446 / 462
流れ行く時間の中で…。
見守るリーン 4 タミネキ村
しおりを挟む
翌日、カムイが取ってくれた乗り合い馬車に乗って、タミネキ村へと向かった。
乗り合い馬車は、裕福層用の座席と窓が付いているタイプで、車内から外の様子が見える、少人数を乗せて移動する馬車だ。
道中はあまり変わらない自然豊かな景色だが、タミネキ村の入口に近付くと、ざわめきが響いて来た。
そして乗り合い馬車の停留所付近は、各地から来る乗り合い馬車や、個人の馬車が並んで停留していて、人が行き交い賑わっていた。
だいぶん変わったな…。
リーンはぼんやりと、そう思いながら乗り合い馬車を降りた。
リーンがタミネキ村を離れてから、半年も経ってはいない…。
リーンはぶらりと、村に出来た商店街を歩き、神殿へ入る門の前まで来た。
以前は、村人が作った柵があったが、その後、神殿側の要求によって立派な壁が出来て、その上に蔦を這わせてあり、蔦に侵入者を捕まえる魔法が施されているのに気が付く。
見た目だけでなく、防犯を兼ねているようだ。
リーンは商店街から離れ、山の中の境界線を保つお堂がある方に向かった。
ココは村人しか知らず、人族と獣人族の境界線の結界を施したお堂があるが、もう、その役目を果たさなくても、人族と獣人族の交流がタミネキ村ではおこなわれていた。
村の中で、何人もの獣人族を見かけたからだ。
その筆頭が、人族のジーンと獣人族のロキ。
神殿の奥の、かつてジンの実家であった家が休憩所となり、今はジーンとロキ、二人の子供シロエが一緒に住んでいる。
少しこそば痒いような、気がした。
リーンは山の下から『瞬脚移動』を使い、お堂まで登ると、ソコから狼獣人達が住む集落まで行き、ソコから神殿奥へと降りる山道を降りていった。
集落から神殿奥までの道は、かつて獣道だったが、ロキがジーンの元に通うようになって、少し整備され、山道が出来ていた。
神殿の周囲には結界が張り巡らせてあるが、その近くにある獣人用の山小屋を潜り抜けると、簡単に中へと入れる。
ココには、獣人達が人の姿に変化して神殿側へ行くための服がたくさん準備されている。
以前は今、ジーン達が暮らす家に有ったのだが、自由に獣人達が『世界樹』の元に来れるようにと、人族が始めてみる獣人達に驚かないように、人族側へと配慮とが組み合わせって出来た小屋だ。
リーンがソコからそっと森伝いに『世界樹』のフリクの元に向かって歩いていくと、狼獣人のロキが麓でこちらを見上げていた。
ロキは、リーンが結界内に入って来たことに気が付いていたのだ。
リーンは苦笑いしてロキに聞く。
「ジーンは?」
「…今は神殿にいる」
「シロエは?」
「家で昼寝している」
ロキはそう言って、家の方に向かって歩いていった。
昼寝をしている子供一人を置いて置くわけにはいかず、様子を見に来て、直ぐに戻って行ったのだろう。
リーンは意を決して、山から麓へと降り立ち、『世界樹』フリクの元に向かうと、フリクが直ぐに姿を表し、リーンの胸の中に飛び込んで来た。
「フリク…」
フリクはグイグイとリーンに頭を押しつけ、満足すると、リーンの腕の中からリーンを見上げてきて、ニコリと笑った。
うん。可愛い…。
リーンはフリクを腕に抱いたまま、ロキとシロエがいる家の中に入っていった。
家の中は、ほんのりミルクの匂いがして、揺りかごの中で、シロエが人の姿で眠っていた。
シロエの魔力は強く、無意識に獣人になったり、人の姿になったり、獣変化して白狼の姿になったりとを繰り返していた。
ある程度成長すれば、どれかに落ち着いて、慌てることはないのだが、今しばらくは、見守るしかなかった。
リーンは揺りかごにの側に座り、シロエを覗き込んでぷにぷにと頬を突っついた。
ロキは黙って見守りながら、リーンに飲み物を持ってきてくれた。
「…ジーンに会っていかないのか?」
「…そうだね。会うとルークの事を話さなくては、いけなくなるから…」
リーンは苦笑いして、そう言う。
「せめて、手紙だけでも受け取らないか」
ロキはそう言って本棚から、本を一冊取り出し、本から挟んである手紙を取り出し、リーンの目の前に差し出してきた。
「ジーンが、『自分が居ないときにリーンが来たら渡して』と言って、ずっとココに置いてあった」
リーンはその手紙をじっと見つめ、震える手で受け取った。
きっと、私の性格をよく知っていて、姿を見せないだろうと思ったのだろう。
そうだ…手紙なら…。
「…カザナのお屋敷の小屋に、小さな転移魔道具を置いておく。そこから手紙を出せば、クルーラの…『森の聖域』の隣の村に届くよう手配しておく。直ぐには見ることが出来ないけれど、確実に私に届くから…」
リーンはそう言ってから気が付く。
そう言えば、ロキはカザナのお屋敷の事を知らない…。
「ジーンに伝えて。カザナから手紙を出せば、私に届くと…」
「ああ。わかった」
ロキはそう言って、本を本棚に戻した。
リーンは眠るシロエの寝顔を堪能して、さっき通ってきた道を戻り、タミネキ村へと戻って行った。
乗り合い馬車は、裕福層用の座席と窓が付いているタイプで、車内から外の様子が見える、少人数を乗せて移動する馬車だ。
道中はあまり変わらない自然豊かな景色だが、タミネキ村の入口に近付くと、ざわめきが響いて来た。
