眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

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熊族の町ベイエル

詰所 ~シュウベル~

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 詰所周辺は、熊族の警備隊が集まっていた。
 シュウベルが獣馬で駆け寄ると、詰所の中から見知った顔がこちらを覗いた。
 アレクの兄弟、一番上のアラカだ。
 シュウベルは獣馬を降りて、彼に近付く。
「オルガは!」

 アラカが苦笑いして答えた。
「今から討伐隊が向かう。三つ眼の獣が五匹だと、厳重になるからな」
「三つ眼が五匹だと!」
 シュウベルは驚いた。
 それだけの三つ眼の獣が居たとならば、まだ、潜んで居る可能性はある…。
 焦る気持ちは有るが、慎重になるしかない…。
 シュウベルは、呼吸を整え少しづつ冷静さを取り戻す。
「今朝の巡回時には異変は無かったらしい…」
「…。」
 そんな話を詰所前でしていると、犬族側の門が開けられ、討伐隊、十五人が武装して、マロイ湖に向かって移動し始めた。
 シュウベルは、それを見送るしかない。
 熊族の町での事は、熊族内でなるべく収める。
 『クルーラ』から来ている俺は、警備隊とは言え、ココでは部外者なのだ。
 今の俺に出来ることは無い。
 彼らに任せておくしかないだろう…。

 
 彼らを見送ると、アラカが中へと指差した。
 シュウベルが、チラリと獣馬のニケの方を見ると、水と餌を与えられ、満足そうに食べている。
 任せておいて大丈夫だろう…。
 シュウベルは、アラカと共に詰所の中に入った。
 犬族側の警備隊の詰所は、熊族の町を束ねている一族の分家である、アラカとアリキが交代で管理している。
 果樹園の管理の事も有るが、一応、兄弟の一番上であるアラカがこの詰所を統括している。
 彼らの兄弟のアレクが『クルーラ』にいるので、ここの家族とは、オルガを含め『クルーラ』との繋ぎをも兼ねている。
 なのでシュウベルは、アラカ達とは顔見知りでもあった。

 詰所内に入ったシュウベルは、応接室のイスに座って大きなタメ息をつくと頭を抱えた。
 三つ眼の獣は、魔素を多く吸収して、変化に適応した獣達だ。
 それが五匹…。
 それが、こんな近くにいるなんて…。
「…上位が居るんじゃないか…」
 シュウベルは、そう呟く。
 一匹くらいなら、時々出没するが、直ぐに討伐隊が処理するので、街道には支障は無い。
 だが…。
「お前もそう思うか…」
 アラカが険しい顔をして言う。
「でなければ、五匹もいないだろう…」
 三つ眼の獣より強い四つ眼、もしくは五つ眼などが現れ、三つ眼が町側に追いやられた可能性もある。
 シュウベルは考え込んだ。
「魔素溜まりが、どこかに出来ているのかもしれないな」
 魔素が集まり、濃度が凝縮され、魔素溜まりになり、その濃度に耐えられた獣が三つ眼や、四つ眼の獣になる…。
 魔素溜まりになりそうな場所は、こまめに巡回し、今は便利な魔道具で魔素を緩和させている…。
 だから、こちらが把握していない場所に魔素溜まりが出来た可能性が有る…。
「ああ。その場所が問題だ」
 アラカはそう言って、テーブルの上に地図を広げた。
「マロイ湖の位置だ」
 シュウベルは地図に視線を向けた。
 地図の中央に熊族の町ベイエルが有り、正門が有る上の方が『クルーラ』がある方向。
 その右手には狼族の町に行く街道…。
 果樹園を挟んで、左手には犬族の村に向かう街道…。
 その左下辺りにマロイ湖が有る。
「…。」
 魔素の多い『クルーラ』よりも離れた場所に、三つ眼の獣が現れたと言うことだ。
「狼族と犬族の方には連絡はしてある。警戒体制になって、行き来の制限をかけてあるが、いつまでも、その状態のわけにはいかない…」
 このまま魔素溜まりを、ほおっておけば、さらに三つ眼の獣が現れ、町に被害をもたらすかもしれない…。
「オルガ達が戻ってきたら、偵察隊を組んだ方が良さそうだな」
 まだ、どこかに三つ眼が潜んで居るかもしれない…。
「ああ。シュウベルはいつまでベイエルにいる?」
「明日の朝の定期便で帰る予定だ」
「定期便で?」
 アラカが不思議そうに首を傾げる。
 シュウベルは苦笑いして、ヒナキさんから迎えに行くよう言われて、オルガを迎えに来たのだと説明した。
「…過保護だな…」
「過保護だろ…」
 アラカは苦笑いして言う。
「本家に確認して『クルーラ』に、魔素溜まりの捜索の要請を出す。ヒナキ様に伝えてくれ」
 『クルーラ』への要請は、自分達の町内で対処できない事態が起こったとき、救援を求めて出される要請だ。
 『クルーラ』の警備隊の手を借りたり、植物園での薬の調合を求めたりなどの、平穏な生活を守るための、救済措置としてだ。
「ああ、わかった」

 
 
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