眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

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森の聖域

パンケーキ

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 オルガが目覚めると、見慣れない部屋に、一瞬、どこに居るのか分からなかった。
 そうだ…。
 ダンリーさんのいる、管理人室に来て、ソファーで眠っていたんだ…。
 頭はまだ、ぼんやりとはしているが、朝、起きた時よりはスッキリとしている。
 オルガは身体を起こし、辺りを見回した。

 奥の管理人室にダンリーさんの背中が見える。
 机の上で何か作業をしているようだ。
 僕の視線に気が付いた、ダンリーさんがこちらを向く。
「起きたか」
 そう言って、手を止め、こちらに向かってやって来た。
「顔色も良さそうだし、約束のおやつを食べよう」
 ちょっと待ってろ。
 そう言って、ダンリーさんは部屋を出ていった。
 オルガはソファーに座ったまま、ぼ~っと、奥の管理人室の窓から見える外の様子を見た。
 だいぶ、日が傾いている…。
 窓から見える木々の影が、長くなっている…。
 昼前に、ご飯を食べて、それからココで寝ていた。
 こんなに長い時間、寝たのは始めてだな…。
 夜、眠れるだろうか…。
 そんな事を思っていると、お腹がグ~ッと鳴った。
「…お腹…空いた…」
 オルガがソウ呟くと、ダンリーさんが扉を開けて、トレイに山盛りのパンケーキと果樹水、紅茶の入ったポットとマグカップを乗せて運んできた。
 パンケーキ、十枚は有るけど、ダンリーさん、食べれるのかな…。
 テーブルの上にソレを置いて、一緒に持ってきたトッピングの種類の多さにビックリする。
「何が好みか分からなかったらか、いろいろ借りてきたぞ」
 トッピングは、イチゴ、ベリー、オレンジの果物とジャム、ハチミツ、生クリーム、チョコクリームなど…。
 多すぎでしょう…。
 ダンリーさんが、何が良いか聞いてきたので、イチゴとチョコクリームをお願いした。
 甘いものが食べたい…。
 皿にパンケーキを乗せて、チョコクリームとイチゴが不器用にトッピングされ、僕の前に置かれた。
 ダンリーさんはシンプルにハチミツだけのようだ。
 二人でパンケーキを食べていると、匂いにつられて?ちょうど帰ってきた兎属のリリスさんが、管理人室の窓から中を覗いて、手を振ってきた。
 管理人室の入り口に有る窓から、ちょうど見える位置だもんね…。
 
 そして、しばらくしたら、リリスさんが管理人室にやって来た。
「私もお邪魔して良いかしら」
 少しおとなしい言い回しで、いつもと様子が違うので、思わず目をパチパチさせてリリスさんの方を見た。
「どうぞ。パンケーキを食べるなら、食堂から皿をもらっておいで」
「はい!」
 リリスさんは返事して、食堂に駆けていった。
 もしかして、パンケーキが食べたかった?
 でも、それなら食堂でお願いすれば、作ってくれるけれど…。
 そう思いながら、パンケーキを口にした。
 甘くて美味しい…。
 すぐにリリスさんがお皿とフォーク、オレンジジュースの入ったグラスを持って戻ってきた。
「お邪魔します」
 そう言って部屋に入ってくると、テーブルの上にお皿とグラスを置いて、僕の隣に座った。

「顔色、良くなって良かった」
 リリスさんがそう言って微笑む。
 心配してくれたんだ…。
「うん。もう大丈夫」
「私も『クルーラ』に来たときは、身体の不調を起こして、寝込んでたからね。皆、一度はこの辛さを経験しているのよ」
 魔素の濃度が濃い場所に来て、身体に馴染むまで、頭痛や吐き気が起こる時が有ると言っていた。
 その為、熊族のアレイはまだ、『クルーラ』には来れない…。
 みんな、この辛さを経験しているんだ…。
「早く落ち着いて良かったわ」
「うん。ありがとう…」
 なんか、照れくさい…。
 心配されて、嬉しいのと恥ずかしいのと…。
 複雑な気持ち…。

「と、言うことで、パンケーキ、頂いて良いかしら」
 リリスさんはニコニコと微笑んでお皿を手に取った。
 食べるき満々じゃないか…。
「どうぞ食べてください」
 ダンリーさんが、笑いながらそう言うと、リリスさんはパンケーキと、トッピングに生クリームとイチゴジャム、イチゴを乗せて、満足そうに自分の前に置いた。
「頂きます!」
 リリスさんは、美味しそうにパンケーキを頬張る。
 僕も食べてる途中のパンケーキを食べ始めた。

 すると管理人室の扉が叩かれ、犬族の魔力紙マリョクシ製造元にいる、ペレスが顔を覗かせた。
「失礼します。あの…僕もご一緒させてもらって良いですか?」
「おお、入れよ」
 ダンリーさんがそう返事すると、ペレスは皿と果樹水を手に部屋に入ってきた。
 そして僕の隣に、リリスさんとは反対側に座った。
 皿と果樹水をテーブルに置いて、僕の方を見る。
「眼の光がもとに戻った。もう大丈夫そうだ」
「…そんなに変だった?」
 自分ではそんなつもり無いのだが…。
「どんよりとして、濁ってた」
 これも、心配してくれたって事だよね…。
「うん…。ありがとう…」
 照れくさく、小さい声で、ペレスに聞こえるくらいの声で言う。
「…僕も、パンケーキ頂いて良いですか」
 ペレスも皿をもって、ダンリーさんに聞く。
「どうぞ」
 ペレスもニコニコとしてくれて、皿にパンケーキと、チョコクリーム、ベリーをトッピングしてくれて、自分の前に置き、食べ始めた。
 …もしかして、こうなる事が分かっていて、ダンリーさんは、パンケーキをたくさんもらってきた?

 そう思っていると、次々と白の館に帰ってきた、仲良くしている住人たちが管理人室に、皿をもってやって来た。
 ハハッ…。
 辛かったのを忘れるくらい楽しいな…。

 
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