眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

文字の大きさ
上 下
25 / 182
森の聖域クルーラ

自動調整 1

しおりを挟む
 折った魔力紙マリョクシの途中経過を聞き終える頃、ペレスがニコニコしながらやって来た。
 以前に言っていた、魔力紙マリョクシを鞄の中に収納出きるモノの試作品を持ってきてくれたのだ。

 見せてくれたモノは、横から見ると箱形のペン立てのようなもの。
 マチの幅は、二センチ位。
 縫い代の部分が外側に有り、マチが中に埋め込まれている。
 正面から見ると魔力紙マリョクシが入る正方形の形をしていて、前側の上の真ん中辺が短く湾曲していて、裏側に有る布を被せると、蓋になるように工夫されていた。
「予定では、だいたい百枚位は入るよ」
 ペレスはニコニコと自慢げに言う。
「それも自動調整付きだから、枚数が少なくなっても、型崩れしないからね。と、言っても二、三十枚位は常時入れておいて。ソレ以上は小さくならないから」
 自動調整付き…?
 知らない言葉を聞いた。
 だが、その場にいた、リーンさんとヒナキさん、アレクさんは驚いた顔をしてペレスの方を見る。
「よく付けれたね…」
「コレに付けたのか?!」
「おいおい!自動調整付きだと?!」
 それぞれに、驚きの感想を言う。
「…自動調整って何?」
 知らない言葉は、その場にその場で聞けば良いと言われていたので聞いてみる。
「ああ。オルガは知らないか…」
 リーンさんが僕の方を向いて言う。
「自動調整とはね、モノに合わせて自動的に大きさを調整出来るようにする魔法を、モノに張り付けたモノだよ」
 オルガは、よく意味が分からなくて首を傾げる。
「こう言うことだよ」
 そう言って、ペレスが自分の指にはめていた指輪を外して、手の平に乗せて見せてくれる。
 大きな石、青い魔石が一つ付いたシンプルな、何の変哲もない普通の指輪…。
 ソレをペレスが指にはめると、勝手に小さくなって指にちょうど良い大きさになると止まった。
「…小さく…なった…」
 オルガは驚いて、指輪をはめたペレスの手を見る。
「こんな風に、指の大きさに合わせて調整してくれる魔法を張り付けてあるんだよ」
 ペレスはそう言って微笑む。
「凄い…」
「実際に自動調整を見た方が分かるからな…」
 ヒナキさんがそう言って笑む。
「アクセサリー、指輪やブレスレットに自動調整を付けているのが多いかな…。貴重な魔石を使った商品も、指や腕の大きさが人それぞれだから、大きめに作って自動調整を付けているんだ」
「確か『クルーラ』には、アクセサリー工房に二人、自動調整を付けれる職人がいるからね」
 ヒナキさんがそう言う。
 どこにどんな職人さんが居るのか、把握しているんだ…。
 思わず尊敬の眼でヒナキさんを見る。
「そう。その人に頼んで付けてもらったんだ」
 ペレスはニコニコと笑って言う。
「オルガ。実際に魔力紙マリョクシを入れてみて」
 オルガは頷き、箱の中に入れてある同じ大きさの魔力紙マリョクシを取り出して、テーブルの上で整え、まとめて上から箱の中に入れる。
 すると湾曲している前側の部分が動き、中に入れた魔力紙マリョクシを押さえるように箱のマチの幅が狭くなって止まった。
「「「…。」」」
「…凄い。動いた…」
 オルガは素直に感想を言ったが、他の三人は眼を丸くして箱を凝視する。
 えっ?
 どうしたんだろう…。
 オルガは三人を見て、ニヤニヤと笑うペレスの方を見る。
「…おい、ペレス。どうやって自動調整を付けた」
「…一定方向だけに自動調整…」
「やってくれたな…」
 えっ?


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

処理中です...