眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

文字の大きさ
上 下
95 / 182
熊族の町ベイエル

果樹園 1

しおりを挟む
 今日は朝から果樹園での収穫だ。
 昨日、あれだけ飲んでいたアラカさんとアリキさんは、平然と収穫の準備をしている。
 二日酔いに…ならないんだ…。
 『白の館』では、たまに談話室で飲み過ぎて、朝方ぐったりとしている人達を見かけていたからだ。
 お酒に強いのかも…。

 今日の果実はオレンジだ。
 山間に有るオレンジ畑に、歩いて皆で向かった。
 なだらかな段々畑に成るオレンジ色の果実。
 山奥から流れる小さな小川の脇の畦道をならんで歩く。
 ライカとライクは、オルガの片方づつの手を掴んで、歌を歌いながら楽しそうに歩いていく。
 のんびりとした、のどかな風景…。
 その後ろを大人達がゾロゾロと歩いてくる。
 収穫に必要な道具は、『クルーラ』と一緒で、小屋が収納バックに入っていて、アラカさんが運んでいる。
 オレンジ畑の中央辺りには、小屋を置くための開けた場所が作ってあり、まずはその場所までの、散歩のようなものだ。
 
 アラカさんが小屋を出し、小屋の中から収穫用のカゴを外に出して、ハサミをもらって収穫開始だ。
 身長の低い僕は、木の下の方や、隙間に有るオレンジの茎を切り取って収穫していく。
 高さの高い場所のオレンジは、アレイがふわりと風魔法を使って身体を浮き上がらせ、一つ一つハサミで茎を切っては、風魔法を使ってカゴの中に入れていく…。
 手慣れている…。
 さすがに僕には無理だ。
 身体を浮き上がらせるか、オレンジを風魔法でカゴの中に入れるか、どちらかしか出来ない…。
 『クルーラ』みたいに、風魔法で茎を切って、カゴの中に入れるわけではないので、これが普通なのかもしれないが…。
 オルガが、オレンジの茎を切って、カゴに入れようと振り向いたら、ライカとライクが両手を伸ばして僕に差し出してきた。
 それも目をキラキラと輝かせて…。
 えっと、オレンジを渡せば良いのかな…。
 収穫したばかりのオレンジをライクに渡すと、ニコニコと笑ってそれを近くのカゴの中に入れに行く…。
 もう一つオレンジを収穫してライカに渡すと、同じようにニコニコ笑ってカゴに入れに行く…。
 そして、ライカと入れ替わりに戻ってきたライクがまた、僕に両手を伸ばして来る。
 えっと…繰り返し…?
 再びオルガがライクにオレンジを渡すと、ライカが戻ってくる。
 二人のお手伝いなんだよね…。
 これは頑張って収穫しないといけないな…。


 オルガは場所を移動しながらオレンジを収穫して、ライクとライカにカゴに運んでもらっていた。
 さすがに長時間は、腕が痛くなってきたし、ハサミを握る手のひらも痛くなってきた。
 ライクとライカの運ぶスピードは落ちてきたが、五歳と言えど、体力は有るようだ。
 僕の方が先に弱ってしまいそうだ…。
 そう思っていると、小屋の方からレイラさんが声をかけてきた。
「休憩のおやつにしましょう!」
「「わ~い~!」」
 待ってましたとばかりに、ライクとライカが小屋の方に駆けて行く…。
 おやつには勝てないようだ。
 オルガも収穫したオレンジをカゴの中に入れ、ハサミだけ持って、小屋の方に向かった。
 収穫してカゴに入れたものは、他の熊族の人達が新しいカゴと入れ換えに運んでくれるので、そのままでも大丈夫だ。
 さすがに僕には持てない…。


 休憩の小屋に行くとレイラさんが、収穫したてのオレンジを搾って、冷却魔法で冷やしたオレンジジュースを配っていた。
 オルガもオレンジジュースをもらって一気に飲む。
 甘味に少し酸味が混じり、オルガの喉を潤す。
 美味しい…。
 喉が渇いていたのもあるが、ホッと一息出来る。
 アレイも小屋に戻ってきて、一緒にベンチに座ると、パンに焼いた肉と野菜がサンドされたバーガーが配られ、空腹を満たした。
 今回の収穫に参加しているのは、大人子供、全部合わせて二十六人。
 大人二十人の内、十人は小屋の側で、収穫されたオレンジを仕分けして、魔法で洗浄して、小屋の中に納めている。
 持って帰ってからの作業をしやすいように、段取りをしているのだろう…。
 ガヤガヤと、さすがに二十六人もいれば賑やかだ。
 ああ、でも、ライクとライカは小屋の日影でお昼寝みたいだ。
 敷物を敷いて、ラスエルさんに膝枕されて、モゾモゾと動きながら目を閉じている。
 あれだけ動いたし、お腹が満たされたからだろう…。
 二人はお昼寝だ。


 さあ、休憩が済んだらもう少し頑張るぞ!


 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

処理中です...