眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

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森の聖域クルーラ

迷い人

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 眠りから目覚めると、木々のおおい繁る深い森の中にいた。
 左右どこを見ても延々と続く木、木…。
 草の匂いと、土の匂いが、柔なか風に乗って運ばれてくる。
 僕は瞬きして、首を傾げた。
 …うん…?
 座り込んだ場所の草は、僕の膝を隠し、草に埋もれた状態…。
 人気ひとけの無い森の中…。
 何でこんな場所にいる…?
 不意に、遠くから鳥の鳴き声が響き、驚いて身体を抱きしめ震わせた。
「…ここは…」
 そう呟いた自分の声が少し幼く感じた。
 なぜだかわからない…。
 何故、自分が森にいるのか考えても、記憶が定かではない…。
 ただ分かるのは、このままココにいるのは危険だと、本能的に感じる事…。
 意を決して足に力を入れ、その場に立ち上がる。
 視界が低い…。
 なぜ、視界が低いと感じるのかわからない…。
 訳のわからない状況に、不安で身体が震える…。
 森から出なくては…。
 膝が震えるが、歩き出さなくては前に進めない…。
 ゆっくりと、最初の一歩を踏み出すと、自然と身体が動いた。
 森の中の右も左も分からないが、その場から逃げるように、とにかく道無き木々の間を歩き始めた。

 
 歩く度にサクサクと草が擦れる音がする。
 急にガサガサと横から音がして、時々、小動物が姿を現し、僕は動きを止める。
 そしてしばらくすると、どこかに小動物達は去っていく…。
 突然の音にビクリとしては、ホッとタメ息をついて再び歩き出す。
 デコボコとした道を、木の根につまずきそうになりながら歩き、とにかく何処かに有るだろう川を探そうと思った。
 歩き続けるからか、自然と喉が渇いてきたからだ。
 せめて喉だけでも潤したい…。
 じんわりと汗をかき、荒い息を溢しながら、僕は迷宮のような森の中をさ迷い歩き続けた。


 どれだけ歩いたのだろう…。
 明るかった空が、だんだんと薄暗くなってきた。
 それに、お腹も空いてきた。
 時々、木の実がなっているのを見かけたが、食べれるのか分からず、手を出さないでいた。
 変なモノを食べて動けなくなるのが怖かったからだ。
 それでも、飲まず食わずで歩き続けるのは限界がある。
 フラフラになりながら歩き、木の根につまづいて転んでしまって、僕は足を止めるしかなかった。
「…はぁ…はぁ…」
 荒い息だけが森の中に響く…。
 柔らかい草の上に転んだからか、膝を少し擦りむいただけで、それほど痛くはなかった。
 僕は疲れはてて、その場に寝転ぶと、木の葉っぱの間から赤く染まった空が見えた。
 僕はこのまま、飢えて死んでしまうのだろうか…。
 なぜか無意識に手を空に向かって伸ばした。
「…だれ…か…」
 答えてくれる人など居ないのに、そう呟いていた。
 不意に柔らかな風がふわりと吹いて、伸ばした手の回りに集まる。
「…。」
 なんだろう…?
 伸ばした手の回りに、柔らかな風が渦巻いている…?
 そう思うとの同時に、草を掻き分けるような足音が響いた。
 動く気力のなかった僕は、寝転んだまま、ゆっくりと音がした方を向くと、木々の間から人影が見えた。
 …人…?
 だんだんと近付いてくるその人は、細身の黒髪の綺麗な青年だった。


「何でこんな所に子供が…」
 彼は驚いて僕に近付いてきた。
 そして、地面に寝転ぶ僕の側でしゃがみこむと、転んで擦りむいた僕の膝に手をかざし、暖かい光に包まれた。
 痛みが引いていく…。
 怪我が治った…?
「動ける?」
 僕はゆっくりと身体を起こし頷いて、心配そうに見る青年を見上げた。
 さらりとした漆黒の髪の、優しげな緑色の瞳の青年。
「私の名前はリーン。君の名前は?」
「…。」
 わからない…。
 僕は首を左右に振った。
 自分の事を何も覚えていない…。
 記憶を探っても、モヤがかかっていて、自分の事を何も思い出せない…。
 不安にブルリと身体が震えると、彼は微笑んで僕の両脇を持ち上げ、立ち上がらせてくれた。
 彼の前に立つと、自分の身長が彼の胸辺りくらいまでしかない。
 背が低い…。
 子供の姿…なのだろう…。
「一緒においで」
 僕は彼を見上げた。
 ココで置いていかれても、僕にはどうすることも出来ない。
 一緒に連れていってもらわなくては、森の中で、飢えて死んでしまうだろう…。
 僕が頷くと彼は微笑んで、僕を片腕に抱き上げた。
 細身なのに力持ち…。
 そして、触れる温もりに生きているのだと、現実なのだと感じた。
「『瞬脚移動しゅんきゃくいどう』」
 彼がそう言うと、身体がふわりと浮いた気がした。
 急に彼が動きだし、ビックリして彼の肩にしがみつく。
 走っているのか、跳んでいるのか…。
 ものすごい速さで木々の間を駆け抜ける。
 速いスピードで移動しているのに、身体に当たる風の抵抗が無いのが不思議だ。
 驚いて、しばらく彼にしがみついていたが、もう、大丈夫なのだと力を抜いたのと、抱きしめられた温もりに安心したのとで、僕はそのまま眠ってしまった。



 そして目が覚めると、僕は小さな部屋のベッドの中にいた。


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