そして乗り合い馬車の停留所付近は、各地から来る乗り合い馬車や、個人の馬車が並んで停留していて、人が行き交い賑わっていた。
だいぶん変わったな…。
リーンはぼんやりと、そう思いながら乗り合い馬車を降りた。
リーンがタミネキ村を離れてから、半年も経ってはいない…。
リーンはぶらりと、村に出来た商店街を歩き、神殿へ入る門の前まで来た。
以前は、村人が作った柵があったが、その後、神殿側の要求によって立派な壁が出来て、その上に蔦を這わせてあり、蔦に侵入者を捕まえる魔法が施されているのに気が付く。
見た目だけでなく、防犯を兼ねているようだ。
リーンは商店街から離れ、山の中の境界線を保つお堂がある方に向かった。
ココは村人しか知らず、人族と獣人族の境界線の結界を施したお堂があるが、もう、その役目を果たさなくても、人族と獣人族の交流がタミネキ村ではおこなわれていた。
村の中で、何人もの獣人族を見かけたからだ。
その筆頭が、人族のジーンと獣人族のロキ。
神殿の奥の、かつてジンの実家であった家が休憩所となり、今はジーンとロキ、二人の子供シロエが一緒に住んでいる。
少しこそば痒いような、気がした。
リーンは山の下から『瞬脚移動』を使い、お堂まで登ると、ソコから狼獣人達が住む集落まで行き、ソコから神殿奥へと降りる山道を降りていった。
集落から神殿奥までの道は、かつて獣道だったが、ロキがジーンの元に通うようになって、少し整備され、山道が出来ていた。
神殿の周囲には結界が張り巡らせてあるが、その近くにある獣人用の山小屋を潜り抜けると、簡単に中へと入れる。
ココには、獣人達が人の姿に変化して神殿側へ行くための服がたくさん準備されている。
以前は今、ジーン達が暮らす家に有ったのだが、自由に獣人達が『世界樹』の元に来れるようにと、人族が始めてみる獣人達に驚かないように、人族側へと配慮とが組み合わせって出来た小屋だ。
リーンがソコからそっと森伝いに『世界樹』のフリクの元に向かって歩いていくと、狼獣人のロキが麓でこちらを見上げていた。
ロキは、リーンが結界内に入って来たことに気が付いていたのだ。
リーンは苦笑いしてロキに聞く。
「ジーンは?」
「…今は神殿にいる」
「シロエは?」
「家で昼寝している」
ロキはそう言って、家の方に向かって歩いていった。
昼寝をしている子供一人を置いて置くわけにはいかず、様子を見に来て、直ぐに戻って行ったのだろう。
リーンは意を決して、山から麓へと降り立ち、『世界樹』フリクの元に向かうと、フリクが直ぐに姿を表し、リーンの胸の中に飛び込んで来た。
「フリク…」
フリクはグイグイとリーンに頭を押しつけ、満足すると、リーンの腕の中からリーンを見上げてきて、ニコリと笑った。
うん。可愛い…。
リーンはフリクを腕に抱いたまま、ロキとシロエがいる家の中に入っていった。
家の中は、ほんのりミルクの匂いがして、揺りかごの中で、シロエが人の姿で眠っていた。
シロエの魔力は強く、無意識に獣人になったり、人の姿になったり、獣変化して白狼の姿になったりとを繰り返していた。
ある程度成長すれば、どれかに落ち着いて、慌てることはないのだが、今しばらくは、見守るしかなかった。
リーンは揺りかごにの側に座り、シロエを覗き込んでぷにぷにと頬を突っついた。
ロキは黙って見守りながら、リーンに飲み物を持ってきてくれた。
「…ジーンに会っていかないのか?」
「…そうだね。会うとルークの事を話さなくては、いけなくなるから…」
リーンは苦笑いして、そう言う。
「せめて、手紙だけでも受け取らないか」
ロキはそう言って本棚から、本を一冊取り出し、本から挟んである手紙を取り出し、リーンの目の前に差し出してきた。
「ジーンが、『自分が居ないときにリーンが来たら渡して』と言って、ずっとココに置いてあった」
リーンはその手紙をじっと見つめ、震える手で受け取った。
きっと、私の性格をよく知っていて、姿を見せないだろうと思ったのだろう。
そうだ…手紙なら…。
「…カザナのお屋敷の小屋に、小さな転移魔道具を置いておく。そこから手紙を出せば、クルーラの…『森の聖域』の隣の村に届くよう手配しておく。直ぐには見ることが出来ないけれど、確実に私に届くから…」
リーンはそう言ってから気が付く。
そう言えば、ロキはカザナのお屋敷の事を知らない…。
「ジーンに伝えて。カザナから手紙を出せば、私に届くと…」
「ああ。わかった」
ロキはそう言って、本を本棚に戻した。
リーンは眠るシロエの寝顔を堪能して、さっき通ってきた道を戻り、タミネキ村へと戻って行った。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…

皇帝に追放された騎士団長の試される忠義
大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。
帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか?
国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる