眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

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森の聖域クルーラ

初めてのお小遣い

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 月の初め。
 今日は『クルーラ』内が、少し浮き足立っている様な気がする…。
 先月は気が付かなかったけれど…。
 何か有るのだろうか?

 僕はいつもの様に、ヒナキさんの店に向かう。
 すれ違う『クルーラ』の住人は何か嬉しそうだ。
 オルガは首を傾げながら、ヒナキの店に入った。
 今日は珍しく、ヒナキさんが店のソファーに座り、待ち構えていた。
「おはようございます」
「おはよう。いつもの日課を終えたら、こっちにおいで」
 ヒナキにそう言われてオルガは隣の小屋に向かう。
 いつもの日課。
 『コバコ』に入れた植物の経過を確認する事。 
 新しく植えた種の芽が出てきていたり、葉っぱが大きくなったり…。
 観察して記録することが、朝のオルガの日課だ。

 一通り確認すると、オルガはヒナキの店の方に戻ってきた。
 何の話だろう?
 オルガはソファーに座り、ヒナキさんの方を見る。
 ヒナキさんは、ニコニコと嬉しそうだ。
 そしてテーブルの上の、ヒナキさんの前に置いてあった、両手に収まるくらいの巾着袋を、オルガの目の前にまで持ってくる。
「コレは何?」
「開けてみろ」
 ヒナキさんに言われて、オルガは巾着袋を手元まで引き寄せ、袋を開けて中を覗いて見る。
「…。」
 えっと…コレって貨幣…お金だよね…。
 オルガは困惑してヒナキさんの方を見る。
「お小遣いだ」
「…。」
 …お小遣い?
 オルガは意味が分からなくて首を傾げた。
「ああ、お小遣い…報酬と言った方が分かるか?」
 何の報酬だろう?
 オルガは分からなくて再び首を傾げる。
 『クルーラ』では、衣食住全てが支給されるので、何か『クルーラ』に役立つことを仕事にする事になっている。
 僕はまだ、知らないことが多いので、勉強しながら役立ちそうな折り魔紙マシを折っているのだが…。
 ヒナキさんは楽しそうに言う。
「折り魔紙マシが売れたからね。その報酬」
「…。」
 オルガはキョトンとしてヒナキの方を見る。
「…売れたから?」
「ああ、そうだな。難しいかもしれないが、『クルーラ』の収支の事を説明しようか」
 そう言って、ヒナキさんは『クルーラ』の説明をしてくれた。

 『クルーラ』は一つの村だが、村全体で商会の様な役割を果たしている。
 各店の売り上げの集計が、村全体で集められ、必要経費が支払われていくと言う。
 住んでいる『白の館』での生活費などは、全て集められた売り上げで賄われるため、僕達が支払う必要がないのだとか…。
 そして、毎月月初めに個人的に必要なモノを買えるように、報酬と言う形で貨幣が配られる。
 自分の村に送る者もいれば、外の街に遊びに行く者もいるし、欲しいものを買い集める者もいる。
 それが基本の報酬。
 ソレとは別に特別な報酬が有って、『クルーラ』にとって新しい売り上げや、利益になるようなものを作った場合。
 それが今回の折り魔紙マシなのだとか。
 それに関係した、販売所になった雑貨屋ベルと、入れ物を作った木工所も、特別報酬が配られて、皆喜んでいたらしい。
 魔力紙マリョクシを扱うアレクさんの所は、在庫の整頓だったし、薬屋ヒールの『コバコ』は、それほど売り上げにならなかったので、特別報酬は出なかったとか…。
 でも薬屋ヒールは、一部『コバコ』で薬草を作ることが出来るようになり、薬草が手に入りやすくなって、薬を量産できるようになったため、じわじわと売り上げは伸びているとか…。

 それで、僕にこの報酬…。
 元になった魔力紙マリョクシを、折り魔紙マシとして見いだして、活用できる方法を見つけたこと。
 コレからも、何か期待できるものを、見いだして行って欲しいと言う投資も予ての報酬だよ。
 ヒナキさんはそう言って微笑む。
「…。」
 折り魔紙マシが役立っていると、聞いても、いまいちピンと来なかったけれど、こういった報酬と言う形で、手元に来ると、実感がわいてくる。
 ああ、本当に役立っているんだ…。
「だからコレで、オルガの欲しいモノを買うのに使えば良いからね」
 ヒナキさんはニコニコと微笑みながらそう言う。
「…ありがとう…」
 オルガは巾着袋に入った貨幣を見下ろした。

「で、何か欲しいものは有る?」
 ヒナキさんがそう聞いてくる。
 欲しいモノ…。
 『白の館』に住んでいれば、食事や寝る場所の心配は無いし、服は人族の人が着なくなった服をもらって、たくさん有る。
 ただ、服の大きさが大きいので、服屋ラビで仕事をしているリリスさんが、僕のサイズにあわせて直してくれている。
 ああ、対価はいらないと言われたが、でもお礼がしたいと言ったら、それなら果物屋さんの「アップルパイをホールで」と、言われていたけれど、ホールってなんだ?
 果物屋さんで聞いてみよう。
 僕の欲しいモノは…。
 しばらく考えて、ふと頭によぎる。
「あっ、…木材の図鑑が欲しい…」




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