眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

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森の聖域

訓練場 2

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 金属が断続的に当たる音に、オルガの意識が覚醒した。

 あれっ…ここは…。
 目を開けて、ゆっくりと身体を起こして思い出す。
 そうだ。
 訓練場で寝てしまったんだ。
 身体には、小さなタオルが掛けられていた。
 もしかして、シュウベルさんが掛けてくれたのだろうか…。
 金属音がする方を見ると、広場の中央で、シュウベルさんと狼族の人が、剣だけの模擬戦をおこなっていた。
 剣がぶつかり合う音だったんだ…。
 模擬戦をしている二人の回りを、十人ほどが囲って、囃し立てるように何か叫んでいる。
 休みだと、体力が有り余っている『青の館』の人達って感じだ…。
 オルガは、模擬戦をぼ~っと見る。
 シュウベルさんて、強いんだ…。
 彼が戦っているところを見るのは初めてだ。
 いつも、めんどくさそうに、しているのに、言われた仕事はきちんとこなす。
 もしくは率先して、言われた事以上の仕事をしてくれている、真面目なのか不真面目なのか、よく分からない人だ。
 でも、僕の鍛練に付き合ってくれるんだから、誠実なのだろ。

「また、模擬戦をしているんだ」
 そう言って、僕の側に来たのはチトセさん。
 『クルーラ』の入口の小屋の門番をしていて、僕と同じ人族の『迷い人』。
 今日はこれから鍛練のためか、身軽な服装をしている。
 いつもの門番の時の制服とは違って、見慣れないからか、変な感じ…。
「飽きないな…」
 そう言って僕の隣にチトセさんが座る。
「チトセさんは、これから鍛練?」
「そうだよ。担当者はあそこで剣を振り回しているけど」
 そう言ってチトセさんは苦笑いする。
 ソレって、シュウベルさんの事かも…。
 オルガはふと、気になった事を口にする。
「そう言えば、チトセさんは『青の館』に住んでいるんだよね?」
 ほとんどの人族は『白の館』か、一戸建ての住宅地に暮らしている。
 とにかく食生活が違いすぎるからだ。
 だから、チトセさんが肉食中心の『青の館』にいるのが不思議だった。
「まあ、いろいろ有ってね…」
 チトセさんはそう言って微笑む。
 聞いてはいけない事だったのだろうか…。
「…模擬戦、終わりそうにないし、知りたかったら話すよ」
 ちょっと知りたい。
 チトセさんも、突然森の中にいたのだろうか…。
 なかなか二人で話す機会はないのだ。
 だったら、僕の経緯も…。
 チトセさん、門番だから知っているか…。
 でも…。
「僕は、気が付いたら森にいた。歩き回っていた僕を、リーンさんが見つけてくれたから、『クルーラ』に来れた。それで『白の館』に住むようになったけれど…」
 オルガがそう話すと、チトセさんが苦笑いして話し出す。
「僕はちょっと違うな」
 チトセさんは、『クルーラ』にどうやって来て、『青の館』に住むようになったかを教えてくれた。

 チトセさんも、気が付いたら森の中にいたけれど、風が気持ちよくて、そのまま昼寝をしていたそうだ。
 危機感、無さすぎ…。
 人の声に目が覚めて、目の前にいたのは獣人達で、町に行くから連れていってくれると言ったので、付いていったのだが、夜中、寝ている時に、彼らが僕を町に連れていって、売ろうとしている話を聞いて、逃げようと思ったそうだ。
 売ろうとしているって…。
 オルガは青ざめた。
 もし、あの時に、リーンさんに拾われなければ、僕もどうなっていたか、分からない…。
 翌日の夜、用足しをすると、その場を離れて、来た道を戻り、来る途中に見た、木の大きな隙間に入って隠れたそうだ。
 …すごい。
 逃げて隠れるなんて勇気ある…。
 それでそのまま眠ってしまい、翌朝、『クルーラ』の警備隊に見つけられ、保護されたそうだ。
 その頃、『クルーラ』の宿はそれほど大きくなく、満室だったので、空きのあった『青の館』に連れていかれ、そのまま住むようになったとか…。
 そうなんだ。
「今さら『白の館』で住むのも何だか変だし、『青の館』に慣れてしまったしね」
 チトセさんは清々しくそう言う。

「そうそう。今、オルガ君が鍛練しているメニューは、昔、僕がこなしてたモノだよ」
「そうなんだ」
 昔、チトセさんが鍛練していたメニュー…。
「獣人達は体力有りすぎるから、今の量に減らすのにどれだけ苦労したか…」
 あっ…分かる。
 獣人族に比べたら、人族の体力はない。
 今の量でも、へとへとなのに…。
「未だに練習量を増やそうとしているから、なるべく阻止するね」
「…よろしくお願いします」
 もう、これ以上増やさないで…。


 チトセさんは、模擬戦が終わったシュウベルさんに連れていかれ、訓練場の回りを走り始めた。
 一緒にシュウベルさんも走ってる…。
 模擬戦、終わったばっかりなのに、まだ体力あるみたい…。

 僕は大きなタメ息をついて、一眠りして少し回復した身体を重たげに引きずりながら、訓練場を後にした。
 

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