眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

文字の大きさ
上 下
81 / 182
森の聖域

訓練場 1

しおりを挟む
 ベリーの収穫はとても楽しかった。
 また、収穫に参加できるように、お願いはした。
 でも、楽しい事ばかりではない。
 僕の一番苦手な事…。
 今日は、『青の館』の訓練場…。
 はぁ…。
 気が重い…。

 『クルーラ』では定期的に、『青の館』での鍛練が義務ずれられている。
 『クルーラ』の住人は、ずっと『クルーラ』に居るわけではなく、熊族の村や他の種族の村、グオルクの街などに行ったりしていて、その道中に、何が有るか分からないので、護身用として、最低限の鍛練しているのだ。
 魔法を使って逃げるにしても、体力がなければ、逃げきれない可能性も有る。
 なので基礎体力だけは、付けなくてはいけない。

 僕が『クルーラ』に来た当初は、『クルーラ』に慣れるために、その話しはされなかった。
 だが、一年が過ぎる頃、「そろそろ身体も鍛えようか」と、ヒナキさんに『青の館』へ連行された。
 『青の館』の側に作られた訓練場は、背丈ほどの壁に囲まれた、だだっ広い広場になっていて、端の方に的当てが並んでいる。
 的当ての側には小屋が有って、訓練用の道具が納められていた。
 そんな小屋の前で待っていたのは、シュウベルさん…。
 折り魔紙マシの一件から、どうも僕の担当になったみたいだ。
 
 訓練場で、僕が覚えることは、逃げること。
 隠れること…。
 戦えない僕が、身を守るために出来ることはソレくらいだ。
 そのためにも、ある程度身体を鍛えなくてはいけない。
 逃げるための走り込み…。
 足が遅ければ追い付かれてしまう…。
 隠れるための木登り…。
 場合によって、地上で隠れるよりも、木の上の方が安全な場合があるため……。
 足と腕の筋力を少し付けるために『青の館』で、トレーニングをするのだが、ソレがとても憂うつなのだ。

 そして、問題は、折り魔紙マシで作った風属性の『シュリケン』。
 二枚を組み合わせて作った、闇属性、風属性『シュリケン』は、それぞれ一つの属性を持ち、黒色と水色の二色になっている。 
 『シュリケン』は、魔力を与えて投げると、風に乗って思う場所に突き刺さる武器だ。
 『シュリケン』の魔力が尽きるまで、風魔法を使って操れるので、獣に襲われそうになった時、獣の足元を狙って『シュリケン』を使い逃げるのだと言われた。
 そして、せっかく僕が作ったのだから、練習して、使えるようにしよう。と、言われ、『シュリケン』を投げる練習も追加されていた。

 だが、『シュリケン』の前に、ボールを遠くに投げる練習から…。
 えっと…初めて投げたとき、一メートルほど先の地面に当たって、跳ね返ってきた…。
 ボールを手から離すタイミングが分からないので、まずはその練習…だった。
 今は短い距離なら、投げれるようになったけれど、ソレに風魔法をまとわせて遠くに飛ばすことは、まだ無理だ…。
 なので今のところ最終目的は、ボールを目的の場所まで飛ばす…だった。
 『シュリケン』を使えるようになるのは、まだ先のようだ。

 走り込みをして、木陰で休憩を取る。
 ハッキリ言って、僕は付いていけてない…。
 訓練場内を走り回る獣人の人達を見ていて、瞬発力…体力は凄い。
 僕だけ別の訓練になるのは仕方ない…。
 はぁ…。
 部屋に帰って本を読んでいたい…。
 
 木登りをして、ボール投げをして、今日の課題を終えたら、座り込んでしまって、もう動けない…。
 一時間にも満たない体力作りだけれど…。
 シュウベルさんに水をもらって飲んで、訓練場の端にゴロリと身体を横たえた。
 動きたくない…。
 汗が吹き出て、身体が重くなって、身体が落ち着くまで寝転がっていた。
 僕に付き合って訓練の相手をしてくれるシュウベルさんは、全く汗をかいていない…。
 涼しい顔をして、使っていた道具を小屋の中に片付けている。
 体力が違いすぎる…。
 僕は空を眺めて呼吸を落ち着け、目を閉じた。
 あっ…寝てしまいそう…。
 …そう思った時には、僕は寝てしまっていた。



 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...