眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

森の聖域クルーラ

オルガ

　グ～ッと自分のお腹が鳴る音に驚いて目覚めると、小さな木造の部屋のベットに寝かされていた。
　僕は横たわるベットの上で、身体をゆっくりと起こした。
　起き上がって部屋を見回すと、側には机と椅子が置いてあり、こじんまりとした個室のようだ。
　そして何が有ったのか思いだし、僕は頬を染めた。
　森をさ迷い、人に出会って「一緒においで」と、いってくれた人に抱えられて、森を走り抜け、安心したのと疲労で眠ってしまったのだ。
　きっと彼がこの部屋へ連れてきてくれたのだろう…。

　体を起こしてしばらくすると、部屋の扉が開き、リーンと名乗った青年が、暖かい食事を持ってきてくれた。
　いい匂いがする…。
「気が付いて良かった。お腹空いているだろう」
　そう言って、ベットの横の小さな机の上に、器に入った湯気の出ている食べ物と、皿の上に乗ったパンとサラダを置いた。
　美味しそうな匂い…。
　それを見て、僕のお腹がグ～ッと再び鳴った。
　僕はベットの上を移動し、小さな机の側に来ると、青年を見上げた。
　食べて良いのだろうか…。
　僕のために持ってきてくれた、みたいだけど…。
「どうぞ。食べてください」
　そう微笑まれ、僕はスプーンを手に取り、食事を口にした。
　飢えていたのだろう。
　黙々と食べ物を口にして、お腹が満たされてきて、少し落ち着いてきた。
　…ここは何処だろう…。
　何故、僕はココにいるのだろう…。
　そんな疑問も浮かんできた。

　食事が終わると、僕が食べている間、椅子に座っていた彼が話しかけてきた。
「どうして、あの場所にいたか分かる？」
　僕は首を左右に振った。
　森の中で目が覚めて、右も左もわからない森を、ただひたすら歩いていたのだと説明した。
　彼は少し考えて、う～んと唸りを上げた。
「もしかして『迷い人』なのかも…」
　迷い人…？
　彼の説明によると、突然、『森の中に出現する人』の事らしい。
　何処から来たのか本人も分からず、森をさ迷っていて、時々保護する事があるらしい。
「体調は悪くない？頭痛とか目眩とか」
「…大丈夫」
「だったらやっぱり『迷い人』の可能性が有るね」
　僕が首を傾げると、この場所の説明してくれた。
　ココは森の奥地に有る『森の聖域』と呼ばれる領域で、ここは隣に有る『クルーラ』と言う村だそうだ。
　この周辺は魔素がとても濃く、『魔力酔い』と呼ばれる体調不慮になったり、頭痛がして、長時間この場所に居ることが出来なるそうだ。
　なので調子が悪いならば身体の異変が起こる前に、早急に移動しなくてはいけないとのこと…。
　そして過去の『迷い人』達も、体調の異変は起こさなかったと言う…。
　そんな話をしていると、部屋の扉がノックされ、白髪の赤い瞳の幼さの残る青年が入ってきた。
「どんな感じ？」
「やっぱり『迷い人』のようだよ」
「そうか…」
　彼は小さいタメ息をついて言う。
「今後の事だけど、しばらくはこの村にいて、いろいろな知識を得ると良い。…多分、この世界の一般常識が抜けている可能性があるから」
「…。」
　突然そんなことを言われても、よくわからない。
　僕が首を傾げると、リーンと名乗った青年が苦笑いした。
「しばらくココで暮らして、落ち着いたら、先の事を色々と考えていこう」
　僕はコクりと頷いた。
　時間がたてば何か思い出すかも知れない…。
「…そう言えば、名前が分からないんだったか…」
　僕は素直に頷いた。
　呼び名が無いと不便だよな…。
「リーン。君が決めてあげたら」
「…そうだな」
　彼はしばらく考えて、僕を見た。
「…オルガ」
「良いんじゃないか」
「とりあえず、君の事をオルガと呼ぶね」
　僕はコクりと頷いて、その名を口にした。
「オルガ…」
　僕の名前…。
　二人は、ニコリと僕に微笑みかけてくれた。
　見知らぬ僕に、優しく接してくれる…。
　きっとこの人たちは、良い人なのだと…。
　生きていけるのだと感じた。