眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

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森の聖域クルーラ

入れるもの

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「このまま鞄に魔力紙マリョクシを入れて置いたら、くしゃくしゃになるなって…」
「そうだな…。ソレを入れる入れ物か…」
「うん。なるべく軽くて丈夫な方が良いけど…」
 魔力紙マリョクシとは言え、紙なのだ。
 折り目を付けないように、持ち運びが出来ないと都合が悪い…。
 鞄入れて持ち歩くなら、軽い方が良いし…。
 するとダンリーさんが少し考えて、『コップ』を試している人達の方を向いて声をけた。 
「おい。ペレス」

 呼ばれて耳がピンと立った犬族の男の人がこちらを向いた。
「なんです、ダンリーさん?」
 そう言ってグレーの髪と耳の、犬族の細身のペレスがオルガ達の方にやって来る。
「オルガ。こいつは魔法書の背表紙を製作しているペレスだ」
「オ、オルガです」
 緊張しながらそう言うと、男の人は耳をピクピクさせてニコリと笑う。
「ペレスだよ。僕もこの『コップ』を借りるね」
「は、はい!」
 初めて話すときは緊張する…。
「ああ、呼んだのはな、この魔力紙マリョクシを鞄に入れて持ち歩くのに、魔法書みたいに折り曲がらないように出来ないかと思ってな」
「あの、背表紙って?」
 オルガは背表紙が何か分からなくて二人に聞く。
「ああ。魔法書の外側の魔力紙マリョクシを綴じてある、分厚い部分だ」
「表紙の本の名前が書いている部分?」
 オルガはどの部分が思い当たって聞く。
「そうだよ。あれは魔力紙マリョクシを圧縮して固く作って有るから、簡単には曲がらないよ」
 ペレスさんがそう言う。
「あの正方形の魔力紙マリョクシの形状だとどうだ?」
 そう言って、ダンリーさんがテーブルの置いた魔力紙マリョクシを指差す。
「厚紙で挟んで紐で縛る?」
「出来たら、取り出しやすい方が良いんだけど…」
 厚紙で挟めば折り曲がらないだろうが、紐で縛ってしまえば、取り出すときに、毎回紐をはずさないといけないし、結んだ紐が鞄の中でほどけてしまうかもしれない…。
「それなら箱に入れるか…」
 ペレスさんがウ~ンと唸りながら考えてくれる。
 箱か…。
 箱だと鞄から取り出して、蓋を開けて取り出すようになる。
 今みたいに、直接鞄から魔力紙マリョクシを取り出すようにはいかない…。
「鞄に立てて入れれる方が良いよね…」
「うん」
 僕は頷いた。
 横にすると鞄の底が手の平より大きくなくては、いけなくなる…。
 それに他のモノを入れると、下に埋まってしまいそうだ。
 出来たら鞄から直接出せるような感じにならないだろうか…。
 そう思ってペレスさんにその話をすると、独り言を言い始めた。
 枚数がどうのこうの…厚みが…と、ブツブツと呟いている。
 ダンリーさんの方を見ると苦笑いしているだけ…。
「…ああっ!」
 何かを思いついたのか、ペレスが声をあげた。
「コレ、一枚もらっていって良い?」
 何かニヤニヤと笑いながら、テーブルの上に置いてあった魔力紙マリョクシを一枚手にする。
「うん。何か思い付いたの?」
「ああ。ちょっと試してみるね」
 そう言ってペレスさんは魔力紙マリョクシと『コップ』を持って談話室を出ていった。
 僕は隣に座るダンリーさんの方を見ると、ニコニコ笑って言う。
「みんな協力的で楽しいだろ」
「うん。凄いね…」
 新しい事は『クルーラ』全体で共有し合うと言っていた意味が分かった気がする。
 それぞれの得意分野を生かして、新しい何かを作り、ソレをさらに応用させて新たなものを産みだろうとする…。
 みんなが協力的で、ソレを仕事とは別の楽しみとしてくれている気がした。

 どんなものが出来上がるか楽しみだ。

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