眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

文字の大きさ
上 下
70 / 182
森の聖域

体調不慮

しおりを挟む
 僕が初めて『聖域』に入ったので、体調の変化が起こる可能性が有るからと、早々に僕達は『クルーラ』へ戻るため、もと来た木々のトンネルの中を歩き始めた。

「なんだか、身体が軽く感じる…」
 ふわふわしている…。
「…魔素が薄くなってきたからだ」
 『聖域』に向かったときには、何も感じなかったが、魔素が元の状態に戻ってきたから、魔素の重圧から解放されて、そう感じるのだと教えてくれた。
「今日は、おとなしくしてろよ」
 心配そうなヒナキさんにそう言われながら、『クルーラ』にたどり着いた。


 ヒナキさんの店で、昼ご飯を食べ終わると、なんだか身体が怠くなってきた。
 なんだろう…。
 さっきまで、身体が凄く軽く感じていたのに…。
「…どうした?」
 ヒナキさんが僕の顔を覗き込む。
「んんっ…」
 あれっ…?
 視界が…歪んできた…。
 なんだか、クラクラする…。
「オルガ。横になれ」
 ヒナキさんが僕の身体を支えてくれて、座っていたソファーにそっと身体を横たえた。
「…!!…☆…??…☆…」
 頭を振り回されたような気持ち悪さと、身体の怠さが一斉に襲ってくる。
 オルガがギュッと目を閉じると、今にも意識が飛んでしまいそうな目眩を感じ、頭の中が真っ白に成っていく…。
 つっ…っ…。
 オルガはそのまま意識を失った。


 身体の熱さと息苦しさに、フッと意識が浮上する。
 身体が重い…。
 僕はどうしたんだろう…。
 目を開けると、テーブル越しの視界に、ヒナキさんが本を読んでいる姿が見えた。
 そうだ…。
 『聖域』に行って、帰ってきてから、身体がおかしくなったんだ…。
「んっ…。気が付いたか…」
 僕の視線に気が付いたヒナキさんが、本をテーブルの上に置いて、僕の側に移動してきて、顔を覗き込んできた。
「…まだ、魔素の影響が出てるな…」
 魔素の影響?
 ヒナキさんは側を離れて、どこかに行ってしまった。
 身体を起こしたくても、自分で起き上がれる気がしない…。
 それに…うつらうつらと、目蓋が閉じそうだ。
 ヒナキさんが戻ってくると、その手に折り魔紙マシの『コップ』と、グラスを持っていた。
 そして、ヒナキさんが『コップ』に魔力を入れると、『コップ』に水が涌き出てきて、それをグラスに注ぎ込んだ。
 折り魔紙マシの『コップ』に涌き出た水を、直接飲むのではなく、普通のグラスに移し変えることによって、『コップ』は長持ちする事が分かり、さらに、ほんの少し冷気を帯びた魔力を入れることによって、冷えた水が涌き出る事が分かっていた。
 なので、グラスに入れられた水は、冷やされた水なのだ。
 ヒナキさんはグラスをテーブルの上に置くと、横たえた僕の身体を起こしてくれて、ソファーの背もたれに寄りかかった。
 そしてグラスの冷えた水を少しづつ、飲ませてくれた。
 冷たくて美味しい…。
 凄く、喉が渇いていたんだ…。
 グラスに入っていた水を飲み干すと、ヒナキさんが再び『コップ』に魔力を入れて水を出してくれた。
 そしてグラスに注いで、再び僕に飲ませてくれた。
 …少し落ち着いてきた…気がする…。
 身体の怠さは変わらないけれど…。
「もう少しすれば、身体に入った余分な魔素が抜ける」
 そう言って、ヒナキさんは、今の身体の状態を教えてくれた。
 『クルーラ』の魔素より濃い『聖域』の魔素に、過剰反応を起こしていて、魔素を多く身体に取り入れてしまった状態なのだと言う…。
 身体が落ち着けば、『聖域』のような強い魔素がある場所でも、過剰に魔素を取り込まなくなるらしい…。
 コレは、『クルーラ』の外から『クルーラ』に来る人達にも、同じような現象が起きるのだとか…。
 そう言えば、『クルーラ』に来たいアレイが、魔力酔いを起こすから、まだ行けないと言っていたけれど、もしかして、こんな風になってしまうのか?
「…。」
 コレは苦しいかも…。
「アレクの手が空いたら、白の館まで連れていってくれるから、もう少し寝てれば良いぞ」
 ヒナキさんがそう言ってくれたので、ソファーに再び横になり、目を閉じた。
 
 
 揺れを感じて目を開けると、アレクさんに抱き抱えられて、移動していた。
 …白の館に連れていって、くれてるんだ…。
 揺れの心地よさに再び目を閉じる。
 なにもしていないのに、すごい疲労感…。
 明日に成れば、もとに戻るかな…。
 そんな事を思いながら眠りについていた。





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

処理中です...