神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

文字の大きさ
上 下
449 / 462
流れ行く時間の中で…。

見守るリーン 7 ミーナの秘密

しおりを挟む
 リーンが何度目かの、魔女王の城の談話室へ入ると、ミーナが繋いだ手をほどいてきて、どこかに行ってしまった。
 少ししょんぼりとしていると、ソフィアがリーンを見てクスクスと笑い出す。
「ミーナは見習い魔女として、お客様の飲み物を用意しに行ったのよ」
 そう言われてリーンはハッとして、バツが悪そうに苦笑いしてソファーに座った。
 リーンはミーナが居ない内に、ソフィアに確認する。
「ルークの事は聞いているか?」
「噂はね」
「それで、私達の関係も、そろそろ話した方が良いと思って…」
「まあね…。なんとなく気にはしているみたいだから…」
 ソフィアはそんな風に言って言葉を濁した。
 何か有ったのだろう…。
 それは後で聞くとして、ソフィアはどう思っているか…。
「話しても良いわ。それでミーナの気持ちが安定すれば…」
 やはり不安定なままなのだろう…。
 魔力の制御は、心の持ちようで変化する…。
 そんな話をしていると、ミーナが飲み物を持ってやって来た。
 リーンは、ドキドキしながらミーナがグラスをテーブルに置くのを見ている。
 ミーナも見られて緊張しているようだ。
「あら、ミーナの分が無いわよ」
 ソフィアがそう言うと、ミーナが驚いたようにソフィアを見て、リーンを見てくる。
「持ってきます」
 ミーナはテーブルの上に二人分置くと、自分の分を取りに戻って行った。
 ミーナは、自分は席を外さないといけないと思ったのだろう。
 でも、そのやり取りを見ているだけで、ソフィアにしっかり、しつけられているのを感じた。 
 屋敷では、使用人の人達がやってくれていた事を、自分たでしていかなくてはいけないのだから…。
 ミーナが飲み物のを持ってくると、リーンの隣に座り、リーンにピタリと、くっついてきた。
 こういうところは、まだ子供で可愛い…。
 リーンとソフィアは、まだ、ミーナに話していなかった、三人の関係性と、ミーナが産まれた経緯を話した。
 ミーナは真剣な眼差しで、リーンを見て、話を聞いていた。
 どう感じているのだろうか…。
 不安でも有るが、いつかは伝えなくてはいけないこと…。
 時間の流れが、三つ子のキースとニーナとは違うのだと言うことを、早めに知っていることが必要だ。
 一通り、話をするとミーナは聞いてきた。
「ミーナは、リーンとソフィア様の子供なの?お父様は、ミーナのお父様はではないの?」
「私とソフィアの子供だけど、お父様はルークだよ」
 リーンは微笑んで言う。
「ミーナの身体の基を作っているのは、私とソフィアだけど、私の中でキースとニーナと一緒に育ったんだから、ルークがお父様のままだよ」
 ミーナはソフィアを見て、リーンを見て言う。
「…私は…三人の子供なの?」
「そうよ。私では貴女を成長させられないから、リーンにお願いしたの」
 ソフィアは微笑んで言う。
「だから、ミーナは『魔女王ソフィアの子、ミーナ』なのだけれど、私が産んだわけではないから、『森の守護者リーンの子、ミーナ』なのよ」
「『森の守護者リーンの子』」 
 ミーナがボソリと呟く。
 そうか、魔女は母親の名の後に名乗るから、ミーナの場合は、名乗る名前が定まっていないのも、魔力が安定しない原因か…。
「…『森の守護者リーンの子、ミーナ』」 
 ミーナはそう言って、口許を緩ませた。
「私は、『森の守護者リーンの子、ミーナ』」
 ミーナは目をキラキラと輝かせ、リーンに向かって、そうハッキリと言った。 
「ああ、言い名乗りだな」
 リーンがそう言うとミーナは嬉しそうに笑い、リーンのお腹に頭を埋めて来た。
 少し照れ臭かったのかもしれない。
 リーンはミーナの頭をそっと撫でてあげた。
 これでミーナの魔力が少しでも安定するならば…。
 そして、ルークの事を伝えた。
「カザンナ王国では亡くなったことになっているけど、ミーナのお父様は、『森の聖域』で眠っている。いつ目覚めるか分からないが、生きているからね」
「…眠っているの?」
「ああ。いつか、ミーナは『森の聖域』に会いに行けるようになるかも知れないな…」
 リーンはそう言って微笑んだ。
 潜在魔力はソフィアとリーンの子供だからか、すごく高い。
 年齢を重ねれば、いつか『森の聖域』へ来れるくらい、魔力を持つことが出来るだろう…。
「…また、会えるんだよね…」
「ああ、会えるよ」
 リーンは微笑んだ。
 他の子供達は会えないかも知れないが、長寿になるだろうミーナはきっと会える…。
 
 リーンはミーナと一緒に、魔女の森で一泊して、別れを惜しむミーナに『また来る』と約束して、『魔女の森』を離れた。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

皇帝に追放された騎士団長の試される忠義

大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。 帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか? 国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

処理中です...