眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

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森の聖域クルーラ

自動調整 2

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「…おい、ペレス。どうやって自動調整を付けた」
「…一定方向だけに自動調整…」
「やってくれたな…」
 えっ?
 何か違うの?
 オルガが首を傾げるとペレスが説明してくれた。
「普通の自動調整は、全体的に縮小するんだよ。一部の固定の部分を省いてね」  
 そう言われたが、意味がわからない。
「同じ割合で、縦にも横にも縮小するんだ。だから、前後にだけ縮小することはないはず…」
 そう言ってヒナキさんは、魔力紙マリョクシを入れた箱を手に取りグルグルと回りを観察する。
 なるほど、自動調整では、全体的に小さくなっても、マチの部分だけが小さくなることは無い。
 前後の四角い部分はそのままの大きさを維持しているから。と、言うことなのだろう。
「そうなんだ…」
 ペレスさんは、凄いことをしたらしい…。
「んんっ?…これは…」
 ヒナキさんが何かに気が付いて声を上げた。
 そしてペレスの方をジロリと見る。
「…いったい幾つ付けた」
「ハハッ。分かります?」
 幾つ付けたとは、自動調整の事?
「とりあえず自動調整は九ヶ所。一部は固定にしてスライド式にしてある」
「ああ。スライド式ね」
「溝を作って動くようにね」
「よく考えたな」
 三人には分かるようだが、僕には意味がわからない…。
 僕が首を傾げていると、ペレスさんが簡単には説明してくれた。
 自動調整で小さくなるとき、一点だけ固定してあるので、固定された部分に向かって縮むそうだ。
 その時、大きい面が引っ張られないように溝に沿って縮み、ソレが一辺に三ヶ所あり、一つ目の溝は上と下に縮み、真ん中が開くそうだ。
 溝はもう一つ有り、中央で固定されているので、中心に向かって縮み、見た目的には、ほんの少し、段差が出来て見えるくらい。
 ソレが三辺に使用されているとか…。
 ちょっと難しくて、あまりよく分からなかった…。
 ヒナキさん目を輝かせて、しげしげと箱を観察する。
 なんか楽しそう…。
「…こんな細かいパーツに自動調整…。それも九個も…」
 アレクさんが呆れて大きなタメ息を付く。
「代わりに彼女は、光る『ツル』を五個は欲しいって言ってた」
 ペレスさんはちゃんと交換条件を提示してきた。
 なるほど。
 『ツル』を作る条件として、自動調整をしてくれたんだ。
「うん。作るよ」
 オルガはペレスが作ってくれた箱の方を見るが、ヒナキさんが離しそうに無かったので、再び箱の中から魔力紙マリョクシを取り出した。
 そしてテーブルの上に置くと、ペレスさんが入れ物についての説明をしてくれた。
 表側の中央の湾曲は、中の魔力紙マリョクシを取り出しやすいように、摘まみやすいようにする為だそうだ。
 後ろ側の長めの布は、使わないときは蓋の代わりに被せておいて、開けたとき、邪魔にならないように後ろ側に曲げておけば良いそうだ。
 布なので柔軟性が有り、自動調整で小さくなっても馴染みやすいからだとか…。
 さっきは自動調整の話をしていて、入れる箱本来の説明は出来なかったからね。
「あと、この箱は試作品だから、強度は弱いと思う。同じ状態を、木で作った方が、スライドの溝の安定感は有るかな…」
 紙で作った箱の強度より、木の方が強度が有ると追加情報も教えてくれた。
「木か…」
 アレクさんが呻く。
「薄くして表面を滑らかにしようと思うと、手間はかかりそうだな…」
「そうだね。魔力紙マリョクシは、圧縮を使っているから、簡単だけどね…」
 ああ…。
 ソレを作る製造の話をされると、全く状況がわからない…。
 今度、製作するところの見学に行かせてもらった方が良いのかも…。
 
 オルガは話に付いていけなかったので、テーブルの上で『ツル』を折り始めた。
 五個は欲しいって言っていたけれど、アレクさんの驚きから言って、かなり高度な事をして、細かいパーツに自動調整を付けてくれたんだよね…。
 対価の価値が、どれだけなのか分からないからけれど…。
 自動調整を九個って、言っていたから…。
 よし、十個作ろう。
 それで、後でリーンさんに光の魔法を掛けてもらおう。
 ソレが対価に見合うかは、後で相談しよう…。
   

 魔力紙マリョクシを入れる箱は、ヒナキさんが満足するまで眺められて、魔力紙マリョクシを出したり入れたりして、縮みを確かめて、僕が白の館に帰る前に、渡された。
 すごく満足そうだった。
 
 



 
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