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流れ行く時間の中で…。
見守るリーン 2 その後
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「こんにちは」
リーンはそう言って微笑んだ。
ジェスとカズキに部屋の中に入るよう促され、執務室の隣にある談話室から屋敷の中に入った。
談話室は庭に出れるようになっているので、人の目に付く事無く屋敷の中に入れる。
リーンが部屋の中に入ると、カズキに促され、大きなソファーに座らされると、目の前にジェスとカズキが寄ってきて、真剣な眼差しでリーンを見る。
「「ルーク様は…」」
「今は眠っている」
リーンは微笑んでそう答えた。
「いつ、目覚めるか分からないけど、時間はかかると思うよ」
リーンがそう言うと、ジェスとカズキは大きなため息をついて、リーンとは別のソファーにどっしりと座り込んだ。
あの時、王都の屋敷のルークの部屋に子供達を呼び、子供達はルークと楽しく会話を重ねていたが、側近のジェスやカズキ達はカザナにいたので会ってはいない。
その後、ルークを連れて『森の聖域』へと転移してしまったので、後から話を聞いただけなのだろう…。
「ごめんね。時間が無かったから…」
当時の二人の事を思うと、不安で仕方なかっただろう。
ジェス達は動けないし、報告だけが届いていたかも知れないからだ。
「…良いんです。ルーク様の体調があまり良くなかった事は聞いていますし…」
「…まさか、リーンさんが連れ去るとは思いもしなかったですが…」
カズキの発言にリーンは苦笑いして答えた。
「…それしか思い付かなかったから…」
三人は顔を見合せ、ため息を付いた。
「それはそうと、あの後の事は聞いていますか?」
「あの後…ルークを連れていった後の事は知らない…。ずっと『森の聖域』にいたから…」
あの時リーンは、ルークの事しか考えられなかった。
今思えば、カザンナ王国の第三王子が連れ去られたのだから、王国にとっては一大事だ。
どうやって、王都から消えたルークの事を説明したのか、気にはなる。
「…ルーク様は病で亡くなった事にして、王都の神殿で別れの儀式をしました」
ジェスの発言にリーンは目を見開いて驚いた。
「それが王国にとっても民衆の理解を得るのに、一番分かりやすく確実だったからです」
カズキとジェスは顔を見合せ、リーンの方を向くと、その後、何をしたのかを教えてくれた。
アオが直ぐに王城に連絡して、ルークの兄、ローレンス王が神殿に連絡し、アオがカザナへ転移魔法陣を使ってやってきて、カズキに数日中に王都へ来れるように、段取りを言い渡し、ジェスを連れて王都へと戻っていったそうだ。
その時にアオは、ルークの魔法剣をケースごと、保管されていた補助魔法具のブレスレットを持って行った。
そして転移魔法陣を使って、神殿から棺が運ばれ、その中に魔法剣とブレスレットを納めて、中にルークが入っていないけれど、ルークの気配が有るようにしたそうだ。
そして神殿に運ばれ、ルークが病で亡くなったと、言うことにして、別れの儀式がおこなわれ、棺は、神殿の王族の墓所に納められたそうだ。
ルークは王族、王弟になるが、あまり大事にならないよう、最小限の規模でおこなわれ、あの時来ていた子供達はそのまま葬儀に出席する形になり、ルークの不在は隠されたようだ。
…そんな大事になるとは…。
だけど、王族なので形式だけはしっかりと、おこなわなければならない。
でも王族用の棺が有ったなんて…と思って聞くと、ルークの父王が、いずれ自分が先に棺に入ることになるからと、亡くなっていた妃の隣に空の棺を準備していたらしい…。
…そうだね。
形だけでも、ルークが先に亡くなるはずではなかった…。
リーンが苦笑いすると、ジェスとカズキは微笑んで言う。
「だから、ルーク様が目覚めたら、心置きなく一緒に旅をしてください」
リーンは目を見開いて驚き、そして気が付く。
…ああ、そうか。
カザンナ王国王弟のルークではなく、ただのルークとして…。
そこまで考えてくれての、ルークの形だけの国葬儀だったのだ。
