眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

文字の大きさ
上 下
6 / 182
森の聖域クルーラ

室内の明かり

しおりを挟む
 翌日、宿屋で朝食を食べ、二人分のお弁当を持って、石畳の道の一番奥、ヒナキさんの店に向かった。

 昨日、宿屋で目覚めたのが昼過ぎだったので、人はまばらだったが、午前中と言うのもあって、多くの人、獣人族の人達が歩いていた。
 あっ、昨日も見た熊族の人…。
 あれは犬族かな…耳が三角なのは、狼族?猫族?
 昨日、会った長い耳は兎族だから、長い耳の彼女達は昨日のお店に行くのかな…。
 …羽根、生えてるのは…鳥族?
 物珍しく、思わずキョロキョロしながら道を上っていく…。
 本当にいろんな種族の獣人がいるんだ…。
 あまりジロジロ見るのは、申し訳ないので、足早にヒナキさんの店へと向かって行った…。

 ヒナキさんの店にたどり着き、扉を開けて一歩中に入ると、暗かった室内に明かりが灯り、思わず足を止めた。
「…今、勝手に…明るくなった…」
 室内に入っただけなのに…。
 室内を見回すが誰もいないので、ヒナキさんが明かりを灯したわけでは無いようだ。
 オルガは首を傾げ、思い立った。
「もしかして、これが魔道具…?」
 そう呟いたが、答えてくれる人はいない。
 オルガは大き深呼吸して扉を閉めた。
 
 持ってきたお弁当を、奥のテーブルとソファーの有る場所に持っていき、テーブルに置いた。
 そしてソファーに座ったが、室内はシーンと静まり返ったまま…。
 ヒナキさんが来る気配が無い…。
 オルガはしばらくジッとしていたが、落ち着きがななくなってきて、辺りをキョロキョロと見回した。
 そして昨日、文字が読めるかと聞かれた『初級魔法』の本が、僕が座った反対側のソファーに置いてあるのに気が付いた。
 読めるかな…。
 オルガは本を手に取り表紙をめくる。
 …なんとなく、文字は読める…。
 読めても意味が分からないけれど…。
 オルガは文字を読む練習に、ゆっくりと文字をたどった。


 集中していて、いつの間にか時間がたっていて、お腹の虫が鳴いた。
 お腹空いた…。
 ヒナキさんは、まだ、姿を見せない。
 僕は持ってきたお弁当のひとつを取り出し、箱の蓋を開け、昼食を食べ始めた。
 美味しい…。
 そしてお弁当を食べ終わる頃、店の扉が開き、オルガが顔を上げると、リーンさんがいた。
「あれ?ヒナキは?」
「まだ来てない」
 僕がそう答えると、リーンさんは頭を押さえた。
「一般常識を教えるって言ってたのに…」
 リーンさんはそう言って、二つ目の部屋の扉の方に向かって歩いて行って、扉を開けた。
 えっ…?!
 二つ目の部屋に近付かないように、言っていたのに…。
「ヒナキ!」
 リーンさんが声をかけると、部屋の奥からボソボソと何を言っているのか分からないが、声がした。
 リーンさんは大きなため息を付いて扉を閉める。
 そして僕の方に来て、苦笑いする。
「ごめんね。お弁当を食べ終わったら、『白の館』に向かうから…」
 僕はコクりと頷く。
「本が読めるようだから、ヒナキがいなくても、基礎知識が分かる本を用意しておくよ」
 もしかして、お店にいないことの方が多いのかな…。
 でも、二つ目の部屋に向かって、しゃべっていたよね…。
 奥の部屋にはいるんだよね…?
 考えても仕方ないので、この後の事を考えて、リーンさんに聞いてみた。
「…この本、借りても良い?」
 僕は読んでいた『初級魔法』の本を視線を落とす。
 文字を読んでいるだけだけど、何となく意味が分かるものも有るので、退屈はしない。
 今日みたいに、ただ待っているのは、落ち着かないので、本を読んでいれば気が紛れる…。
「良いよ。読んでおくだけでも、基礎知識にはなるからね」
 そう言ってリーンさんは微笑んだ。
 そうだね。
 本を読んで、基礎知識を得る…。
 知らないより、知っていた方が良いもんね…。
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

処理中です...