神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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流れ行く時間の中で…。

ルークの願い

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 ルークが目覚めた時、見たことのある天井が目に入った。
 ココはどこだろう…。
 重い身体を動かして視線をさ迷わせると、ぼんやりとした様子で側で椅子に座っているリーンを見つけた。
 …まだ、現実にいるのだな…。
 ルークはホッとして、リーンの名前を呼んだ。
「…リーン」
 泣きそうな顔のリーンが、俺の身体に起こっている変化を教えてくれ、そしてうまくいくか分からないが、リーンと同じ様に、『世界樹』の中で時間を戻してもらうと、言うことを提案してきた。
 …魔力の変質…。
 そうか…。
 そのせいで身体に影響が来ていたのか…。
 ルークは納得して微笑んで言う。
「俺はリーンのモノだ。リーンが後悔しないようにして欲しい」
「…ありがとう…」
 もし、うまく行かなくて、この命が尽きても、出来ることはやってみたのだと、仕方ないのだと諦めてもらえる。
 何もせず、後からあの時、行動を起こせば…と、俺の命が尽きたとき、リーンが後悔して苦しんでほしくない…。
 リーンとしばらく話をすると、ルークは眠気が襲ってきて、目を閉じた。
 身体の変調が激し過ぎる…。
 ルークはそのまま意識を失った。


 時折、ルークが目覚めると、リーンが側にいたり、木霊達が側にいたりして、しばらく話をしたり食事をしたりすると、眠気が襲ってきて、再び眠る…。
 繰り返し、そんな生活をしていた。
 だから、どれだけの日にちが過ぎたのか分からない…。
 少しづつ、起きている時間が長くなり、少し身体の調子が回復したのではないかと思えるくらいだった。
 『クルーラ』の有翼族のジュジュが、俺の魔力が安定してきたので、『世界樹』に入るなら今の内が良いだろうと言ってきた。
 いつ、身体が変化して不調になってしまうか、分からないからだ。
 ルークが、このままゆっくりとリーンと過ごすのも、少し良いなと、思い始めた頃だった。
 …そうだな。
 いつ、胸を締め付けるような苦しみが起こるか分からない…。
 次に目が覚めたら、リーンとゆっくりと過ごそう…。


 リーンと木霊達、土霊達、『クルーラ』の村長ヒナキ、ジュジュが見守る中、ルークは『世界樹』の大きな木の前に立ち、しばらくの別れを告げた。
 そして、『世界樹』からユグが姿を表し、真剣な眼差しでリーンを見て言った。
「頑張ってみるよ」
「お願い。ユグ」
 リーンがそう答えると、ルークの方を見て微笑んだ。
「ルーク。今度は私が待っている」
 以前と立場が逆だな…。
「ああ、行ってくるよ」
 ルークが微笑むと、リーンはルークに口付けてきた。
 この温もりとは、しばらくサヨナラだ…。
「行ってらっしゃい」
 リーンが微笑むと、ルークの身体はユグに支えられて『世界樹』の中へと引き込まれていく。
 ルークとリーンの視線は互いに見合ったまま、ゆっくりとルークは『世界樹』の中に入っていき、目を閉じた。
 必ず戻る。
 だから、待っていてくれ…。
 
 
 
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