「…ありがとう」
リーンは嬉しくて涙目になりながら微笑んだ。
リーンはそう言って微笑んだ。
ジェスとカズキに部屋の中に入るよう促され、執務室の隣にある談話室から屋敷の中に入った。
談話室は庭に出れるようになっているので、人の目に付く事無く屋敷の中に入れる。
リーンが部屋の中に入ると、カズキに促され、大きなソファーに座らされると、目の前にジェスとカズキが寄ってきて、真剣な眼差しでリーンを見る。
「「ルーク様は…」」
「今は眠っている」
リーンは微笑んでそう答えた。
「いつ、目覚めるか分からないけど、時間はかかると思うよ」
リーンがそう言うと、ジェスとカズキは大きなため息をついて、リーンとは別のソファーにどっしりと座り込んだ。
あの時、王都の屋敷のルークの部屋に子供達を呼び、子供達はルークと楽しく会話を重ねていたが、側近のジェスやカズキ達はカザナにいたので会ってはいない。
その後、ルークを連れて『森の聖域』へと転移してしまったので、後から話を聞いただけなのだろう…。
「ごめんね。時間が無かったから…」
当時の二人の事を思うと、不安で仕方なかっただろう。
ジェス達は動けないし、報告だけが届いていたかも知れないからだ。
「…良いんです。ルーク様の体調があまり良くなかった事は聞いていますし…」
「…まさか、リーンさんが連れ去るとは思いもしなかったですが…」
カズキの発言にリーンは苦笑いして答えた。
「…それしか思い付かなかったから…」
三人は顔を見合せ、ため息を付いた。
「それはそうと、あの後の事は聞いていますか?」
「あの後…ルークを連れていった後の事は知らない…。ずっと『森の聖域』にいたから…」
あの時リーンは、ルークの事しか考えられなかった。
今思えば、カザンナ王国の第三王子が連れ去られたのだから、王国にとっては一大事だ。
どうやって、王都から消えたルークの事を説明したのか、気にはなる。
「…ルーク様は病で亡くなった事にして、王都の神殿で別れの儀式をしました」
ジェスの発言にリーンは目を見開いて驚いた。
「それが王国にとっても民衆の理解を得るのに、一番分かりやすく確実だったからです」
カズキとジェスは顔を見合せ、リーンの方を向くと、その後、何をしたのかを教えてくれた。
アオが直ぐに王城に連絡して、ルークの兄、ローレンス王が神殿に連絡し、アオがカザナへ転移魔法陣を使ってやってきて、カズキに数日中に王都へ来れるように、段取りを言い渡し、ジェスを連れて王都へと戻っていったそうだ。
その時にアオは、ルークの魔法剣をケースごと、保管されていた補助魔法具のブレスレットを持って行った。
そして転移魔法陣を使って、神殿から棺が運ばれ、その中に魔法剣とブレスレットを納めて、中にルークが入っていないけれど、ルークの気配が有るようにしたそうだ。
そして神殿に運ばれ、ルークが病で亡くなったと、言うことにして、別れの儀式がおこなわれ、棺は、神殿の王族の墓所に納められたそうだ。
ルークは王族、王弟になるが、あまり大事にならないよう、最小限の規模でおこなわれ、あの時来ていた子供達はそのまま葬儀に出席する形になり、ルークの不在は隠されたようだ。
…そんな大事になるとは…。
だけど、王族なので形式だけはしっかりと、おこなわなければならない。
でも王族用の棺が有ったなんて…と思って聞くと、ルークの父王が、いずれ自分が先に棺に入ることになるからと、亡くなっていた妃の隣に空の棺を準備していたらしい…。
…そうだね。
形だけでも、ルークが先に亡くなるはずではなかった…。
リーンが苦笑いすると、ジェスとカズキは微笑んで言う。
「だから、ルーク様が目覚めたら、心置きなく一緒に旅をしてください」
リーンは目を見開いて驚き、そして気が付く。
…ああ、そうか。
カザンナ王国王弟のルークではなく、ただのルークとして…。
そこまで考えてくれての、ルークの形だけの国葬儀だったのだ。
「…ありがとう」
リーンは嬉しくて涙目になりながら微笑んだ。
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