神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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二人の旅の始まり

目覚め *

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 ルークが『世界樹』に眠りについて、三年の月日が流れていた。
 リーンは子供達の様子を見に行き、時折覗いては、そのときの事を日記に書きとめていた。
 ルークが目覚めたときに、こんな事が有ったと報告するためだ。
 すくすくと成長する孫達は、遠目から見ていても可愛いかった。
 ルークが目覚めてから…そう思いながら、リーンはずっと子供達と、孫達を見守っていた。


 リーンが『森の聖域』の家で眠っていると、明け方、木霊達が騒ぎ出した。
 まだ、日が昇る前で薄暗く、リーンはベッドから降りると、木霊達に誘われるまま『世界樹』の前まで来た。
 するとユグが『世界樹』から顔を出して、ニコリと笑った。
「目覚めるよ」
 ユグにそう言われて、リーンはドキドキしながら『世界樹』の裏側の、いつもルークの姿が見える隙間の有る場所まで来たが、隙間が消えていた。
「…ユグ…」
 リーンが不安そうに『世界樹』を見上げると、顔だけ出していたユグが、ルークの腕を引っ張って『世界樹』の中から引きずり出していた。
 リーンは慌ててルークの腕をつかみ、『世界樹』の中からルークの身体を引っ張り出す。
 『世界樹』の中から出てきたルークの意識は戻っておらず、ぐったりとしたままリーンにもたれ掛かって来た。
「…ルーク」
 リーンは、ずっしりとしたルークの身体を受け止め、その場に座り込む。
 ほんの少しの温もりと、鼓動を感じる…。
 生きている…。
 リーンはルークの身体を軽減魔法で軽くすると、そっと抱えて家の中へと戻り、さっきまでリーンが眠っていたベッドに横たえた。
 そしてリーンも一緒のベッドに入り、ルークを暖めるように抱き締めた。
「…ルーク…」
 リーンの体温がルークに伝わり、少し赤みを増す…。
 リーンはルークを抱き締めたまま、再び眠りに付いていた。


 誰かの話し声に、リーンが目覚めると、暖かい温もりに包まれていた。
 リーンは、ぼんやりとしながら目を開けて、目の前に厚みの有る身体を目にして、ぼーっとしながら上を向いた。
「おはよう。リーン」
 ソコにはキラキラと金髪を輝かせ、青い瞳をこちらに向け、少し若返ったルークが微笑んでいた。
「…あっ…」
 寝ぼけ眼だったリーンはハッとして、ルークが目覚めたのは夢ではなかったのだと確信し、嬉しくて涙がこぼれた。
「…おはよう。ルーク…」
 リーンはもぞもぞと動いて、ルークの顔に近付き、口付けて唇を離すと、まだ足りないと、ばかりに、再びルークに口付けた。
 今のルークの姿は、封じられていた魔力が解放され、魔力が最大になった頃の年齢くらい…。
 『始まりの宿り木』の頃だ…。
 リーンはその頃を思い出してドキドキして、再びルークに口付けしようとルークに覆い被さる。
「んっ…」
「…えっと…。イチャイチャは後にしてくれないか」
 ヒナキの声がして、リーンがルークに覆い被さったまま、部屋の入り口の方を見ると、ヒナキが部屋のドアに寄りかかって、こちらを見ていた。
 リーンはカアッと赤くなって、恥ずかしくなってシーツを被った。
「今さらだろ」
 ルークは楽しそうに笑う。
 それはそうだけど…。
 そう言えば、誰かと離している声に目が覚めたんだ…。
「二人とも、朝食の準備が出来ているから、起きて来てね」
 ヒナキはそう念を押して、部屋を出ていった。
 リーンが恥ずかしそうにシーツから顔を覗かせると、ルークが嬉しそうに笑う。
「後で好きなだけ、触れば良いぞ」
「…。」
 リーンは頬を染めて、ベッドから身体を起こした。


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