神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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流れ行く時間の中で…。

寿命

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 ルークが倒れたと聞いたリーンは、急いで王都の屋敷に戻った。
 タミネキ村からヤマツカ町の、マークが管理するルークの屋敷に行き、転移魔法陣を使って王都の屋敷の一室に向かった。
 そこからルークの部屋へ駆け込むと、ルークの側近のアオがいて、ベッドの上で、少しやつれたルークが眠っていた。
「リーンさん…」
 涙ぐんだアオが、戸惑いながら声をかけてきた。
「…いつから…」
 通信魔法で話しているときは、そんな様子はなかった。
 でも、青ざめた、このやつれ方は昨日、今日ではない…。
「…リーンさんには、言うなと…」
「原因は…」
 リーンは震える手を押さえつけて、平静を保ちながら問う。
「…わからないです…。治療魔法も、治療薬も受け付けない…。時々、胸を押さえて…苦しそうで…少量の痛み止を処方することしか…出来なくて…」
 アオは苦しそうにそう告げた。
 側で見てきたアオは、ルークが苦しんでいる姿を何度も見てきたのかもしれない。
 リーンは、ルークの眠る姿を見て思い出していた。
 ジンが同じ様にやつれて、命の輝きを失って、弱々しく微笑んでいたことを…。
 また、同じ様に失うのか…。
 私が大切だと思った人は、若くして命が消えていくのか…。
 …もう、あの時のような後悔はしたくない…。
 今なら、たぶん間に合う…。
 きっと間に合う…。
 うまくいくか分からないが、『世界樹』ユグも成長した…。
 リーンは心の中で決意する。
「…アオ。ルークの事、私がもらっても良い?」
 ルークの存在全てを、私がもらう…。
「ルーク様は貴方に出会ったときから、リーンさんのモノですよ」
 アオはそう言って寂しそうに微笑んだ。
 きっとアオは、私が何かしようとしているのを感じて、そう答えてくれた。
 自分達ではどうしようもなくて、藁にもすがる想いでそう答えてくれた。
 だから私は…。


 リーンはルークが眠るベッドの横にあるイスに座り、ルークの青白い横顔を眺めていた。
 リーンの持つ、治療魔法を使ってみたが、効果はなかった。
 私では見えない何かが、ルークの身体の中で起こっていて、ルークの身体を蝕んでいる。
「…リーン…」
 弱々しいルークの声がして、リーンはハッとした。
「…ルーク…」
 ルークの目の輝きは失われていない…。
 身体が言うことを訊かないだけだ…。
「…こんな…姿を…見せたくなかった…」
 ベッドに横たわり、リーンの方を見るルークは苦笑いして言う。
「…一緒に…旅をする…約束…守れなくて…」
「死なせないよ」
 リーンはルークの言葉を切るように断言する。
「…ルークの身体、私に頂戴」
 ルークは驚いて、そして優しく微笑む。
「俺はリーンのモノだ」
 リーンは微笑んだ。
 ルークの意識がある内に…。
 ルークの身体の機能が停止する前に…。



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