眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

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森の聖域クルーラ

植物園の『クロス』 1

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 折り魔紙マシを置いてある小屋で、話し合いをした二日後、カナックさんが追加で『クロス』を頼みに来た。
 属性魔力は植物園の方で入れるからと、折っただけの『クロス』を二十枚渡した。
 どうも、良い感じに活用出来そうらしい…。
 「報告を楽しみにしていて」と、ニコニコ顔で帰っていった。
 折り魔紙マシの『クロス』が、どんな風に使われているのか楽しみだ。
 
 
 それから五日後、僕とヒナキさんは、カナックさんに呼ばれて植物園の入り口にいた。
 植物園は、白の館より少し奥の森の方…。
 敷地は僕の背丈ほどのレンガの壁に囲われていて、レンガの上に植物が這っている。
 入り口はアーチ状になっていて、何の植物かは分からない蔦が、のれんの様に、いくつもぶら下がっている。
 ソコから見える敷地の内側は、中央に一本の道がずっと続いていて、突き当たりにガラス張りの大きな建物が見える。
 道の左右には、大小いろいろな植物が生えていて、細い道で区切られているように見えた。
 コレだけの植物を管理しようと思うと、とても大変だ。
 しばらくすると、奥のガラス張りの建物から、カナックさんが出てきて、手招きしてくる。
 中に入っても、良いって事だよね。
 僕がヒナキさんの方を見ると、ヒナキさんは微笑んで歩きだした。
「行こう」
 僕はヒナキさんの後を追って、植物園の中に入った。

 植物園の一本道をヒナキさんの隣を歩きながら、僕は回りをキョロキョロと見回した。
 敷地はとても広く、いろんな種類の植物が生えている。
 手のひらサイズの大きい葉っぱの木や、赤色の実を付けている木、白い花が咲いている背丈ほどの垣根…。
 図鑑でなんとなく見たことがある植物が、いくつも植えられている。
 ガラス張りの建物の近くは、畑の様に耕されていて、多分薬草?が植えられていたり、色とりどりの花が並んで咲いていた。
 ココは、不思議な場所…。
 今まで見てきた『クルーラ』の、どの場所とも違う…。
 何が違うのか言葉には出来ないが、空気?雰囲気?何かその様なモノが違うのだ。
 ガラス張りの建物の前まで来ると、カナックさんが扉を開けて中に入るように促してきた。
 僕はドキドキしながら中に入り、ヒナキさんが入ると、カナックさんも入って扉を閉めた。

 中は少し蒸し暑く、温度が高い…。
 僕の背丈を越える葉っぱや、天井まで届きそうな木々が所狭しと植えられている。
「ココは暖かい地方の植物を植えてあるから、温度が高いんだ」
 カナックさんはそう言って、舗装された道を奥へと進んでいく…。
 今度は曲がりくねった道で、奥が見えない…。
 しばらく歩くと、小さな木造の小屋が見えてきた。
 窓は何かで塞がれ、中が見えないようになっている。
 カナックさんが小屋の扉を開けると、左右に棚が有り、ソコには植物の苗が置かれていて、そして中央に犬獣人が椅子に座って小さな机の上で何か書いていた。
 そしてこちらに気が付くと、頭を下げてくる。
 なので僕達も、挨拶に頭を下げる。
 ココは何をするための小屋?
「アレを何に使っているか、気が付かないか?」
 カナックさんが、ニヤニヤと笑いながら聞いてくる。
 アレとは折り魔紙マシの事だよね…。
 僕は小屋の中を見回した。
 折り魔紙マシの『クロス』は何処に…?
 部屋のどこかで使っているはずなんだよね…。
 カナックさんが試すと言っていたのは、確か、『放出』の水と風と光と、普通の土の属性…。
 何処かに『放出』されている?
 う~ん。
 わからない…。
「上だよ」
 カナックさんは楽しそうに言う。
 上?
 僕とヒナキさんは小屋の天井の方を見上げる。
「「アッ!」」
 天井の下、付近をフワフワと光属性の『クロス』が浮いていた。
 それも光を放ちながら…。
 いったいどういう事なのか、カナックさんが説明してくれた。

 光属性の『クロス』が光を放出するならば、その光で植物が育つか実験している途中なのだとか…。
 種から植えたのと、少し芽が出てきたモノと、ある程度成長したモノと…。
 どの段階からなら、光属性の『クロス』が有効なのか、成長速度はどうなのか、試していると言う。
 なぜなら、これから『クルーラ』の日照時間が短くなって来るので、植物が育ちにくくなってくるそうだ。
 そのため、光属性『クロス』で成長するのならば、日照時間は関係なく植物を育てられるからだとか…。
 なるほど…。
 部屋の中央にいる犬獣人の彼が、風魔法を使って『クロス』を空中に浮かせ、小屋の中を漂わせていて、変化した状況などを書き込んでいるのだとか…。
「成果はどうなんだ?」
「芽が出始めてから、光属性『クロス』で照らすと、成長速度が速い」
 カナックさんは嬉しそうに言う。
「薬草の生産量を減らさなくても大丈夫かもしれない。光属性『クロス』で育てた薬草を使って、薬を作って見なければ、分からないが、性能が同じで有れば、今後に期待だぞ」
 日照時間が短くなるから、太陽の光の代わりに、光属性『クロス』の光の『放出』を利用するって事か…。
 でもココで、犬獣人の人みたいに光属性『クロス』を風魔法で浮かばせて、監視して見てないといけないんだよね…。

 そんな事を思っていると、カナックさんが教えてくれた。
 今は実験なので、毎日、時間を決めて交代で『クロス』を飛ばしているそうだ。
 実際、光属性『クロス』が使えると分かれば、日照時間の短い時期に、日の入り前から一、二時間くらいの活用を予定しているそうだ。
 なるほど。
 足りない時間だけ、光属性『クロス』を放出させるのか…。
 性能が変わらず薬が出来ると良いな…。

「次は外だ」
 カナックさんがそう言って、僕達は小屋を出て、もと来た道を戻り、ガラス張りの建物から外に出た。
 
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