど高くない。
と、なれば、巡回ルートの外から、三つ眼の獣が来た可能性が有る…。
「リーン様に来てもらった方が良さそうだな」
『森の守り人』であるリーンならば、『風使い』や『土使い』を使って、離れた場所も捜索することが出来る。
「それも要請に、書いておく」
アラカとシュウベルは大きなタメ息を付いた。
オルガを迎えに来ただけなのに、大変な事になってしまったな…。
討伐隊が出ていってから、一時間は経っていないが、外がザワザワとし始めた。
詰所の応接室からアラカとシュウベルが、外に顔を覗かせると、門が開き、討伐隊が戻ってきた処だった。
シュウベルは慌てて詰所を出る。
オルガは無事なのか?
詰所から出ると、討伐隊の一人がオルガを抱え、そのそばに、心配そうについてくるアレイの姿が見えた。
「オルガ!」
シュウベルが駆け寄ると、オルガは討伐隊の腕の中で、青い顔をして眠っていた。
顔色は悪いが、大きな怪我をした感じはしない…。
「…魔力切れを…起こしたんだ…」
そばにいたアレイが泣きそうな顔で、そう答える。
「魔力切れ…」
シュウベルはホッとして力を抜く。
「医務室で、寝かせておけ」
後ろに付いてきたアラカさんがそう言うと、オルガを抱えた討伐隊が、詰所の中へ入って行き、アレイがあとに続いて入って行った。
オルガの事も気になるが、三つ眼の獣の事も気になる。
シュウベルは一瞬迷って、アラカと一緒に帰還した討伐隊集まる場所に向かった。
五匹の三つ眼の獣は討伐され、解体小屋に運ばれたらしい。
魔素を多く取り込んだ三つ眼の獣は、食べることは出来ないが、解体して薬や衣料などの生活用品として活用される。
討伐隊の半数は、マロイ湖周辺の調査に向かい、異変がなければ、犬族側の街道の通行を再開をするようだ。
注意をするように警告を出して…。
アラカが警備隊に指示を出して、動き始めたので、シュウベルは詰所の医務室に眠るオルガの元に向かった。
オルガが魔力切れのままだと、明日、帰れないかもしれないな…。
シュウベルは悩んだ。
熊族の町ベイエルは魔素濃度が『クルーラ』に比べて薄い。
空気中の魔素を吸収して、身体に魔力が戻ってくるのには時間がかかる…。
普段『クルーラ』にいるオルガは、『クルーラ』の濃い魔素に身体がなれてしまっているので、余計に時間がかかるだろう…。
『魔力譲渡』でもして、意識だけでも浮上させておかないと、眠ったままになって、後々大変そうだ。
医務室に入ると、オルガが眠るベッドの横のイスにアレイが座り、泣きそうな顔をしてオルガの手を握りしめていた。
ああ、こいつの為にも『魔力譲渡』をして、意識を取り戻させておいた方が良さそうだ。
「マロイ湖で何が有ったか話せるか?」
シュウベルがそう訪ねると、アレイはシュウベルの方を向いて頷いた。
アレイは、だいぶ落ち着いたみたいだ。
シュウベルは、隣の部屋にいた、警備隊に声をかける。
ココは熊族の詰所なので、シュウベルが聞くわけにはいかない…。
熊族の警備隊の一人が頷いて医務室に入り、アレイに当時の状況を話してもらった。
二人で釣りに行って、なかなか釣れなくて、マロイ湖周辺の場所を移動して、今日は釣れないから帰ろうと、帰り出したとき、背後から襲われて、オルガの護身用のブレスレットが光って、その隙に逃げ出したそうだ。
持たせた、対物用のブレスレットは効果を発揮したみたいだな。
逃げるとき、オルガが風魔法を使って飛び上がって、そのまま木の上に避難し、『ヒコウキ』を熊族の警備隊に向けて飛ばしたのだと…。
そう言えば、ベイエルに着いたとき、オルガの魔力を少し感じる『ヒコウキ』が、シュウベルの元に飛んできたと伝えると、アレイは眼を丸くして驚いていた。
アレイいわく、木の上に避難したとき、オルガが落としてしまった『ヒコウキ』ではないかと言うことだった。
「…。」
オルガには『ヒコウキ』を二個持たせていた。
もしかしたら、『ヒコウキ』に魔力を込めて風属性にしたのが、シュウベルだったから、なのかもしれない…。
向かう場所を設定しなかったので、近くにいた俺の所に戻って来たのかもしれないな…。
アレイの話が終わり、シュウベルは言った。
「さてと、『魔力譲渡』でオルガの意識を戻すか…」
「「…。」」
アレイと話を聞きに来ていた警備隊員が目を見開き、シュウベルを見る。
「うん?」
俺、なんか変なことを言った?
◇◇◇◇◇
~シュウベル~は、もう一話で終わる予定です。
なんだかんだ言って、シュウベルも過保護です。
4
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる