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二人の旅の始まり
知名度
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リーンとルークは、ヤマツカ町の、今はジーンの屋敷に来ていた。
もうすぐ『桜』が咲くからだ。
屋敷を管理するマークが大体の予想をしてくれたので、それにめがけてヤマツカ町に来たのだ。
まだ『桜』は固い蕾におおわれていて、咲く気配はない。
その年の気候や天候の加減で変わるらしいから、予測するのは難しいそうだ。
この屋敷のどの部屋からも『桜』が見えるように建物が建てられていて、どれほど、この『桜』を好んでいたのかが分かる。
少し早く着いてしまったので、リーンはリマ商会へと足を向けた。
リマ商会は、リーンが採取してきた薬草や、山菜などを卸している唯一の商会だ。
代々リーンとの取引を引き継ぎ、今は何代目だったか…。
マークがリマ商会に所属しているのもあって、不足している薬草があるから、来たらよって欲しいとの連絡を受けてだ。
リーン一人でリマ商会に向かおうとしたのだが、ルークも一緒に行くと言って、つきて来た。
…あの、分かってる?
ルークは亡くなった事になってるんだよ。
そう言ったが、若返ってるし、『若い頃にそっくりだなぁ』くらいで、わからないだろう。と、言われた。
まあ、王国でのルークの最後の姿は四十代後半。
今はソレよりも、かなり若く見えるから、人違いとも思えるだろうが…。
取りあえずルークにはフードを被ってもらった。
リーンのそんな不安をよそに、リーンとルークはリマ商会の建物へと入っていった。
リマ商会の受付で、リーンの名を出せば、奥の部屋へと案内された。
ルークは物珍しそうに、部屋を見渡しながらリーンのあとを着いてくる。
リーンとルークは、案内された部屋に入り、しばらく待っと、男の人が駆け込んで来た。
「リーンさん?!」
「久しぶり。マークから連絡をもらったよ」
彼とは、ここの親父さんの時からの付き合いだ。
ルークが眠ってからココへは一度も来ていなかった。
「助かります。最近、質の良い薬草が、なかなか手に入らなくて…」
そう言って、彼は手にしていたリストの紙をリーンに渡してきた。
リーンは用紙を受け取り、目を通す。
「…多くはないけど、全部あるよ」
「よかった…」
彼は安堵の表情を浮かべ、部屋の棚に置いてあったかごを取り出し、テーブルの上に置いていった。
リーンは『物質保管庫』から用紙にかかれている薬草を順番に取り出す。
「…ソレ、見せても良いのか?」
ずっと黙っていたルークが声をかけてきた。
「ああ、『物質保管庫』?彼らは知っているよ。人前では使わない方が良いと教えてくれてのが、ここの親父さんだから」
リーンはそう言って懐かしむように微笑んだ。
「それなら良いが…」
「…あの。気になってたんですが、…こちらの方は…ルーク…様…?」
疑問系だが、確信しているとしか思えない。
「「…。」」
リーンはルークと顔を見合せる。
どう答えようかと思っていたら、彼が苦笑いして言う。
「…の、分けないですよね…」
リーンとルークは深いため息をつく。
「…どうしてそう思った?」
リーンが聞くと彼は言った。
「ルーク様が各地を旅して回っていた頃の肖像画があるので、なんとなく…若い頃に似てますし」
「…。」
「それに、リーンさんと一緒にいると言うことは、不思議なことが起こっても、有りかな…って思ったんですけど…」
「…。」
当たってる…。
これは、正直にルークの事を教えて、秘密にしてもらうべきか…。
リーンがルークの方を見ると苦笑いしていた。
屋敷の管理をしているマークは、ルークの事を知っている。
そして、マークはリマ商会に属している…。
いずれ気が付いてしまうならば、言っておいた方が、後で面倒な事にならないかも…。
リーンは大きく息を吐いて、言った。
「…彼はカザンナ王国のルークだよ。亡くなった事にして、私と一緒にいる」
彼の目が大きく開かれ、動きが止まり、ルークを見る。
「…今はただのルークだ。…リーンを好きすぎて、ついて来たんだ」
彼は息を飲み、大きくため息をつくとハッキリといった。
「…リマ商会の秘匿にします。リーンさんと一緒にいる方の事を詮索するな。と、通達します」
リマ商会はいくつもの支店があり、リーンが近い場所で薬草や山菜を卸しているから、話を通しておいてくれると助かる。
「そうしてくれると助かる。だけど、ルークってばれるよね」
「…はい。俺らの世代は特に、今の姿のルーク様を知ってますから…」
やっぱり…。
ルークは頭を抱えた。
…むやみに町中を歩けない…。
「…人族は、よく知ってますが、獣人族の方はあまり気にしていないかも…」
そうだな。
王国の第三王子としてのルークは、人族の中に浸透している。
だが獣人族達は、この王国で暮らしている。と、言う認識ぐらいしかない。
「…町中では、気を付けるよ…」
最初にリマ商会に来て、ルークの知名度、認識の確認がとれてよかった。
リーンはつくづくそう思った。
もうすぐ『桜』が咲くからだ。
屋敷を管理するマークが大体の予想をしてくれたので、それにめがけてヤマツカ町に来たのだ。
まだ『桜』は固い蕾におおわれていて、咲く気配はない。
その年の気候や天候の加減で変わるらしいから、予測するのは難しいそうだ。
この屋敷のどの部屋からも『桜』が見えるように建物が建てられていて、どれほど、この『桜』を好んでいたのかが分かる。
少し早く着いてしまったので、リーンはリマ商会へと足を向けた。
リマ商会は、リーンが採取してきた薬草や、山菜などを卸している唯一の商会だ。
代々リーンとの取引を引き継ぎ、今は何代目だったか…。
マークがリマ商会に所属しているのもあって、不足している薬草があるから、来たらよって欲しいとの連絡を受けてだ。
リーン一人でリマ商会に向かおうとしたのだが、ルークも一緒に行くと言って、つきて来た。
…あの、分かってる?
ルークは亡くなった事になってるんだよ。
そう言ったが、若返ってるし、『若い頃にそっくりだなぁ』くらいで、わからないだろう。と、言われた。
まあ、王国でのルークの最後の姿は四十代後半。
今はソレよりも、かなり若く見えるから、人違いとも思えるだろうが…。
取りあえずルークにはフードを被ってもらった。
リーンのそんな不安をよそに、リーンとルークはリマ商会の建物へと入っていった。
リマ商会の受付で、リーンの名を出せば、奥の部屋へと案内された。
ルークは物珍しそうに、部屋を見渡しながらリーンのあとを着いてくる。
リーンとルークは、案内された部屋に入り、しばらく待っと、男の人が駆け込んで来た。
「リーンさん?!」
「久しぶり。マークから連絡をもらったよ」
彼とは、ここの親父さんの時からの付き合いだ。
ルークが眠ってからココへは一度も来ていなかった。
「助かります。最近、質の良い薬草が、なかなか手に入らなくて…」
そう言って、彼は手にしていたリストの紙をリーンに渡してきた。
リーンは用紙を受け取り、目を通す。
「…多くはないけど、全部あるよ」
「よかった…」
彼は安堵の表情を浮かべ、部屋の棚に置いてあったかごを取り出し、テーブルの上に置いていった。
リーンは『物質保管庫』から用紙にかかれている薬草を順番に取り出す。
「…ソレ、見せても良いのか?」
ずっと黙っていたルークが声をかけてきた。
「ああ、『物質保管庫』?彼らは知っているよ。人前では使わない方が良いと教えてくれてのが、ここの親父さんだから」
リーンはそう言って懐かしむように微笑んだ。
「それなら良いが…」
「…あの。気になってたんですが、…こちらの方は…ルーク…様…?」
疑問系だが、確信しているとしか思えない。
「「…。」」
リーンはルークと顔を見合せる。
どう答えようかと思っていたら、彼が苦笑いして言う。
「…の、分けないですよね…」
リーンとルークは深いため息をつく。
「…どうしてそう思った?」
リーンが聞くと彼は言った。
「ルーク様が各地を旅して回っていた頃の肖像画があるので、なんとなく…若い頃に似てますし」
「…。」
「それに、リーンさんと一緒にいると言うことは、不思議なことが起こっても、有りかな…って思ったんですけど…」
「…。」
当たってる…。
これは、正直にルークの事を教えて、秘密にしてもらうべきか…。
リーンがルークの方を見ると苦笑いしていた。
屋敷の管理をしているマークは、ルークの事を知っている。
そして、マークはリマ商会に属している…。
いずれ気が付いてしまうならば、言っておいた方が、後で面倒な事にならないかも…。
リーンは大きく息を吐いて、言った。
「…彼はカザンナ王国のルークだよ。亡くなった事にして、私と一緒にいる」
彼の目が大きく開かれ、動きが止まり、ルークを見る。
「…今はただのルークだ。…リーンを好きすぎて、ついて来たんだ」
彼は息を飲み、大きくため息をつくとハッキリといった。
「…リマ商会の秘匿にします。リーンさんと一緒にいる方の事を詮索するな。と、通達します」
リマ商会はいくつもの支店があり、リーンが近い場所で薬草や山菜を卸しているから、話を通しておいてくれると助かる。
「そうしてくれると助かる。だけど、ルークってばれるよね」
「…はい。俺らの世代は特に、今の姿のルーク様を知ってますから…」
やっぱり…。
ルークは頭を抱えた。
…むやみに町中を歩けない…。
「…人族は、よく知ってますが、獣人族の方はあまり気にしていないかも…」
そうだな。
王国の第三王子としてのルークは、人族の中に浸透している。
だが獣人族達は、この王国で暮らしている。と、言う認識ぐらいしかない。
「…町中では、気を付けるよ…」
最初にリマ商会に来て、ルークの知名度、認識の確認がとれてよかった。
リーンはつくづくそう思った。
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